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第95話 蒼月邸での鍛錬 -35-

びっくりするほど爽快な目覚めだった。


昨夜、部屋に戻ってきて早速、時報ときしらせさんに話しかけてみた。

姿は見えないのに声だけ聞こえるという不思議な状況の中、東雲しののめの刻の半刻はんこく(約一時間)前に起こしてほしい、とお願いすると、「あい、わかった。」という返事をもらった。

あまりにも簡単すぎて、半信半疑でいたけれど、朝方、鳥の鳴き声と川のせせらぎの音と共に、軽やかな琴の音が部屋の中に響き渡った。とても心地よい目覚まし音だ。

その時に現在時刻を尋ねたところ、「あと半刻で東雲しののめの刻」とのことだったので、正しい時間に起こしてもらったようだ。


この最強のめざまし時計との合わせ技で、昨夜、実はもう一つあることを試していた。

それは、静寂しじまと癒しの結界に埋もれて眠る、ということ。最初は単なる思いつきだったのだけど、ドーム状や半月状ができるなら、他の形にもできるのでは?と思ったのだ。


試しに平べったいベッドのような形状を意図して結界を張ったところ、なんと言うことか、あっさりとウォーターベッドのようなものが出来上がった。

中の空間に守られているわけではないから、もう結界とは呼べないのかもしれないけれど、そのジェル状の弾力のあるベッドの上に横たわると、身体はやさしく沈み込み、重力から解放される感覚に包まれた。

そのあまりの快適さに、身体のすべての緊張が解け、深いリラクゼーションの中で眠りに落ちた。


そして、今朝のびっくりするほど爽快な目覚めに繋がったわけである。

いまだにどういう理屈かわからないのだけれど、一晩中結界を張り続けたことになるというのに、疲労感は全くない。むしろ癒されまくりで身体も心も軽く、昨夜あんなに張っていた筋肉が、筋肉痛すら起こしていない。


そんなわけで、今、私は、最高に気分が良い。

結界を解いて身支度を始め、東雲しののめの刻になる前には準備万端になっていた私は、障子を開けて廊下を挟んだ引き戸から見える庭を眺めてぼーっとしていた。


どれくらいそうしていただろうか・・・

しばらくすると、廊下から足音と人の話し声が聞こえてきた。


部屋から顔を出しそちらに視線を向けると、蒼月さんと小鞠さん、そしてほむらくんが揃ってこちらに向かってくるのが見えた。


「おはようございます。」


私からの挨拶に三人それぞれが挨拶を返してくれる。それから、よく眠れたか?とか、疲れはとれたか?といった会話を経て、今、四人で私の部屋の真ん中に座っている。


「では、まずは昨日の状況を再現してみよう。」


蒼月さんの言葉を発端に、ほむらくんが立ち上がる。保存された妖力に「火球投げ」と書かれていたことから、昨日(ほむら)くんがその術を使った場面を再度なぞってみることになったのだ。

まずは輝夜石かぐやいしの状態を確認する。一旦は鏡台の引き出しにしまっていたものを取り出して、みんなの前に置く。


「なんの妖力も感じないな。」


と、ほむらくんが言い、蒼月さんと小鞠さんも同じようにうなずいた。


次に、私が静寂しじまと癒しの結界を張り、ほむらくんがそこに向けて火球投げを3発だけ放つ。

それからすぐに結界を解き、再びみんなで輝夜石かぐやいしを見ると・・・


「やはり妖力を宿しているな。」


今度は蒼月さんがそう言って、輝夜石かぐやいしを持ち上げた。


「これは・・・」


蒼月さんは少し難しそうな顔をした後、輝夜石かぐやいしを私に手渡して、言葉を続ける。


ほむらの火球投げが3つ保存されているのは確認できたが、やはり発動できるのはおまえだけらしい。」


その言葉を聞いた小鞠さんは、楽しそうな顔で、


「では、昨日の再現じゃな!我らは安全なところにおるゆえ、遠慮なく火球を飛ばしてよいぞ。」


と言って、昨日と同じように結界を張り、部屋に防御を施した。

私はというと、昨日は突然のことで何が何だかわからなかったけれど、今日も同じことが起こるのであれば・・・と、昨日よりかは幾分覚悟を決めて輝夜石かぐやいしを手に取った。


石を握り眼を閉じると、昨日と同じようにキャビネットのようなものが見えてきて、やはり昨日と同じように光るキャビネットがある。

ラベルに至っても昨日と状況はほぼ同じで、唯一違うのは、書かれた数字が3であるということだけだ。


あと、昨日は気づかなかったけれど、やはりボタンのようなものがついている。

再生、停止、一時停止、削除、そして今日は押せるように見える映写機のようなマーク・・・ここまでは一緒だけれど、もう一つは初めてみるボタンだ。

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