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第29話 夜市の暴走 -1-

夜市よいちが開くのは「宵の刻」と呼ばれる時間帯で、人間界でいうところの20時〜22時のあたりを指す。

時間についても授業を受けたけど、まだ全部覚えきれていない。

宵の刻が近づくと、街全体が賑わいを見せる。屋台の準備が進み、提灯の明かりが次第に灯り始める。宵の刻はこの世界における特別な時間だと感じる。


さすがに番所にそんな時間までいてもすることがないので、月影さんと一回屋敷に帰宅して、夕飯を食べた後、時間が近くなったら翔夜くんが迎えにきてくれることになっていた。夕飯の間も、どんな夜市が待っているのかと胸が高鳴る。


夕飯後、千鶴さんと片付けをしていると、


「琴音さん、これから人混みに出かけはるんやったら、こちらを身につけていくとよろしおすよ。」


そう言って、赤くて細い組紐の先に水晶のような石がついたものを首から下げてくれた。水晶は淡い光を放ち、まるで内側から輝いているようだった。


「これは・・・?」


水晶のような、と言ったのは、その石が透き通っているだけでなく、内部がキラキラと輝いているからだ。


(虹入り水晶かな?)


私はあまり石には詳しくないのだけれど、会社の隣の席の女の子がパワーストーンマニアで、あれこれ水晶について語ってくれたことを思い出す。


「これは妖具の一種で、守り水晶と呼ばれているものでおす。多くの妖怪でごった返すような場所では、さまざまな妖力が混じり合うておりますさかい、予想外の影響を受ける場合がありますのや。妖力の制御がまだできへん子供や、情緒が不安定な者は、これを持つことで周りの妖気の影響を受けにくうなりますのどす。」


(へえ、それはすごいかも・・・)


「琴音さんは妖力への免疫がおへんさかい、これを持っていかへんと妖力酔いしてしまう思うて・・・」


私が翔夜くんと夜市に行くと月影さんから聞いて、わざわざ用意してくれたらしい。


「千鶴さん・・・・ありがとうございます。いつも良くしていただいてるのに、全然お礼らしいこともできなくて・・・・」


「ふふ、お礼なんてよろしおすよ。楽しんで、無事にお帰りくださいね。」


そう言ってふんわり笑って、首にかけたら着物の襟元に入れてくださいね、と言い添える千鶴さんに、もう一度お礼を言って水晶を襟元に入れる。水晶が肌に触れると、ほんのりと暖かく安心感を与えてくれる気がした。


そうこうしていると、間もなくして翔夜くんが迎えにきたので、二人で長老の屋敷を出て夜市に向かう。

屋敷の門を出ると、夜市の喧騒が遠くから聞こえてくる。歩いていると、次第に明かりが増えてきて、心が躍る。夜市はどんなものなのか、期待と興奮で胸がいっぱいになる。


翔夜くんと並んで歩きながら、彼の横顔を見ると、彼もまた楽しみにしている様子が伝わってくる。


「楽しみだね、翔夜くん。」


「うん、きっと琴音ちゃんも気に入ると思うよ。色んなものがあるからね。」


そんな会話を交わしながら、二人で大通りを奥へ奥へと歩いていった。

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