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突撃

「ふん、こんなもんじゃろ」


 紫朔はそう呟くと、まゆ玉を雑に蹴り転がした。

 そこには、さきほど蹴飛ばしたまゆ玉と合わせて2つのまゆ玉が仲良く転がっていた。ちなみに中に入っているのは例の見張りの男たちである。

 こういった傷つけずに素早く無力化できる技術は蜘蛛の妖怪である紫朔の十八番(おはこ)であり、ほかのメンバーよりも頭一つ秀でている技術だった。


「あいかわらず鮮やかな手際。さすがだねぇ。ちゃんと息はできるようにしてくれたかぃ?」

「心配せんでも、窒息させぬよう隙間は開けておる。声は出せんかもしれんがのぅ」


 玄々の言葉に、フンッ鼻をならして不服そうに答える紫朔。

 人間嫌いの紫朔としては彼らがどうなろうが知ったことではないのだろうが、ちゃんと玄々の意思を汲み取ってくれていたようだ。玄々は、紫朔にありがとうとお礼を口にすると、耳に装着しているインカムを使ってノウェムに連絡を入れる。


「……ノウェム、聞こえるかぃ。例の施設と思われる建物を発見した」

『了解しました。慎重に進んでください』

「あと、気になる点がひとつ。こいつら、私たちの襲来を予期していた可能性がある」

『それはつまり……こちら側の情報が漏れていると?』

「恐らくね」


 ノウェムの言葉に、玄々は肯定した。

 先ほどの盗み聞きしていた会話から察するに妖怪に対して特に警戒していた。


「この拳銃の弾丸にモ、ご丁寧に真言(マントラ)が刻まれてるネ。陰陽隊が使う霊力ガ込められてるタイプとは違ッタ、独自の対妖怪用の銃弾ダヨ」


 辰砂は、拳銃を見事な手さばきで素早く分解すると、弾倉(マガジン)から弾丸をひとつ取り出して弾頭部分をしげしげと眺めた。


「ならば、陰陽隊とは別の何かが作ったものということかのぅ……」


 辰砂の言葉に、紫朔は顔をしかめる。

 独自に対妖怪用の武器が作れるということは、それだけ妖怪に詳しいものがいるということでもある。だが、これらは玄々にとってはわりと予想通りでもあった。

 霊薬を作れるということは、それなりに魂魄や特殊な薬学、妖怪などにも詳しいはずである。対抗策くらい十分にできるだろう。

 それに、答えならもうすぐそこにある。


「ここで考えてても仕方ない」

 

 玄々はまっすぐ入口を睨みつける。

 バレてるならこれ以上こそこそ行くのは難しいだろう。なら堂々と真正面から行くのみ。 


「御庭番、施設へ突撃する!」


 

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