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第一回 私やめます事件② (12)

「Sir、Ma’am は私の仕事が気に入らないようです。辞めた方がいいと思います。」

私と夫はソファに座っており、ヘルパーRは、ダイニングテーブルに寄りかかって、上から私たちを見下ろすような位置関係で言った。

「一体何があったの?」

と私に日本語で言って来たので、先ほどメッセージに入れた内容をもうちょっと細かく彼に説明した。すると夫は、

「まず、妻が言うまで散歩に行かなかったそうだよね?しかも、むらさき は公園に連れてないんだって?」

「Yes、Sir。私はma'am が一緒に行くんだと思って、ずっとma'am からの連絡を待っていたんです。そしたら、家の周辺を散歩するように指示があったので、やりました。」

「私が仕事でいないのに、どうして今日も一緒に行けると思うのかな?それに、私がいない時に家の周りを散歩するのはちびっこたちで、むらさき は公園に散歩行くことはここに初めて来た時にやってほしいリストとしてプリントしたやつを渡してあるはず。むらさき については、彼女が来てから1度も近所の散歩をお願いしたことなんてない。今日に限って私を待ってるとか、近所の散歩でいいとか、おかしいよ。」

私は日本語で夫に説明し、それを彼が、妻はこう言ってるけど?と英語にして言ってくれた。それに対して、ヘルパーRは

「でも、家の周りを30分歩きました!」

私が言ったことの返事にはなっていない。何か特別な理由があってそうせざるを得なかったならまだしも、今回は私たちの指示を無視して勝手な自分の判断で散歩がこうなっただけである。彼女に散歩の内容を決める権利はない。それを反省するでもなく、十分歩かせた!と強気で言ってくる。ヘルパーってこういう感じが普通なんだろうか?色々頭を駆け巡ったが、多分何か言っても理解できないだろうと思い、とりあえず、夫の通訳で

「近所の周りを30分ゆっくり歩くのと、公園にいって20分思いっきりボールを追いかけて走るのとでは、運動量が全然違う。むらさき は、若くて運動量が必要。」と言ってもらい、夫も自分で付け加えた。

「僕たちがあなたを雇うことにした1番の理由は、犬の世話をしてもらうこと。それはあなたを雇う面接の時も、家に来た日も口頭でも書面でも示してあるよね?ヘルパー紹介所にも、その条件に合う人を探してほしいと言って、あなたが応募してきた。きちんと犬の散歩ができないなら、僕たちはあなたを必要としないんだよ?」

 自分から辞めることを仄めかしたくせに、夫からこう言われてヘルパーRはちょっとひるんだ。全力て止めてもらえるとでも思っていたのか。夫の言ったことに対して、ヘルパーRは

「Yes、Sir.」と言った。

夫は続けて、

「今日の食事は何?おかずが1品しかなかったけど。」

「Sir, とても忙しかったんです!」

「は?!私が帰って来た時、階段に座ってスマホいじってたじゃん!」私が日本語でいうと、旦那っちは英語で

「今日何をしたの?洗濯、掃除、夕方の散歩は全部で1時間もかかってないよね?それって、丸1日はかからない仕事だよね?妻が帰った時に座ってスマホ見てたそうだけど、もうちょっとちゃんとご飯作る時間あったと思うけど??」

「でも、Sir! 本当に忙しかったんです!」

「じゃ、何か特別なことしたの?どこか大掃除したとかさ」

「いえ、特には。あ!肉がなくて夕飯が作れなかったんです!」

呆れる。中学生のような言い訳ぶっ込んできた!

「あのさ、あなた料理が得意だったんじゃないの??冷凍庫にも肉入ってると思うし。まぁいいや。これからは、必ずおかずは2品か3品は必ず作って。できれば日本食も覚えてくれる?あなた面接で妻から教えてもらって日本食覚えるって言ってじゃない?」

いいぞ、夫よ!ナイスだよ!まとを獲すぎてて、ヘルパーR何も言えない。元々本気で辞める気もないから、正論言われたら反論できないのだ。続けて夫は

「あと、犬たちの薬を忘れないでくれる??病気だから飲んでるの。1度忘れたくらいじゃ大丈夫だろうけど、続くと困る。」

「Yes...sir. でも、私が物忘れするのは、お腹を切ってるからなんです!」

「は??」と夫。ヘルパーRが話を続ける。見ていると、お腹に手を当てながら話始めたのだが、私には何と言っているのか分からず、しばらく2人のやり取りを見ていた。夫は一通り話を聞いて、

「訳わからんこと言ってるんだけど」

「なんて?」と私。

「なんか、双子を妊娠した時に、帝王切開で産んだんだって。その時にお腹をメスで切ったんだって。その後から、記憶力が落ちたって言ってる。なんか、君がブラインドを締め忘れることや、薬を飲ませ忘れることに対してすごく怒るけど、お腹を切ったせいなので、仕方がないって言ってる」

「はぁ?お腹を切ったら記憶力が落ちるなんて初めて聞いたんだけど」

あまりにも突拍子もないことで驚くと同時に、『すごく怒る』ってなんだよ!私は一度も怒鳴ったりしたこともないし、クドクドと叱りつけたこともないじゃんか!ものすごく話を盛られて不愉快だ。

 

 日本語でそんなやりとりをしていると、ヘルパーRは

「あの、あそこにあるWEBカメラは動いてますか?いつも私をあのカメラで見張ってるんでしょ!!私はちゃんとやっています!」

 私と夫は顔を見合わせた。(なんで突然WEBカメラ?)と口には出さなくてもお互いに思ったのは分かった。

「つけてないよ?あれは あお が発作で倒れた時があって、留守になった時に心配だから買ったんだ。あなたが来る何ヶ月も前からあるけど、出かける時につけていただけだし、あなたが来てからは1回もつけたことないけど?」

と夫が説明したが

「私は全然つけてくれても構いませんよ!」

夫もその言い方と、今日のヘルパーRの言動にも内容にもカチンと来たのだろう。

「OK, じゃぁそうさせてもらうよ。たまに付けるね。まぁ、今日はこの辺にしとこう。まだうちに来て1ヶ月ちょっとじゃない?お互いにまだ意思の疎通も出来てないってこともあるし、話合って解決していこう。じゃ、終わり!」





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