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第37話 夜市の暴走 -9-

蒼月さんに言われるがままに結界を解く。


「守りの結界、解けよ…!」


すると、昨日と同様、結界はぷるんと一瞬震えた後、ゆっくりと空気に溶け込んでいき、そして、消えた。


「わわわっ!」


結界が消えると同時に翔夜くんの慌てる声が聞こえたかと思うと、


「いてー・・・」


尻もちをついている彼と目が合った。

おそらく、結界にめり込んで完全に身体を預けていたら、その結界が消えて尻もちをつく羽目になったとでもいったところだろう。


「ごめん、ごめん。」


私が笑いながら謝ると、


「いや、琴音ちゃん!この結界、すごいよ!」


と、興奮冷めやらぬ感じで立ち上がり、みんなの座っているところにやってきた。


すごいってなんだろう・・・


何がすごいのかさっぱりわからず首を傾げていると、横にいた蒼月さんも真面目な顔で言った。


「これは・・・おそらく静寂しじまと癒しの結界だろう・・・」


しじま、が何か分からなくてこれまた首を傾げていると、月影さんが「静寂ってこと」と補足してくれた後、


「しかし、静寂しじまの結界や癒しの結界はわかりますが、この2つが組み合わさったものは初めて聞きますね。しかも、この餅のような弾力の結界は見たことも聞いたこともないですよ。」


と言う。


その言葉に、「そうだな。」と言った蒼月さんが、少し考えた後で翔夜くんを見て、


「翔夜は外から色々と術を試していたように見えたが、どうだった?」


と尋ねる。


その質問を待ってました!とばかりに、翔夜くんが興奮気味に話し出す。


「まず、陰の術も陽の術も見事に吸収されます。拳などでの攻撃も同じです。衝撃もなく、吸収というのが適切かと。しかも、この結界に触れていると信じられないくらい癒されます。」


そう言った翔夜くんの顔は、心なしかほわんとしている。


蒼月さんはそれを聞いてしばし考え込むように黙り込むが、やがて静かに口を開いた。


「そうか。そうなると、やはり静寂しじまの結界と癒しの結界が一つになったものと考えるのが正しいのだろう。結界の中は外の音が完全に遮断された状態だった。」


それから、


「そういえば、今朝はこの結界を張ることができなかったと言っていたな。」


私と月影さんを交互に見て尋ねる。


「はい。確かにできなかったんですが・・・」


月影さんが不思議そうにそう答えてから私を見る。


「琴音ちゃん。今朝と今とで何か違うことってあるかな?」


そう聞かれて考える。


(今朝と今とで違うこと・・・?)


なかなか違いが思い出せない。だけど、少しの間考えて、私が思い当たったのはこれだけで・・・


「あ!!今朝は着けていなかったけど、今は守り水晶を着けています。」


襟元から首にかかったままの守り水晶を取り出す。


「ちょっと見せろ。」


そう言い終わるか否かのタイミングで、蒼月さんが守り水晶に手を添えて顔を近づける。


(近い、近い、近い!!)


襟元に息がかかりそうなほど近くに蒼月さんのきれいな顔があるという事実に、顔がどんどん熱を帯びてくるのを感じる。


蒼月さんは、そんな私のことなんてお構いなしで、


「この水晶はどこで手に入れた?」


そのまま顔を上げて私を見上げる。


そして、おそらく私が真っ赤な顔をしていることに気づいたのだろう。もしくは、自分が今どれほど私の近くにいるか気づいたのだろう。


「あ・・・すまない。」


そう言って水晶から手を離すと、こほんと軽く咳払いをして、座り直した。

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