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第3話:復讐の始動

朝靄の街。

酒場の奥、薄暗い席に座り、俺は耳を澄ませていた。

獲物の動きは、直接聞くよりも、他人の噂話から掴む方が早い。


「勇者真田様は、北の砦に向かわれたそうだ」

「今度は魔族の拠点を討つらしい。隣国からも援軍が——」


——北の砦。

そこは魔物と人間の境界線、前線中の前線。

生き延びるには常に兵を動かし続けねばならず、補給線も脆い。

……つまり、狙いどころはいくらでもある。


「どうする? そのまま突き殺すか?」

深淵の主が甘く囁く。


「いや……奴はまだ生きていろ」

俺は静かに杯を置き、口角を上げた。

「——まずは土台を崩す。仲間も、信用も、全部な」


酒場を出ると、昨夜助けた少女が道端に立っていた。

包帯を巻いた手を庇いながら、俺を見上げる。


「……あなた、旅人なんでしょう? 仕事、頼みたいの」

「俺に?」

「北の砦に荷を届けてほしいの。危険手当も払う」


偶然か——いや、これは利用できる。


「いいだろう。だが条件がある」

「じ、条件?」

「砦の中を、案内してもらう」


少女は一瞬ためらったが、すぐに頷いた。


その夜。

宿の部屋で、俺は地図を広げ、赤い線で補給路をなぞっていた。

砦へ続く一本道。

途中にある峡谷は、岩盤が脆く、少しの衝撃で崩れる——と地図の注釈にある。


「……ふふ、ずいぶんと楽しそうだな」

深淵の主の声が、愉快そうに響く。


「想像してみろ。補給路が途絶え、食料も武器も尽きる砦を」

「そして孤立した真田が、誰一人守れず、泣き叫ぶ姿を——」


闇の中で、俺の笑みはゆっくりと歪んでいった。


——復讐は、もう始まっている。

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― 新着の感想 ―
正体晒さず、各個に闇討ちでもするか、堂々と人外になった事明かして、魔物でも従えて襲うのかと思ってたら、人のふりしてじわじわ行くタイプか。
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