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第117話 不穏な予感 -5-

結局昨夜、事件の話にこれといった進展はなく、食事を終えた後は早々に解散となり、蒼月さんもほむらくんも連日動き回っていたということもあり、今日の鍛錬も休みとなった。


よほど疲れているのだろう。二人とも朝食の時間になっても食堂に姿を現さない。

そんなわけで、今朝の朝食は小鞠さんと二人きりだ。

そこで、私は昨日一晩考えたことを、ぽつりぽつりと小鞠さんに話し始めた。


「私がここにいることで、皆さんにご迷惑をおかけすることになるのではないでしょうか?」


狙われているのが確実なのであればここにいてはいけない気がして、昨日はよく眠れなかった。

いくら修行をしたところで、限界はある。


いにしえからの因縁の厄災


蒼月さんと一緒に対処してほしいと言われているものの、正直役に立てる自信がないのだ。


すると、小鞠さんはそんな私の気持ちなんてすっかりお見通しな感じで、


「強さには色々あるぞえ。攻撃するだけが強さだと思うてはならぬ。守る強さ、支える強さがなければ、真の強さとは言えんからのう。」


私をじっと見て静かにそう言った。


「それに・・・蒼月の強さは桁違いじゃが、あやつは死を恐れておらん・・・わらわは蒼月を死なせたくないのじゃ・・・」


突然の重い言葉にショックを受ける。


「なぜ・・・ですか?」


死を恐れない人なんているのだろうか?そんな気持ちから、つい問いかけてしまった私に、小鞠さんはふるふると首を横に振る。


「・・・それはわらわから言うことではないからの。いつか蒼月に聞くが良い。」


そう言って少し寂しそうに微笑んだ小鞠さんは、それからすぐにいつもの笑顔に戻って、


「琴音殿はこの屋敷におるのが一番安全じゃ。安心して、これからもこの屋敷で、蒼月と修行に励むがよい。」


と言った。


小鞠さんの励ましを受けて少し気持ちが軽くなったものの、心の奥にはまだ何も解決できていない不安が残っている。特に、青い炎の存在について、何も解明されていないままでは落ち着かない。


「ところで、小鞠さん・・・あの青い炎のこと、少し気になるんです。」


私がそう言うと、小鞠さんはお茶を一口飲んで、うなずいた。


「そうじゃな。確かに、あの青い炎の正体は未だに誰もはっきりとはわかっておらぬからのう。」


その言葉を聞いて、さらに疑念が募る。どうして誰もこの不可解な現象に目を向けないのだろうか。何か大きな謎が隠れているように思えてならない。


「もしかして・・・何か記録が残っているのでは?例えば、昔の文献とか・・・」


そう口にした瞬間、小鞠さんの目が少し鋭くなった。


「ふむ・・・なるほど。琴音殿、良い着眼点じゃ。実はこの市ノ街にも古い文献が眠る書庫がある。そこで調べてみるのも一つの手かもしれんのう。」


そう言われ、私の胸が少しだけ高鳴った。


「書庫ですか・・・ぜひ行ってみたいです!」


私が熱心に言うと、小鞠さんは小さくうなずきながらも、少し慎重な表情を見せた。


「ただ・・・書庫の古書は時に強力な妖力を帯びておる。特に、長年封印されてきた古い文献には、触れただけで精神に影響を与えるものもある。強大な妖力を秘めた書が眠っておるゆえ、慎重を期さねばならんのじゃ。今行くなら、必ず誰かと一緒に行動するのが良いじゃろう。無論、蒼月に相談してからな。」


書庫には、過去のあやかしの記録や事件に関する文献が数多く収蔵されているという。もしかしたら、あの青い炎に関する手がかりがそこに残されているかもしれない。

小鞠さんの忠告を胸に、私は決意を新たにする。


青い炎の謎を解くため、そして自分の身に降りかかる不安を払拭するためにも、私はすぐにでも書庫に向かいたかった。

しかし、小鞠さんの忠告の通り、行き当たりばったりで行動するのは危険そうだ。危険が伴う以上、一人での行動は許されないし、蒼月さんやほむらくんの力が必要だ。けれど、今の彼らの状況を考えたら、今はその時ではないのではないかとも思う。


「わかりました。この件については思いつきで行動せず、蒼月さんに相談するようにします。」


素直に小鞠さんの忠告を受け入れた私は、朝食を終えると自室へと戻り、今後のプランについて、手帳を開いてあれこれと計画を立て始めた。

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