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第七回: エッセイを書くということ

ボクは日々、実に様々な文章を書いている。Facebookへの個人的な投稿、仕事のメール、家族や友人とのチャット、業務上のドキュメント、そして時には小説やエッセイといった創作物まで。

書いている内容も、その目的も、あるいは文体や言葉遣いも、それぞれが全く異なる顔を持つ。

にもかかわらず、それら全てが紛れもなく「自分の文章」であるという事実に、ボクは時折、不思議な感覚を覚える。


そんな多様な文章の中で、自分自身が読み返して面白いと感じるのは、意外にも「仕事のメール」と「エッセイ」だ。そして、その対極にある、あまり面白くないと感じるのが「仕事のドキュメント」である。


仕事のメールは、ある意味で究極の表現形式かもしれない。

特に、相手に伝える内容が微妙なニュアンスを含む時、その面白さは際立つ。本当は直接電話で話す方が早いのだろうが、言い洩らしがあったり、証拠が残らないと後々面倒なことになるようなケースでは、たとえ時間がかかってもメールで書き記す。本当に重要な局面では、まず綿密にメールを作成し、その内容を確認するように後から電話をかけることさえある。

おそらく、ボクが書く文章の中で、これほどまでに簡潔で、要点がまとめられ、しかも話す順番までが精密に設計されているものは他にないだろう。だからこそ、読み手にとっても最も読みやすい文章になっているはずだと思っている。


その次に面白いと感じるのがエッセイだ。これは仕事のメールとはまさに対極に位置する。構成も、話の順序も、ほとんど何も考えていない。書きたいこと、思いついたことを、ただそのまま、その時の思考の流れのままに書き連ねていく。頭の中ではある程度の整理がされているのかもしれないが、実際に文字にする際には、記憶が呼び起こされるままに筆を進めるのだ。


これはつまり、ボクの頭の中の動きが、そのまま文章となって目の前に現れることを意味する。だからこそ、エッセイは面白い。これを読んでいると、まるで自分の過去の時間を遡っているような感覚になる。かつてmixiなどで熱心に日記を書いていた頃も同じだった。長い日記を平気で綴っていたが、今にして思えば、あれらもまた、一つ一つがエッセイだったのだ。時間が経ってから読み返すと、少々恥ずかしい内容のものもある。しかしそれは、書いた内容が恥ずかしいのではなく、書いた当時の自分が、まだ未熟で恥ずかしい人間だったのだと、妙に納得してしまう。


小説は、エッセイのようにはいかない。世の中には、書き下ろしで何万字もの大作を一気に書き上げてしまう作家もいるらしいが、おそらくボクにはそれは無理だ。小説を書く際には、それなりに構成をプロットしておかなければ、同じことを何度も繰り返してしまったり、あるいは、最初に思い描いていたのとは全く違う方向へ物語が脱線してしまったりする危険性がある。それはそれで「味」になることもあるかもしれないが、作品としての品質や完成度を考えると、やはり精密なプロットに従って書く方が確実に良い。少なくとも、商業作家として活動していくつもりならば、そうあるべきだと考えている。


では、エッセイはどうか?

これに逆に精密なプロットを書いてしまえば、それはもはやエッセイではなく、短い小説になってしまうだろう。だからエッセイは、思いつくまま、何一つメモも残さずに、いきなり書き始めるのが一番だ。もしかすると、そうした書き手の「ライブ感」が、エッセイの面白さにつながっているのかもしれない。


ボクの小説とエッセイ、その両方を読んでくださっている方がいらっしゃるとしたら、いったいどのように感じているのだろう、と考えることがある。どちらの方が、より面白く感じられるのだろうか。


ただ、職業としてエッセイを書き続けるのは、ひどく難しいだろうとも思う。小説はプロットさえ固まれば、その後の執筆はかなり自動的に進められる部分があり、いつ頃書き終えるかという目処も立てやすい。しかしエッセイはそうはいかない。そもそも、書きたいという「ネタ」が頭の中に十分に蓄積してこなければ、一文字も書くことができない。そして、その蓄積が一定の閾値に達した時、まるで堰を切ったかのように、文章が勢いよく溢れ出すのだ。もし締め切りに追われながらエッセイを書かなければならないとしたら、それはきっと地獄に他ならないだろう。


ボクの読者の方がこれを読んで、どっちが面白いか、とか書いてくださったらすごくうれしい。

感想、お待ちしています。


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