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散るは火花

――ドガンッ。


 白を基調とした長い通路の中で、いくつもの爆発音が響き渡った。


「大分物騒なロボットだなぁ……」


 既に動かなくなったロボットを無視して、玄々は奥を目指して進む。

 だが、T字路に差し掛かったとき再び横道から銃火器を搭載したロボットが乱射しつつ飛び出してきた。


「げっ、またかぃ!?」


 玄々はとっさに後方へと跳びつつ、先ほど壊したロボットを片手で掴んで盾代わりにする。そのまま(故ロボット)で銃弾を防ぎつつ突撃をしかけた。

 敵ロボットは後退することもなく銃を乱射し続けるだけだったので玄々は難なく接近。そのまま片手で持っていたロボットだった残骸を、敵ロボットにガツンッとぶつけつつ素早く横に回り込んで止めの拳を打ち込んだ。

 玄々からの一撃をモロに受けた敵ロボットは、胴体部分が粉々に砕けて機能を停止させた。


 玄々はロボットが動かなくなったことを確認すると、ふぅと息を小さく吐き出した。


 先ほどからこんな調子で銃火器搭載ロボットがひっきりなしに襲ってきていた。もう何体倒したか数えてないからわからない。

 とはいえ、このあたりは玄々としては好都合でもあった。

 なぜなら、ただのロボット相手なら加減する必要性が特にないからである。強いて言うなら攻撃の余波で建物をあんまりぶち壊し過ぎないように気をつける程度だろうか。主要の柱とかぶっ壊して倒壊、生き埋めになっちゃいましたてへっとか本当に洒落にならないし。

 最初の警備員も人間だったし、先ほど戦ったスキンヘッドの男も人間だったので、これから人間の警備兵が来るかと身構えてはいたのだが良い方向に当てが外れた。普通に戦うよりも威力に気を使いながら戦うほうがしんどい。


 一息着いたところで、玄々は辺りをゆっくりと見回した。

 本当に迷宮じみた建物である。ここはVRゲームの中のダンジョンですっていわれても多分信じるレベル。

 それほどまでに入り組んだ通路だった。

 そろそろ階段とかあってもいいころだと思うのだが、一向に見つからない。巧妙に隠されてるのだろうか?

 

 ……こうなったら一か八か適当に壁をぶち壊して行くべきか?


『白銀さん、先ほど戦闘反応がありましたが無事ですか?』


 玄々が無機質な壁を睨みつけて不穏な考えに至ったところで、耳についているインカムの通信を使ってノウェムが話しかけてきた。


「おう。こっちは大丈夫だ。何体かの無人の警備ロボットに襲われはしたけども」

『分かりました。辰砂さんと紫朔さんのほうはまだ襲われていないようですが、注意の連絡を入れておきます。白銀さんはそのまま慎重に進んでください』

「あいよぅ。とりあえず襲撃はいったん落ち着いて――」


 ノウェムと会話しながらゆっくり奥へと歩いていると、ふと気配に気づいた。

 真正面の通路から、誰か歩いてきていた。奥に人影が1つ見える。


「ノウェム、また後ほど連絡する。ちょっと手強そうなのが来た」


 玄々は通信を即座に切り上げ、臨戦態勢をとった。

 奥の人影から妖気を感じないからやっぱり人間なのだろう。ただし霊薬で強化された人間だろうけど。先ほどのスキンヘッドの男は超パワーだったけど、次の人物は別の能力なのだろうか。

 頭の片隅で憶測を立てながらも油断なく、歩いてくる人影を睨みつける。

 

 まだ、交戦するには距離がある。


 だが、玄々の直感が後方へと意識を引っ張った。

 素早く身構えつつ後ろを振り返れば、既に機能を停止したはずのロボットの銃がこちらに向いていた。しかも1つではなく複数だった。

 次の瞬間、それらは一斉に玄々に向かって発砲してきた。


「なっ!?」


 玄々はとっさに、銃から距離を取るように駆け出して近くにあった脇道に飛び込む。自分ならばある程度は我慢できるが、流石に対妖怪用に作られた弾丸を何発も喰らいたくはない。というか少し腕や足に当たった。ちょっと痛い。


 曲がり角に隠れて様子を伺っているが、さすがの制圧射撃。弾丸の雨が凄まじい。もはや弾丸の壁である。


「そっちがその気なら……」


 銃弾がいつまでたっても止みそうにないので、奥の手を使うことにする。

 玄々は自分のポケットから青色の透明な液体で満たされた、手のひらに収まるほどの大きさの小瓶をひとつ取り出した。そして、その小瓶に魂魄をこめると青色の液体が赤色へと変わりゴポゴポと沸騰したように泡立ち始める。


「くらえっ!」


 そして曲がり角の陰から銃の方へと投げ込むと、小瓶が発光し……。


 ドゴォォォォォォォォォォォォォォォォン!!


 凄まじい大爆発を起こした。

 あまりの爆風に、玄々は一瞬腕で顔を覆う。

 爆風が収まりそっと角から除くと、床や壁、天井すらもボロボロにひび割れており、例の銃器類はもはや原型もなく粉々になっていた。


「……新作の対妖(たいあやかし)手榴弾(しゅりゅうだん)、威力高くないか……? 商人(あきんど)さんよぅ」


 人間相手は確定アウトとして、妖怪相手でも下手すれば瀕死にしてしまいそうな威力だった。手榴弾としては高威力は正解なんだけど、さすがに御庭番としては多用はできないか。

 あまりの威力に若干引きながらも、玄々は通路へと出る。

 すると、玄々の方への先ほどの人影――カジュアルな服装に身を包んだ青年がうすら笑いを浮かべながら近づいてきた。

 

「随分と凄まじい力だね。それがキミの力なのかい?」


 かなりフランクに話しかけてきた青年に、玄々は応える。


「いや、普通に道具の力だ」

「え……道具……?」

「妖怪だって道具使うだろう、普通」

「……」


 玄々の受け答えに、青年はなんとも言えないような微妙な表情をした。まことに遺憾(いかん)である。

 やはり世間では妖怪=道具は使用しないというのが通説のようだ。


「さて、今度は私から質問だ。あの銃を動かして撃ってきたのはおまえさんの力なのかい?」


 玄々は逆に質問を返すと、青年はまたうすら笑いを浮かべる。


「さあね? 敵であるキミにそう簡単に教えるとでも?」

「まあ、そりゃそうか」


 予想していたとおりの返答をされ、玄々は肩をすくめると意識を戦闘状態へと切り替えていく。

 青年もまた、片手を持ち上げ玄々の方へと向けた。

 

「知りたいなら教えてもいいけど。ただし、このおれに勝てたらの話だけどね」


 青年が言い放つと同時に、青年と玄々は同時に動いた。

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