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第20話 はじまりの朝 -1-

いつものように、鳥のさえずりで目を覚ます。



(・・・・・・・・あー・・・なんか、すごい夢見たな・・・・)


神社の庭掃除があるから、いつも早朝に鳥のさえずりと共に目覚める習慣が身についている。


(二次会で飲みすぎたのかな・・・あー、ほんと、おかしな夢だった・・・)


半身を起こして伸びをして、昨日見た夢の内容を思い出しながらゆっくりと目を開ける。


(・・・・・・・・)


なんだろう、この違和感。

何度か瞬きをして、周りを見回す。


「えっ!!!」


寝起きの掠れた声が部屋の中に響く。


「ここ・・・・・どこ!?え・・・・・もしかして・・・・・」


布団を跳ね除けて立ち上がって、近くにあった窓を開ける。

カラカラと乾いた音とともに心地よい風が部屋の中へと流れ込んでくる。


そして、眩しい朝の光と共に、開けっぱなしになった窓の外で目が合ったのは、


「あら。琴音さん、早起きですねぇ。」


お庭をシュッシュッと竹箒で掃除をしている、夢の中の人物のはずである千鶴さんだった。


「お・・・おはようございます。」


呆然としたまま、とりあえず挨拶だけは返す。


(夢じゃ・・・・・ない!?)


確かに見知らぬ部屋で、見知らぬ浴衣を着て、見知らぬお布団に寝ていることは認めざるを得ない。

落ち着こうとゆっくりと息を吐き、再び布団に潜る。


「変わるわけ、ないじゃない!」


朝から自分に盛大にツッコミを入れて、もう一度起き上がる。

そこで、もう一度、開けっぱなしの窓からこちらを覗く千鶴さんと目が合った。


「楽しそうやねぇ。」


ふふふと口元を隠して楽しそうに笑っていた千鶴さんは、ふと思い出したように私に告げる。


「あ、朝餉は一刻いっこく後で大丈夫どすか?」


「一刻・・・?」


一刻って時間の単位よね。確か、2時間のことだっけ。

今が何時かわからないけれど、とりあえず2時間あれば現状は把握できる。


「あ、はい。」


とりあえずそう答えた私を見て、


「ほな、半刻はんこく後にお着替えの手伝いに参りますわね。」


それだけ言うと、楽しそうに歌を口ずさみながら、庭の奥へと入っていった。


千鶴さんが見えなくなった後、昨日のことを一生懸命思い出してみる。

とりあえず私が夢だと思っていたことは現実だったと言うことで理解、許容するしかない。

問題はそのあとだ。

広間で夕食を食べながらお酒を飲んでからの記憶があまりない。

つまり、どうやって部屋に帰ってきたのかも覚えていないのだ。


お酒は弱くない。むしろ、そこそこイケるくちだと自分では思っている。


「確か・・・椿丸くんに袋を返したことだけは朧げながら覚えてるんだけどなあ・・・」


一生懸命記憶の糸をたぐろうとしてみるけれど、それ以外、さっぱり思い出せない。


(変なことしてないといいんだけどなあ・・・・)


糸をたぐるジェスチャーをしてみても、思い出すはずがない。


しばらくそうして無駄な努力をしてみたけれど、結局は何も思い出せなかった。


「まあ、いっか。」


あとで千鶴さんにでも聞いてみることにして、千鶴さんが着付けの手伝いに来てくれる前に、お布団を畳んで、顔を洗うことにした。

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