闇の円卓2
会話のみとなっております。
闇が満ち、闇に閉ざされ、互いの姿も見えぬ部屋の円卓に集う者たち……
「おいおいおいおい! どう言うことだ? 聖女に男を誑かせて、あの小生意気な娘を孤立させて破滅させた後、ウェステリア公爵家諸共嵌め殺す筈だったろうが? なぁ、おい!!」
「フィナンレーヌめがしくじりおってからにっ!!」
「第二王子と取り巻きも役に立たず、逆に断罪され、フィナンレーヌのしくじりで、いくつかの駒も芋蔓式にとらえられたわね。ねぇ、今どんな気持ち? どんな気持ち?」
「貴様ぁっ!! 喰い殺されてぇかっ!!」
「止せ……莫迦めらが。御姫様がゼスフォーリア国の愚かとはいえ力ある貴族を切り崩しておられるお陰で、ゼスフォーリア国王はその穴埋めに追われている」
「それも上手くいっておらんようじゃて。あの国は新しい芽を摘み取って来た。今さら優秀な者を登用しようとて、貴族――それも力強い魔力を持つ貴族以外は人間と思うておらん者どもが世襲制で繋いで来た国よ。其奴らの拒絶反応は想像に難くないわい」
「優秀な者に貴賤は無いんだかね……。優秀な者たちは公女殿下への嫌がらせのが一環で、第二王子と取り巻きの者どもが、彼女が着目した者たちを追い出させたからな」
「では、どうする? 第二王子も駄目、聖女も駄目となると……」
「海上交通路に海賊を配置して貿易の邪魔をするか?」
「現実的では無いわい。ウェステリアの要塞の様な高速艦と何ぞ殺り合えんわ。忘れたか。我は奴等の二の舞は御免被るわい」
「では神殿から破門となれば、いくら公女殿下とはいえど、民からの信頼は失われるのでは?」
「ふん、例え公女殿下の信頼を失墜させたところで兄であるアーサーが後を引き継ぐだろう。次期公爵の事業の一つになるだけだわい」
「ゼスフォーリアは悪徳貴族の粛清続き。次は自分かも知れないと、臆病風に吹かれて引き篭もる者。その逆に粛清嵐となったきっかけを作ったウェステリアの小娘の掌の上で踊らされている王家に抗議しようと有志を集める者がいる」
「抗議なんぞ意味が無ぇ。あの女の喉笛を噛みちぎって臓腑を貪ってやるって言う気概を持つ者は居ねぇのかよ」
「ふふ。ご自身の立派な牙で成したら如何かしら? あぁ、御免遊ばせ。その牙をウェステリア公女殿下に圧し折られて咬む牙が有りませんでしたわね」
「んだとぉっ!! テメェッ!! もっぺん言ってみやがれっ!! その首掻っ捌いてやんよっ!!」
「ほたえな。獣王国の小童。喉笛を咬み付いて、喰い千切るとは言わんとこころがお主の浅慮さよ」
「獣王国の子倅では無いけれど、牙を折られたに等しい者の集まりよね」
「もう、いい加減にウェステリアに、公女に固執するのは止めにしないか?」
「んだとぉっ!!」
「海でも陸でも、空でさえ我々は負けたのだ。高速の要塞の様な戦艦に、陸戦兵器に、空飛ぶ飛竜機によって、な。それもこれも、10年前に公女を事故に見せかけて殺めようとしたのが間違いだったのだ……」
「はっ! そりゃああんたらの失敗だろうがよ!!」
「あれで生き残るなどと誰が思う?」
「ならば、と妻に迎えて、外から徐々に乗っ取る算段も、のう? その計画もご破算よ」
「何も、我々の手で裁きを下さなければならないといけない訳では無いのです……。魔物どもを狂乱させ、ウェステリアを襲わせれば良いのです。欲しいのは、ウェステリアの大地。技術はまぁ、技術者どもや研究家の仕事でしょう。馬車馬の如く使って四六時中研究させれば良いのですよ」
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「ソージュお嬢様……奴等は……」
「無知って怖いわね。ティターニア、皆への報連相を任せたわ。私はティアと話して、二人で結界晶石へ力を注いでみるわ」
「畏まりました」