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第1話 結婚式の帰り道 -1-

幼馴染の結衣の結婚式が終わり、地元の駅に向かうため、電車に乗った。

都心とは反対方向、しかも土曜の夜にしては比較的早い時間ということもあり、車内は静かで、座ることができた。


(ふぅ・・・)


心の中でため息をつき、今日一日のことを思い返す。

初めてのキリスト教式の結婚式。快晴の太陽に照らされた教会のステンドグラスの美しさと、バージンロードを歩く幼馴染の姿に感動し、ただただ涙が溢れた。

開始早々そんな状態だったから、幼馴染が私の横を通る時、彼女はとても驚いた顔をしていた。


その後は、近くのフレンチレストランでの披露宴。

泣きすぎてボロボロだった私は、始まる前にもう一度フルメイクをし直す羽目になった。

新婦の親友として紹介され、スピーチをしている間も、何度も視界が涙で滲んで大変だった。


そして極め付けは、ご両親への感謝の手紙。

幼馴染とは幼稚園からの付き合いだから、彼女の家族とも家族ぐるみで交流がある。

だから、ご両親への感謝の手紙を聞いている時、またもや泣いてしまった。何なら彼女のご両親よりも泣いていたかもしれない。


隣に座っていた、式から参加している小学校からの友達、遥には「泣きすぎ!」と笑われたが、感動してしまったのだから仕方ない。


そんな披露宴も終わり、友人たちだけの二次会までは少し時間があったので、遥とお茶をして時間を潰した。

もちろん、本日3回目のフルメイクの時間も込みで。


披露宴の出し物や招待客のスピーチの話になった時、遥がふと思い出したように言った。


「そういえば、後ろのテーブルに座ってた新郎の友人が、琴音のこと可愛いって言ってたよ。彼の顔までは見てないけど。」


今更言われても、誰?としか言えず、また出会いを逃したか…と苦笑いするしかなかった。


そんな取り留めのない話をしているうちに、二次会の時間が迫ってきたため、お会計を済ませてお店を後にした。


結局二次会でも特筆すべき出会いはなく。

まあ、元々お祝いのための二次会参加であって、出会いを期待していたわけではないので、そんなもんだと思っている。


「結婚なんて、単なる紙の上でだけの契約」


「尻に敷かれます、ってサインしちゃったわけか」


新郎の友人たちが、冗談混じりにそんなことを言っていたけれど、私からしたら、その、単なる紙の上でだけの契約をしたいと思わせる人と出会えたことが奇跡だと思う。


まあ、そもそもそれを考えるような彼氏もいないわけだけど。

元カレにもそういう気持ちは起こらなかったし、そもそも結婚願望というのがあまりない。


それでも結衣の結婚は嬉しいし、素敵なことだと思っている。

だけど、どこか違う世界に行ってしまったような寂しさも感じる。


まあ、実際明日から新婚旅行に行ってしまうので、しばらくは会えないんだけれど。

少しだけしゅんとした気持ちになったその時、一通のメッセージが届く。


「琴音、今日は本当にありがとう!話したいことたくさんあるから、新婚旅行から帰ってきたらすぐ連絡するね。お土産楽しみにしてて!行ってきます!」


すぐに返事を送って一息つくと、電車がちょうど地元の駅に着いた。

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