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第119話 不穏な予感 -7-

居間に入ると、蒼月さんが開口一番、


「これは・・・」


と、つぶやいた。

彼の視線は、すっかり和風モダンに生まれ変わった居間の装飾に向けられている。驚きが顔に浮かび、まじまじと部屋の隅々まで見渡している姿に、少し微笑んでしまう。


「小鞠さんと模様替えをしたんです。あ・・・勝手なことをしてすみません・・・」


そう言うと、蒼月さんは少し驚いたような顔をしながらも、


「いや、この屋敷の模様替えは小鞠殿が取り仕切っているゆえ、小鞠殿の許可さえあれば何をしても構わん。」


そう言って、和風とモダンの融合に戸惑いながらも、その落ち着いた雰囲気には心地よさを感じているのだろう。ソファに座って座り心地を試したりしている。

蒼月さんが一通りソファの座り心地を試し終わる頃を見計らって、ソファのない空間へと招くと、蒼月さんは自然とその場に腰を下ろす。


「さあ、遠慮なく横になってください!」


じゃじゃーんと言いながら、私は慣れた手つきで静寂しじまと癒しの結界のウォーターベッドを作り上げる。蒼月さんと小鞠さんは、その独特な感触に少し驚きながらも、不思議そうに指先でそっと撫でたり、押し込んだりして確認している。


(そうだよね・・・絶対こちらの世界にはないもんね。)


不思議なベッドの感触を確かめる二人を眺めていると、蒼月さんがようやくその感触を理解したのか、ゆっくりと息を吐きながら、


「では・・・失礼する。」


そう言ってベッドに腰を下ろした。彼は慎重に足を乗せ、まるでそれが崩れてしまわないか心配するかのように、身体を少しずつ沈ませていく。揺れる感触に最初はやや戸惑い、不安げな表情が浮かんでいたが、少しすると、その揺れが柔らかく心地よいものだと気づいたのか、彼の表情はだんだんと緩んでいった。


やがて、彼は静かに目を閉じ、微かな笑みを浮かべながら身を預けるように横たわる。


「これは・・・不思議な感覚だな・・・」


そうつぶやいたのを最後に、彼の呼吸は徐々に深く、穏やかなものへと変わっていった。寝息が静かに響き始めるのを聞きながら、私は少し安堵し、綿でできたブランケットをそっと掛けた。


小鞠さんはそんな蒼月さんの姿を見て、口元に微笑みを浮かべながら、


「眠りに落ちるのが早すぎるじゃろ。」


と、クスリと笑った。その目には、まるで子供がすっかり安心して眠りに落ちてしまったのを眺めるかのような、優しい光が宿っている。


「でかい身体が、まるで子犬のようにすっぽりと包まれておるな。蒼月がこんなに無防備な姿を見せるのも珍しいことじゃのう。」


小鞠さんが少しおどけた様子で言いながら、私に向かってにやりと笑みを投げかけてきたものの、そんな小鞠さんに、なんて返したらいいのかわからず、


「今度ぜひ小鞠さんもどうぞ。」


と、軽く誘うだけにとどめた。そんな小さなやり取りを終え、私は静かに蒼月さんの寝顔に目をやる。


蒼月さんの眠る姿は、普段の厳しい表情とはまるで違い、どこか無邪気なものがあり、私の胸がほんの少しだけ締め付けられる。彼の普段の強さや冷静さが、その時だけはふっと消え去ってしまったような気がして、目をそらせなくなってしまった。


小鞠さんがそんな私を優しく見守っているのに気づき、私が少し恥ずかしそうに彼女に目を向けると、


「お茶でも飲みながら、目覚めるのを待つかのう。」


と言われ、私はそれにうなずいて、二人で蒼月さんが目覚めるのを静かに待つことにした。

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