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第33話 夜市の暴走 -5-

ざわざわと騒ぎを見守っている群衆の中から、一際高い声が聞こえた。


璃雷りら!」


そう言って着物姿の細身の女性が、人混みを掻き分けるように駆け寄ってきた。


「かあたん!」


その様子からして母親なのだろう。女の子をぎゅっと抱きしめ、その背中をさすりながら、すぐさま私の方を向き直り、


「本当に本当にありがとうございました。あなたがいなかったらこの子は・・・」


と声を震わせる。


「無事で何よりです!」


本当に無事でよかった。助けには飛び出したものの、考えなしに飛び出してしまったから、危うく共倒れになるところだったと今更ながらに思う。


「もう飛び出してきちゃダメだぞー。」


いつの間にか私の後ろに立っていた翔夜くんが、しゃがみ込んで璃雷ちゃんの視線に合わせて言う。


「あーい!」


ついさっきまで危険な状況だったというのに、何事もなかったかのように元気よく返事をしている璃雷ちゃんの無邪気さに癒される。

璃雷ちゃんのお母さんは何度も振り向いて頭を下げながら、璃雷ちゃんと一緒に人混みに消えていった。

そんな二人を翔夜くんとバイバイと手を振って見送っていたけれど、完全に姿が見えなくなると、今度は翔夜くんが私に言った。


「琴音ちゃんもだよ!できるだけ離れててって言ったのに、なんでこんなところにいて、さらにあんな危ない真似をするんだよ・・・・」


口調は厳しいけれど、怒りというよりも心底困り果てた顔をしている。



「あのだるま、普通の結界じゃ対処できなくて俺でさえ手こずってたのに、もう本当に俺、心臓が止まりそうだった!!」



そう言って両手を両膝についてガクッとうなだれる。

うなだれたまま、かすれた声で


「本当に無事でよかった・・・・」


って弱々しい声で言われて、本当に心配をかけてしまったのだということが伝わってくる。


「本当にごめん・・・・翔夜くんが心配で離れられなくて・・・・そしたら子供が近づいていくのが見えちゃって、いても立ってもいられなくなったの・・・」


今度は私が翔夜くんの前にしゃがみ込み、目が合うように顔を上げ、


「本当に、翔夜くんも無事でよかった・・・」


困ったままの翔夜くんを見つめて伝える。


そして、そのまま目が合ったまま沈黙が流れてどれくらいが経っただろう。


「いつまでもサボってないで後処理、後処理。」


ペシッという音とその声に顔をさらに上げると、月影さんが翔夜くんの頭を軽くはたいているところだった。


月影さんに軽く頭をはたかれた翔夜くんは、すぐに顔を引き締めて立ち上がった。


「風よ、炎を沈めたまえ!」


翔夜くんが手を薙ぎ払いながら何かの粉を巻き、そう唱えると、粉が風に乗って広がり、わずかにではあるが残っていた炎がみるみるうちに鎮まっていく。

その間、手際よく別の術を使い、ちびだるまたちを次々と光の玉に封じ込めていく。


「この辺りはもう大丈夫だ。」


周りの火の気を確認してそう言うと、翔夜くんは次に、着物の袂から白い布を取り出し、先ほどのだるまにかける。


「これで封印完了。二度と暴れないようにっと。」


翔夜くんの手際の良さと実力に、私はただただ感嘆するばかりだった。彼の頼もしい姿を見て、改めて心強く感じる。


「すごいね、翔夜くん。本当に優秀なんだね。」


思わず声をかけると、翔夜くんは少し照れたように笑い、


「いや、まだまだだよ。でも、無事に収まって良かった。」


そう言って、優しい目で私を見つめた。

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