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第113話 不穏な予感 -1-

あの事件が起きてから3日。


私はお屋敷から出ないように言い渡され、蒼月さんはあの日からもう丸2日以上屋敷を空けている。

人手が足りないと言ってほむらくんも駆り出されていたこともあり、お屋敷には小鞠さんと私の二人だけだ。


もちろんその間鍛錬はなく、できる限りでの自主練はしていたものの、みんなが忙しそうにしているのに何もできない自分が歯痒かった。

そんな私を見かねてか、小鞠さんが千鶴さんを招いてくれて、急遽女子会を開いてくれたのだ。


「千鶴さん、お久しぶりです!」


玄関でお迎えした久しぶりの千鶴さんは、相変わらず美しく雅な雰囲気で微笑む。


「ほんに、お久しゅうございます。影さんからお話は聞いてましたけど、お会いできて嬉しゅうございますわ。小鞠様もお元気そうでなによりでございます。」


その言葉に、小鞠さんがくすくすと笑いながら言う。


「なんならわらわとの方が久しぶりじゃがな。」


すると、千鶴さんは少し考えるそぶりを見せた後で、


「確かに・・・こうしてお会いするのは、かれこれ100年ぶりくらいでございましょうか?」


と言った。


(ん?聞き間違いかな?100年って聞こえた気がしたけれど・・・?)


私がわかりやすく訝しげな顔をしていたのだろう。小鞠さんが千鶴さんの言葉にこう答えた。


「あれからもう100年も経つのか・・・。まあ、しかし、千鶴殿とは頻繁に伝書を交わしておるから、久しぶりな気がせんのかもな。」

「そうですね・・・伝書は頻繁に交わしておりますものね。」


そんな一連のやり取りをしながら玄関から居間へと移動した私たちは、卓を囲んで思い思いくつろいだ姿で腰を下ろした。

この女子会のために、小鞠さんがスイーツをたくさん用意してくれていて、私が「人間界ではアフターヌーンティーというのがあって・・・」と軽い気持ちで話したら、


「それは新鮮なのじゃ。やってみようぞ。」


とノリノリで蔦のようなものを綺麗に編み上げ、そこにお皿を乗せるという、予想外のアイデアでケーキスタンドのようなものを作り出した。

ついでに裁縫が趣味の小鞠さんは、あっという間にフローリングソファのようなものまで作ってしまい、今、このお屋敷の居間はちょっとした和風モダンな様相となっている。

そのケーキスタンドを見て、千鶴さんが歓声をあげる。


「甘味がこんなにたくさん・・・!しかも、大変、見目麗しゅうございますね。こんなに素敵な盛り付け、初めてです!それに・・・この座椅子。柔らかく包み込まれるようで、とても安らぎますね。」


「そうじゃろ、そうじゃろ。わらわも琴音殿に教わって初めて作ってみたのじゃが・・・甘味がより美味しそうに見えるのじゃ。座椅子はソファというらしいが、とても座り心地が良いじゃろう?」


そんな始まりから大盛り上がりの女子会では、小鞠さんや千鶴さんの趣味の話から、私の趣味や人間界のスイーツ事情、最近の市ノ街の動向まで色々な話題で盛り上がった。

最近の市ノ街の動向といえば・・・月影さんもあの事件の夜以来、お屋敷には帰っていないらしい。

千鶴さんから聞くところによると、まず市ノ街の幽閉施設を再点検したところ、監視機能が見事にすり替えられ、本来警告が上がるはずのところ正常と認識されたままとなるよう細工がされていたそうだ。

幽閉施設にいる他の罪人たちにはおかしな点はなく、施設にはくだんの4人の空蝉うつせみ(身代わり)が残されており、誰も脱走したことには気付いていなかったらしい。

だけど、そんなことができるあやかしに心当たりはなく、長老会が開かれ、他の街も念の為に幽閉施設の点検を行う方向で進んでいるとのこと。


長老会というのは、市ノ街の長老である白翁はくおうさんを筆頭とした、各街の長老で成る会で、あやかし界における重要な話し合いが行われる会だそうだ。

その長老も事件の翌日からお屋敷には帰って来ていないらしい。


そして、その話を聞いたとき、小鞠さんが一瞬眉間に皺を寄せたのを、私は見逃さなかった。

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