異能者
玄々が素早く接近し、襲ってきた青年に対して拳を突き出す。
だがその拳は、突然現れた沢山の鉄塊に防がれてしまった。よく見ればそれは先ほど玄々が戦ったロボットたちの残骸だった。その残骸が即座に集まって青年の盾となったのだ。
玄々の拳を受け、砕けた残骸の向こうで青年は片手を広げてこちらに向けていた。そのまま青年は力をこめる。
「……!?」
突然、玄々は真正面から強く殴られたような衝撃を受け、後ろに吹っ飛んだ。玄々は受身をとり素早く態勢を立て直すと、近くの壁に拳を打ち込んで引き剥がし青年に向かって投げつける。
だが、その瓦礫も青年にぶつかる直前に弾き飛ばされてしまった。
「ふーん……。鬼みたいな角を持ってる獣人だなと思ってたけど、筋力も鬼のように強いようだね」
にやりと笑いながら青年は玄々の様子を眺める。
「私は獣人じゃなくて鬼さ。まあ、ちょいとワケありではあるけど」
「へぇ、尻尾の生えた鬼なんて初めて見たよ」
「安心しなよぃ。私も見たことない」
玄々もまた、青年に軽口を返す。
ただし、頭はフル回転させていた。
真正面からでは拳も防がれ、投げつけた瓦礫も謎の力で防がれる。
こうなると不意打ちを狙ってみるのが良さそうだがあいにく戦闘場所が通路だ。流石に狭すぎる。
だったら……。
「おらっ!」
玄々は足元を踏み砕き、瓦礫を巻き上げる。そのまま宙に浮いた瓦礫をいくつか殴りつけて青年の方へと打ち込んだ。
青年は飛んできた複数の瓦礫をものともせず、先ほどと同じように弾く。
だが、玄々も一辺倒ではない。
弾かれた瓦礫に紛れて接近した玄々は、青年の脇をすり抜けの死角に潜り込む。
「何っ!?」
青年も玄々が後ろに回ったのに気づき振り向こうと体をひねる。いい反応だけど、遅い。
玄々が完全に後ろをとった、はずだった。
だが、玄々が拳を放つ瞬間、真横から殴られたような衝撃をうけて壁に激突。そのまま壁をぶち破りパソコンや書類が沢山ある部屋に転がり入ってしまった。
玄々は机や椅子などに派手にぶつかりながらも即座に転がって受身をとり、近くの机の陰に隠れた。
「痛たた……。なんだ今の力」
何が起こったかわからない。まさか、真後ろにもこちらを見ずに攻撃をすることができるとは思わなかった。
こういう時はまず相手の力や戦い方を探るのが鉄則だろう。
とりあえず、先ほどのスキンヘッドの男と同じく魂魄を源とした特殊な力で攻撃してきているのはわかった。また札の使用や陣の展開、詠唱など、術系を行使した様子は特にないため、彼自身が使える固有の何かである可能性が高い。問題はそれがどんな力なのか。
今度は、玄々は慎重に相手の様子を伺う。だが、敵はそれを許してはくれなかった。
真上からバキバキと音が聞こえた時には、すでに遅かった。
「やばっ……!?」
玄々のいる部屋の天井が突如崩壊し、そのまま玄々は生き埋めになってしまった。




