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第7話 迷い込んだ世界 -2-

口をぱくぱくして驚いている私の周りをゆっくりと一周する。


それでもまだ声の出ない私を再度見上げた黒猫は、


「ほれ。あやかしの街の入り口はもうすぐそこじゃ。戻るのか進むのか。まあ、戻れはせんので進むしかないんじゃがな。」


それだけ言い残して、ひらりと身を返して草むらに消えていった。


「猫又って・・・・妖怪の?」


黒猫を呆然と見送りながら、ようやく自分がどこにいるのかをなんとなく察してきたものの、確証のないままポツンと取り残されていることに気づく。

ふと周りを見渡すと、また別の得体の知れない生物が遠巻きに見ている。


(確かに妖怪と言われたら、そう見えなくもない。)


妙に納得しつつ、「引き返せない」と言われたことを思い出し、軽くため息をつく。


「まぁ、いっか。」


帰れないんじゃ仕方ない・・・昔から変に諦めの良い私は、いつもの口ぐせををつぶやいて立ち上がると、猫又が「あやかしの街の入り口」と指した方向に向かって歩き出した。



それからほんの数分のことだろうか。

幾多の視線を感じつつも、しばらく道なりに歩いていくと、門のようなものが見えてきた。

門番の類は見当たらず、誰でも自由に行き来ができるように見える。


出て行く人・・・じゃなかった、出ていく妖怪も入っていく妖怪もそこそこいる。


門が近づくにつれ、私に気づいた妖怪たちが、立ち止まって私の様子を伺っている。


(結婚式帰りの格好だから浮いてるのかな・・・・って、そうじゃないよね・・・)


ジロジロと品定めするように見てくる妖怪もいて、いたたまれない気持ちになりつつも恐る恐る門をくぐる。

すると、急に視界が開けて、目の前に、門の外からは到底想像できなかった景色が広がった。


渦巻く不思議な光に照らされた幻想的な森。

森の奥には、ねじれた古木がそびえ立ち、その周囲にはふんわりと漂う霧がかかっている。枝には無数のランタンが吊り下げられ、優しい光が周囲を照らし、神秘的な雰囲気を醸し出している。


苔むした道がくねくねと続き、古木の奥には異世界へと続くかのような木製の門が立っている。その周囲には、和の装飾が施された灯籠が点在し、穏やかな光が静かに揺れている。

霧の中からは、幻想的な光が舞い上がり、まるで精霊たちが踊っているかのような不思議な空間を作り出している。


遠くには、樹の根元に妖怪たちが集まり、思い思いの時間を過ごしているような姿も見える。

風が頬をかすめ、木々のざわめきが心地よく響く。


目に映る光景は馴染みのないものなのに、どこか懐かしさを感じさせるこの場所は、まさに夢の中の景色のようで、訪れる者を優しく包み込む。


「ここが、あやかしの街の入り口・・・?」


何もかもに圧倒されて、私はただただ立ち尽くしていた。

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