表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

13/348

第12話 出会い -2-

どこからか響き渡る女の人の声を聞いた椿丸くんは、


「やっべ!忘れてた!!」


と、慌てた顔で周りをキョロキョロ見渡した。それから、


「琴音、ごめん!俺、遣いの最中だったのをすっかり忘れてて・・・急いで片付けないとかーちゃんに大目玉食らうから、ちょっと用事済ませてくるわ!!」


そう言って、今来た道を引き返そうとする。


ちょっと待って!私はどうしたら!!


慌てる私に気づいたのか、


「あああ、ごめん!そうだよな!!とりあえず、この道まっすぐ行くとイチノマチに出れるから、そこで誰かに長老の屋敷に行きたいって言ってみて。」


と去りながら早口で叫ぶ。


誰かって誰に!!!

今までだって椿丸くん以外誰も近寄ってきてくれなかったのに!!


そんな不安な顔を読み取ったのか、再び私の元に駆け寄ると、


「そうだ。これ持ってけ。これがあれば俺の友達だって分かるから、誰かしら話聞いてくれるはず!」


腰につけていた小さな袋を外し、それを引き出物の袋の中に入れた椿丸くんは、あっという間に去っていき、


「ほんっとごめんな!また後で!!用事が済んだら俺も長老の屋敷に行くから、袋はその時返してなー!あとー・・・・・」


どんどん小さくなる声が聞こえたのはそこまでだった。


最後なんて言ってた?

遠すぎて最後まで聞こえなかったけど、まあ、仕方ない。


椿丸くんが去った後、私は再び一人になった。道の先を見つめながら、心の中にぽっかりと穴が開いたような感覚に襲われる。

「また後で!!」と言った彼の声が耳に残る。どれくらいの時間が経ったのか分からないけれど、気づけば私はじっとその場に立ち尽くしていた。


「また一人になっちゃった・・・」


小さく呟くと、胸の奥に不安が広がる。でも、さっきまでの孤独とは少し違う。今度は目的地がある。長老の家に行けば、きっと何かが分かるはずだ。

とりあえず、まっすぐ行くと「イチノマチ」とやらに着くらしいので、まずはそこを目指そう。


そうして、また一人になった私は、くねくねした道を進む。

古木の裏から伸びる道は、苔むした石畳が続いている。両側には高い木々が立ち並び、風が木の葉を揺らす音が心地よく響く。歩くたびに足元の落ち葉がカサカサと音を立て、その音が妙に心強く感じられる。


「イチノマチ・・・」


歩きながら椿丸くんの言葉を反芻する。まるで迷路のようなこの道を抜けた先に、本当にその場所があるのか。疑念と期待が入り混じる。


「イチノマチってなんだろう。数字のイチなのか、市場のイチなのか・・・」


あまりに慌ただしく過ぎ去った出来事に、


「たぬきに化かされるってこういう感じなんだろうな・・・」


なんてつぶやいて、くすりと笑う。


椿丸くんに会ったことで、孤独も薄れた。

長老のお屋敷という目的地もできた。


あとはまっすぐ進むだけだ。

そうまっすぐ・・・・のはずだったのに、


「ちょっとーーーーー!分かれ道じゃんーーーーー!!!」


突き当たりにたどり着いたのは良いものの、私がたどり着いたのは、「まっすぐ」とは程遠い、右か左かの分かれ道だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ