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掌編 - 魔法の煙草

作者: 逆虹凛音

 塾の帰りに、魔法の煙草とかいうものを押し売りされた。売人が最初に提示した価格の1/5くらいで売られた。普通の人なら1/10にされても買わないだろうが、私が魔法なんて言葉に惹かれないはずもなかった。

 とはいえ、両親と姉がいるこの家で、未成年である私が煙草を吸うというのは無理な話だ。ならばどうするか。

 分解してみよう。魔法の煙草の、草の部分。煙にはどうせ幻覚か何かの効果があるのだろう。それは分かりきった、つまらないことだ。そうなれば、どんな草なのか一目見て、警察にでも突き出してやろう。そんであの冴えない売人の似顔絵でも描いてやろうか。その方が、おもしろそうだ。

 父が吸っているような煙草とほとんど同じ見た目のその煙草。本体の草を中心に紙でぐるぐる巻きにした物だ。爪でなぞってやると、微かな段差があった。その段差の角を、爪で擦る。案外難しく、案外楽にその角は剥がれた。あとは、端を抑えて煙草を転がせば、巻物のように開く。──はずだった。

 その紙には終わりがなかった。いくら伸ばしても、一向に草が見えない。机を埋め尽くす長い長い紙の龍。床にまで降り、私の好奇心によって翔け、私の部屋を侵略する。やがて、果ての無い魔法の煙草の巻紙の龍に、私が突き立てた伝説の剣によって、巻紙に果てが作られる。龍は討伐され、生気無く散らかった。

 その龍鱗は、私の机の上でメモ帳及び落書き紙として活用されている。

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