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第52話 弟子入りへの挑戦 -6-

突然の光に目がくらむ。


(え・・・なに・・・?守り水晶・・・?)


目を瞑ったまま、結界を張れと念じたつもりもないのに水晶が反応するなんて何事?と考えていて、ふと気づいた。

結界を張る時は水晶が熱くなるはずなのに、今日は温かさを感じない。それどころか、むしろ冷たく感じる。

光がなかなか収まらず、いい加減目を閉じていても眩しいなと思っていると、


ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・


地響きが湧き上がってくるのを感じて、


(え!地震!?ちょっと、こんな山の中でやめてよ!)


と慌てて目を開ける。

眩しさはまだ続いていて、真っ白で何も見えないものの、少し時間が経過すると徐々に目が慣れて来たのか、光が弱まって来たのか、周りの景色がぼんやりと見えてきた。


すると、今度は地響きに加え、崖からボロボロと岩が落ちてくるではないか。


「ちょっとちょっとーー!!!」


慌てて被害を受けなさそうな場所に逃げる。

嘆きすぎて崩れたのか?と心配になり、「崖」がどうなったかを目を凝らして探ってみるも、さっきまで嘆いていた「崖」の顔が見つからない。


え・・・?いなくなっちゃった?


私が言った言葉にショックを受けて消えてしまったのかと思い、動揺する。

しかし、「崖」は消えてしまったわけではなかった。

ただ単に、私が見ている場所が低すぎただけだったのだ。


「おおおおおおお。なんということだ!やはりおぬしだったのか!!!」


頭上から聞こえてくるさっきとは少し違う低い声に、その声の出どころを探す。


「う、そ・・・・」


自分が目にしているものを信じられないなんてどうかしてる。

この世界にやってきて、今まで見たことがないものばかり見て来たけれど、こんなに信じられない・・・と思ったのは初めてだ。


あるじよ。そなたの名前を教えてはくれないか?」


私をあるじと呼んで名前を聞いて来たのは、さっきまで崖に埋まっていた「崖」ではなく、いぶし銀のような渋い色をした、とてつもなく大きな龍だった。


「えっと・・・あなたは一体?」


この龍が崖からどのように現れたのかさっぱり分からず、質問にも答えず、思わず聞いてしまう。


「我が名は黒悠こくゆう。遥か昔、未来に起こる有事のために自らを封印した者である。」


(不穏すぎるし、自ら封印して解放できなくなるって本当にどうなんだろう・・・)


「ちょっと詳しく成り行きを聞いてあげたいところだけれど、私、ちょっと道を急いでまして・・・」


脳みそがファンタジー脳に切り替わったのか、形容し難い大きさの龍を前にして思考が現実に戻った。


あるじよ・・・われが解放されたということは、有事が近いということであるぞ。もう少し危機感を・・・」


話が長くなりそうなので、遮るように声を上げる。


「いやいやいや、先の有事より今!今が私には有事なの!!この試練をクリアしないと、蒼月さんに弟子入りの検討さえしてもらえないんだから!」


そう言って、崩れた崖を見上げる。少し崩れて登れるようになってないかな?なんて淡い期待を抱いたものの、崖はやっぱり崖のままで、形が少し変わった程度だった。


「そうよ!あなたを自由にしたら、山頂への行き方を教えてくれるって言ってましたよね?」


この事態にすっかり忘れ去られていた事実を思い出す。


「言うたな。」


「じゃあ、お願いします。私に山頂までの行き方を教えてください。」


龍の気が変わる前にさっさと教えてもらおう。すると、龍は大きな身体を揺らして少し小さなサイズになった。

そして、おもむろに私の方に腕を伸ばしてくる。

最初のサイズよりかなり小さくなったとはいえ、それでも十分大きな龍のその迫力に後退りをする私を見て、


「安心せい。悪いようにはせん。」


ははは、と笑いながらそう言った龍は、私をそっと掴むと、そのままストンと崖の上に下ろした。


(・・・)


あまりに想定外の出来事に、何が起こったのかを理解するまで少し時間がかかったが、要は、あっという間に崖の下から崖の上への移動が完了したのだ。

その出来事に呆気に取られ、龍をじっと見つめる私に、龍は、


「なんなら山頂まで連れて行くこともできるが、どうする?」


パチンと片目をつぶってまさかのウインクを披露した。

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