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(3)

 

 E・T。

 えみ・とくしま。

 徳島絵美。


 間違いない。

 彼女は高松さんの妹だ。

 絶対に間違いない。

 その彼女が「私を探して」と言っている。


 それにしても、あの素敵な女性が高松さんの妹なんて……、


 仕事中は考えないことにしていたが、家に帰ると彼女の顔が浮かんできて、すぐに耳を甘噛みされた感触が、そして、柔らかな唇の感触がリアルに戻ってきた。


 わたしは右手の中指で唇を触って、忘れていないことを確認した。

 すると、猛烈に感情が高ぶってきた。


 会いたい。

 なんとしてでも会いたい。

 そして、もう一度甘い口づけを交わしたい。


 わたしは急いでスマホを手に取って、二つのキーワードを検索画面に打ち込み、躊躇わずに検索ボタンを押した。


 すぐに検索結果が現れた。

 東京西洋美術館のキュレーターと表示されていた。

 7年前のラファエッロ展の企画担当が彼女だと記されていた。


 高松さん―ラファエッロ―徳島絵美、

 三つが一つに繋がった。

 しかし、残念ながら顔写真が掲載されていなかった。

 だから夢と同一人物かどうかわからなかった。

 それに、困ったことになっていた。

 展示作品入れ替えのために9月末まで休館すると表示されているのだ。

 それだけでなく、電話やメールでの問い合わせも休止と明記されている。


 困った。

 連絡しようにもその手段が見つからない。

 10月1日になるまで待つしかないのだ。


 しかし、大丈夫だろうか? 


 留守になっている高松さんの住居のことが気になった。


 家賃は? 

 電気代やガス代や水道代は? 

 新聞や手紙は? 


 気になり出したら、どんどん心配になってきた。


 家賃滞納で大家さんに訴えられるのではないか、

 貯金を没収されるのではないか、

 油絵も含めて家財道具を処分されるのではないか、

 いや、それより、所在不明で捜索願を出されて警察沙汰になるのではないか、


 良からぬことがどんどん浮かんできて、頭の中を占領し始めた。

 でも、解決の道は何も無かった。

 彼女と連絡が付かない以上、どうにも動きようがなかった。

 10月1日になるのを待つしかないのだ。

 彼女と高松さんのことは一旦忘れることにした。



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