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第2回 私辞めます事件②(18)

 昨日から私に注意されっぱなしのヘルパーRは、部屋に引きこもって出てこない。今まで、こんな夕飯時にそんなことはなかったので、おそらくとても怒っているんだろう。怒っているのはこっちなのだが。

 少しした後、夫からメッセージが届いた。

『何かあったの?Rからグループじゃなく俺だけにメッセージ届いたんだけど!』

『へー。なんて?』

『転送する』

そう言って送られてきた英文を翻訳アプリにコピペしてすぐに読む。

『Sir, 私はもう辞めた方がいいと思います。奥様が私の仕事が気に入らないようです。今日も何度も私に大声で怒鳴りました。私はとても怖かったです。私が開けてもいないブラインドカーテンを閉め忘れた!と言って怒鳴りました。確かにカーテンは閉め忘れました。でも私はとても忙しくて、カーテンを閉める暇がなかったのです。たまたま忘れただけなのに、ものすごく怒って、私はとても怖かったんです。もう私は辞めた方が良いと思うんです。』

だそうだ。もう最初から最後までツッコミどころ満載だ!読み終わったくらいのタイミングで夫から電話。

「読んだ??どうなってるのこれ?何があったの?」

一通り、何があって注意したのかを簡単に説明した後

まずね、私は怒鳴ってないし、もちろん何度どころか1回も。ただ、大きいため息はついた。あまりにも今まで同じことを注意してきたから。あと、カーテンを閉めるって、紐を引くだけよね?カーテンまで歩く手間を考えても5秒もあればできること。それが忙しかったってどういうことよ?笑っちゃう。私が帰ってきた時、座ってスマホいじってたけど?あんなに掃除道具を散らかしっぱなしにしてる割に、部屋の中は特別な掃除をし感じもないよ?普通に掃除はできてたとは思うけど。怖かったっていうけど、こんな虚偽を平然とあなたに愚痴るRの方がよっぽど怖いわ!」

「あー、そんなことがあったわけね。確かに、君の英語力を考えると英語で何度も怒鳴るなんてアリエナイな笑。それに普段から彼女に怒鳴ったりはしてないし」

「その通り。色々注意したのは事実だけど、雇い主として当たり前の要求をしただけで、理不尽なことは一切言っていないし、怖い言い方なんてしたこともない。仕事に不満があったら『ここはこうして欲しい』『これは直して欲しい』って直してもらうのは雇い主としては当たり前のことじゃない?でも、たった3ヶ月の間に辞めるって言ったの2回目だよ?なんかこの人ヤバいんじゃない?辞めたいって言ってるんだから、もう辞めさせればいいよ。」

私は本気でそう思っていた。辞めたいっていう人を引き止めて働き続けてもらうことは、お互いに取って得策ではないと思うから。

「いやいや、ちょっと待ってよ。今いなくなったら困るでしょ?これからちょくちょく日本に帰国することになるから、ヘルパーを雇おう!って言ったの君でしょ?もうちょっと我慢したほうが…」

私は夫の話を遮った。

「はぁ?!なんで私が我慢しないといけないの?じゃぁ、夜に家の中が丸見えでも、掃除道具がバラバラに置かれていても、犬たちの夕飯時にわんわん吠えられ続けるのも私が我慢しないといけないの?それはおかしいでしょ?こっちは働いてもらった対価とちゃんとプライベートが約束される部屋も提供してる。賃金に見合った働きをしてもらうために、私たちの要求にヘルパーが応えるのが当然で、私たちが彼女の機嫌を損ねないように、仕事の内容で気に入らないことも我慢するって変でしょ!なんでヘルパーの味方してんのよ!」

「いあ、君が言ってることは正しいよ。でも、ヘルパーいなくなるの困るんでしょ?もうちょっとの辛抱じゃない?とにかく、もうすぐ帰るから、帰ったら話そう」


 時計を見たら、19時になろうとしていた。もう犬たちのご飯の時間だ。ヘルパーRが準備に降りてくる気配はない。辞めるって言ってるんだ。仕事放棄するつもりなんだろうし、私もそんな人間に何も頼みたくはない。

犬たちは敏感だ。私のただならぬ雰囲気を察してか、ぴんく はご飯の時間でも激しく吠えてこない。

「良い子だねー」と犬たちに笑いかけながら心は煮えたぎっていた。犬たちの陶器の食器をカタカタとテーブルに置いて、フードの入っている容器の蓋を開け、はかりで分量を測る音が聞こえたのだろう。ヘルパーRが自室から出てきた。

「Ma’am, 私がやります」

私は彼女の目も見ずに、手を動かしながら

「No need. Because you want to leave here? You don't need to anything. (必要ない。あなたここを辞めたいんでしょ?何もする必要ないよ)」

と、至って冷静に静かに言った。また大声で怒鳴られたとか言われかねい。というか、何を言うにも大声でなんて言ったことはない。元々簡単センテンスしか言えないんだし、言葉が出てこなくてジェスチャーと単語だけで伝えることの方が多いくらいなのに。

すると、ヘルパーRは、何も言わずに自室に戻った。そして間も無く、バンバン!と何かを壁にぶつけるような音がした。犬たちもビクッとしたが私もかなり驚いた。固いものではなさそうだ。おそらく枕かクッションのようなものを壁か床に叩きつけているような音と、家に響く振動。


怖い。。。私、殺されるんじゃない? 

冗談抜きでそう思った。

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