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第71話 蒼月邸での鍛錬 -11-

このお屋敷では東雲しののめの刻(6時〜8時)に一日が始まると聞いた。


「ここの人って、目覚ましがないのにどうやって起きてるんだろう・・・」


こちらに来てからずっと疑問に思いつつ放置していたけれど、今日こそは誰かに聞いてみようと思う。

むくりと起き上がり、その疑問を口から出していることにすら気づかずにお布団を畳んでいると、


「陽の光とか、妖鳥の一番鳴きとか、色々あるだろ?」


障子の外から突然声が聞こえてびっくりする。


ほむらくん!?」


「うん。蒼月様から女子おなごの部屋に許可なく入るな、って昨日注意されたから、琴音が起きるまで外で待ってた・・・って、おはよー!」


そう言われて慌てて障子を開けると、廊下にぺたんと座り込んで指先から炎を出して遊んでいるほむらくんと目が合った。


「おはよう、そして、お気遣いありがとう。でも、ほむらくん子供だし、まあ、勝手に入っても問題ないよ。」


お布団も畳んでいるし、廊下に座らせておくものどうかと、とりあえず部屋の中へ通す。


「だから、子供じゃないって!それに、おいらは蒼月様の使い魔だから、おいらの行動は全て蒼月様に筒抜けだけど?」


子供じゃないって!はいつもの戯言としても、後半なにやら聞き捨てならないことを言ったような・・・。


「ん?なんて?」


「使い魔の見たもの、聞いたことは全て主人にも伝わるかんな。ただし・・・ぶはっ!」


とりあえずほむらくんの顔に枕を押し付ける。燃えてないのを確認して、その上から布団を被せる。


「何すんだよーーーーー!」


布団を押さえつけながらとりあえず紐の様なものがないか、辺りを見回す。


「キミの見たものが蒼月さんにも伝わるんでしょ!?ちょっと、寝起きのこのだらしない格好を見せるわけにはいかないから、しばらくそこで大人しくしてて!!」


ジタバタともがくほむらくんが大人しくなったのを確認して手を離す。


「いいって言うまで布団の中でじっとしててよ?」


はーい、とくぐもった声を聞きながら、慌てて身支度をする。化粧はしてもしなくてもさほど変わらないのでいいとして、この着崩れた浴衣とボサボサの髪だけはどうにかしたい。

そうしてある程度普通に整えたところで、布団を剥いでほむらくんを救出する。


「も〜〜〜。苦しかっただろ!蒼月様にも伝わるけど、すべての情報が無条件で伝わるわけじゃないんだ。例えば、蒼月様か使い魔が意図しない限り蒼月様には伝わらないから、おいらは自分の判断で必要だと思った時は情報を送る。逆に、蒼月様の方から知りたいことがある場合には、その範囲内で情報が自動で送られるんだよ、って言おうとしたのに・・・」


それにしても用心するに越したことはない。

とはいえ、蒼月さんは私には興味がないだろうから、知りたいと思うことはないと思うけど、この子が何を基準にして情報提供をするかはわからないので、とりあえずは最低限気をつけなくては・・・


「今後は色々気をつけることにするわ・・・で、ほむらくんはどうしてここに?」


朝ごはんの誘いではないだろうし、鍛錬もこんな早朝からやるとは思えないし、それ以外何かあったかな?と考えながら問いかける。


朝餉あさげの前に庭掃除手伝ってもらおうと思って!」


そういうことね笑


「もちろんだよ!じゃあ、ちょっと着替えるから外で待っててね!!」


ほむらくんに外に出てもらうと、素早く着替えを済ませる。着物への着替えも慣れたもので、今では短い時間で着ることができるようになった。(まあ、普段着としての着方だからだけれど)


「はい、お待たせ!」


そう言って障子を開けると、ほむらくんから茶碗に入ったお水と、紐の様なものを渡される。


「袖が邪魔にならないように縛らないとな。」


ああ、たすき掛けに使う紐ね。たすき掛けは長老のお屋敷でもしていたから問題なくできる。


(でも、庭掃除にたすき掛けって必要だっけ?)


そんなことを考えながら渡された水を飲み終えた私は、たすき掛けをしながらほむらくんと一緒に庭に出る。


「じゃあ、まずは準備体操な!」


庭掃除に準備体操・・・?屈伸を始めるほむらくんを怪訝な目で見つめる私に、ほむらくんは笑いながらこう言った。


「今日から鍛錬って言っただろ?」


まさかの早朝からの庭掃除鍛錬!何が何だかわからないけれど、とりあえず同じ様に準備運動を始める私を見て満足そうにうなづくほむらくん。

一通りの準備運動を終えると、ピシッと直立したほむらくんがこう言った。


「では、本日の鍛錬を始めます!」


(庭掃除はどこに・・・?)


ここまでくると、絶対に「庭掃除」ではなく「庭掃除を使った鍛錬」なのだろうと察しはつくけれど、わざわざ「庭掃除」と言って呼び出した意味は・・・


そんなことを考えていたから腑に落ちない顔でもしていたのだろう。ほむらくんは笑いながら言葉を続ける。


「これから毎朝、庭掃除をしながら反射神経を鍛える鍛錬をするってこと。」


ほら、やっぱりそうだった!

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