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第8話 迷い込んだ世界 -3-

さて、どうしたものか。



猫又に言われるがままに街の入り口に来てみたものの、これから先どうしたらよいか、さっぱり見当もつかない。

旅行で見知らぬ街に行った時、私はまず「観光インフォメーション」を訪れる。

今時はインターネットでなんでも調べることができるけれど、その土地の人と直接話すことで仕入れることができる「ちょっとした情報」が好きなのだ。


でも、ここに観光インフォメーションがあるとは思えない。


「そもそも、観光地じゃないから・・・」


またひとりごとをつぶやく。


「そういえば・・・」


バッグの中からおもむろにスマホを取り出して画面を見る。


「ですよねー・・・」


もしかしたら・・・と淡い期待を抱いたのが馬鹿らしいくらい、当然のように圏外だった。


「まっすぐ進むしかないか・・・」


苔むしたくねくね道は、中央に見えるねじれた古木の奥へと続いている。

さすがに「街の入り口」と謳っているくらいなので、行き止まりになっているとは思えない。というか、この道を抜けるとまた別の場所がひらけていると信じたい。


「誰か私と会話してくれる妖怪に会えるといいんだけど・・・」


一般的に妖怪というとイタズラしたり襲ってくる怖い存在と思われがちだけど、私にとってはそうでもない。

なぜなら、小さい頃に母が語ってくれたお話の中に登場する妖怪は、怖い妖怪ばかりではなかったからだ。


「妖怪も人間も同じ。人間だっていい人もいれば悪い人もいるでしょう?」


ふとその言葉を思い出す。


実際今、私を遠巻きに見ている妖怪たちからは悪意のようなものは感じない。

むしろ、なぜここに?何をしに来た?どこに行こうとしている?という戸惑いのようなものを感じる。


改めて自分の置かれた状況を認識して、ふふ、と笑いが漏れた。

だって、普通に考えたら、妖怪に囲まれたこんな状況でよくそんなのんびり構えてられるなと思われても仕方ない。


だけど、実際の私はそこまで怯えていない。

正直、鳥居をくぐった直後は、本当にここがどこかもわからず不安や恐怖もあった。

それが「あやかしの世界」と分かってからも、もちろん知らない世界なわけだから不安は残った。

一人ぼっちで知らない場所にいることからの孤独も多分に感じる。

でも、不思議と恐怖心は薄れていって、むしろどこか懐かしい気持ちになっていった。

なぜ懐かしさを感じるのかはわからない。

だけど、白い狐に導かれて飛び込んできた世界なのだから、来ました!即、食べられちゃいました!にはならないだろうという妙な自信があるのだ。


「起きることには全て理由があるのよ。それがご縁というものなの。」


また母の言葉を思い出す。

その「ご縁」とやらがあるのなら、私がここに来たことにもちゃんと理由があるはずだ。

改めてそう考えたら、なんだか元気が出てきた。

それでもまだ不安な気持ちはあるし、とりあえず全くもってどうしたらいいかわからないけれど、誰かしら優しい妖怪もいるはず。


そう信じて、相変わらずの幾多の視線を感じながらも、くねくね道を歩き出した。

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