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第108話 新たな絆の形成 -11-

最初の見回りから一週間が経ち、その間に3回見回りに連れて行ってもらった。

見回りをする中で市ノ街の全体像、おおよその配置が把握出来たし、街の外れにも連れて行ってもらった。


そんな中で他にも色々とわかったことがある。

この世界のあやかしたちはいくつかの種類に分けられる。元から人型のあやかし。鬼とか雪女とかその辺りがこれに当たる。

人間の姿に変化へんげするのが上手なあやかし。これは狐やたぬきなんかが代表的で、これらの種類のあやかしたちは利便性から人の姿で生活しているものがほとんどとのこと。

それから、人以外の姿のもの。だるまとか河童とか唐傘からかさ小僧とかぬえとか、動物でも人間の姿でもないものたち。(ぬえはある意味動物かも?)

あとは、元々変身属性の能力は持たないものの、長く生きていることで変化へんげできるようになるものたちもいるらしい。


一度見回り中に可愛い猫を見つけて、あまりの可愛さに撫でくりまわそうと手を出したら、「馴れ馴れしく触らないでよね!」と、猫に叱られた。

猫に叱られてしょぼんとする私を見て、蒼月さんはくくくと笑いを堪えながら、


「ここには野良はほとんどいないぞ。道を歩いているのは、猫も狐も狸も皆あやかしだと思った方がいい。」


と教えてくれた。


そう。ここに来たばかりの頃は長老のお屋敷と番所の行き帰りばかりだったので人型以外を見ることは少なかったけれど、見回りをしていると本当に色々な種類のあやかしがいることに気付かされた。

なんなら道ゆく狐や狸や猫たちも普通に存在していて、普段は人間の姿で生活しているものの、移動は動物の姿の方が便利だからと使い分けていることも多いらしい。


南東の外れにはあの天狗山が、北西の外れにはあの滝があり、南西と北東は高い山があり自然しかない。


そして、今日の私は、市ノ街でオリエンテーションのようなことをしている。

蒼月さんから渡された紙に書かれた5つのチェックポイントを周り、そこに目的地で署名をもらってくるというもので、制限時間は日没前まで。

要するに、街の地図が頭に入ったかどうかというテストのようなものだ。

日が沈む前に5つの署名を揃えて番所に戻ってくることが条件で、さすがに距離的に天狗山は含まれていないものの、なんだかんだ街全体を訪れなくてはならないようになっている。


(さっきの狐さん、美しかったな〜。あのもふもふ、撫でたかったな〜。)


4つ目の署名をもらい終わってお店を出たところで、キラキラと光る真っ白な毛皮を纏った狐を見かけたのだけれど、目が合うと逃げられてしまったのだ。

この前蒼月さんから道ゆく動物はほぼあやかしだと教えてもらってから、狐や狸、猫を見かけるたびに、人の姿の時はどんな感じなんだろうと想像する癖がついてしまった。


きっと千鶴さんのような美人さんなんだろうな〜なんて考えながら5つ目のポイントに向かう。


「5つ目のポイントは〜・・・」


確かここを曲がったところの先にある反物たんもの市の市頭いちがしらである、一反木綿いったんもめん織次郎おりじろうさんが最後の署名の主だ。

まだまだ日没までには時間はありそうだし、反物は無理でもハギレくらい見ていこうかな〜なんて考えながら角を曲がる。

初日に蒼月さんにお団子をご馳走になってからは、市やお店で使えるようにと長老からいただいた水晶と紫水晶を持ち歩いている。

まあ、結局私がご馳走できたためしはないのだけれど・・・。


そんな考え事をしていて道を間違えたのか、目的の市が見つからないことに気づいた。


「あれ?道、間違えた?」


キョロキョロと辺りを見回して見るものの、反物市の目印が見つからない。

なんなら反物市のある通りはそこそこ人通りがあるはずなのに、人気ひとけもない。


(やっぱり道一本間違えたかな?)


そう思って今来た道を引き返す。

すると、道端にうずくまって何かを探しているおじいさんが見えたので、落とし物でもしたのだろうかと小走りでおじいさんに駆け寄って、声をかける。


「何か探し物ですか?」


私の声におじいさんは顔を上げる。そして、ほっとした顔を見せると、こう言った。


「ありがとう。おかげさまで見つかったわい。」


んん?まだ何もしてないけど?と怪訝に思ったその瞬間・・・


「わしらが探してたのは、あんたじゃよ。お嬢ちゃん。」


(わしら?え?私!?このおじいさん、何言ってるの?)


その瞬間、背後から聞こえたザザザっという音に、一瞬で体が凍りつく。心臓がドクンと大きく跳ねた瞬間、視界がぼんやりと狭くなる感覚に襲われる。振り返ろうとした手足が、まるで鉛のように重く感じられ、呼吸が浅くなる。

それでも恐怖心を振り払って振り返った私の目に映ったのは、三人の見るからにタチの悪そうなあやかしだった。


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