表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/79

研究室にて

 紫朔(むらさき)は、一旦男から視線を外し辺りをゆっくりと見回した。

 不思議な色の液体が詰まった機械やらへんてこな装置やらが所狭しと並んでいる。おそらくここは何か研究をする場所なのだろ。

 正直、自分が見ても全くわからない。このあたりはノウェムの専門分野である。彼女に任せればいい。自分は自分ができる仕事をしよう。

 紫朔は、再び視線を男の方に戻す。


「さて、連行する前におぬしには警備室に案内してもらうぞ」

「け、警備室? なぜ?」


 紫朔の言葉に、眼鏡をかけた男は首をかしげる。若干声が震えているのは恐怖心からか。はたまた未だに天井から吊り下げられているからか。


「どうやらこの施設の詳細な地図が欲しいらしくてのう。迷いやすい構造ゆえ、調査するためにも地図が欲しいのじゃ」

「なぜわたしがそんなことを――」

「断っても良いが、その場合うっかり(・・・・)まゆ玉にしてしまうかもしれん。言っておくがおぬしの生死などわしはあまり気にしておらんぞ」


 男が断りそうな雰囲気を出していたので、紫朔はうっかりという部分をことさら強調して吐き捨てるように言い放った。

 紫朔の物言いに、ふたたび男は言葉を失ってしまった。

 しかし、嘘は言っていない。紫朔にとっては本当に生きたまま連行しようが死んだ状態で連行しようがさほど興味は毛頭なかった。玄々が悲しむのを見たくないために生かしている程度である。


「そんな……脅しには……わたしは……」

「わしが冗談を言うような(あやかし)に見えるのであるならば、その眼鏡の度が合っていないやもしれんのぅ」


 断ろうとする男の言葉を遮るように紫朔はさらに言い放った。若干の苛立ちを(つの)らせながら。

 紫朔としては、こんな無意味な問答に時間をかけたくなかった。玄々や辰砂が少し心配である。あの2体のことだからとくに問題はないとは思うが、大きな戦闘音もしていたし万が一ということもある。あと、こんな得体の知れない場所に長居などしたくない。


「……」

「諦めが悪いのは悪いことではない。じゃが、時と場合にもよるということを知ってもよいのではないかのう?」

「……わたしの……研究が……諦めるわけには……」

「……はぁ」


 紫朔が(さと)すように話しかけても、心ここにあらずという風に男は何やらぶつぶつとうわ言をつぶやき始めてしまった。人間は肉体は脆弱だとは思っていたが精神すら脆弱なのか。

 紫朔は、呆れすら通り越してもはやため息しかでなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ