助っ人
――10月某日 午後11時頃。
若干雲が多いとはいえ、月明かりが辺りを照らしていた。
ポンポン山。京都市西京区と大阪府高槻市の間に位置する一番高い山である。江戸時代の頃にはかもせ山と呼ばれており、明治時代に今のポンポン山と呼ばれるようになった。
山頂に近づくにつれて足音がポンポンと響くことからポンポン山とついた、というのが通説だが、このほかに異説もあってポンポン山にある本山寺が訛って定着した説、ポルトガル語の一番という意味であるポンからついた説などがあったりする。
その山の山頂付近あたりに玄々たちは来ていた。
「ほほう……なるほどねぇ。こりゃよく見ないとわからねぇわけだ」
玄々はあたりをぐるりと見渡し、感心して頷く。
辺りは、一見なんの変哲もない森の中。不自然に見えにくい程度に開けた場所だった。
しかし、よく観察してみれば木は等間隔に円を書くようにして植林されており、木々もまだ若い。また、手で落ち葉を払いのければ線のようなものが引かれているのが見える。
これは一つの結界陣だった。
木々自体を陣の一部と見立て線で繋ぎ、現界と迷い家を隔たらせる結界を構築する高度な技術だ。
そして、その迷い家への入口としても機能している場所でもある。
「玄々。待たせたのぅ」
玄々が辺りを観察していると、紫朔が木々の間からふわりと降りてきた。
玄々は、降りてきた紫朔の方を見て片手を上げて挨拶する。
「……しかし、今回はわしと玄々だけか」
紫朔は辺りを見回し、玄々と紫朔だけしかいないことを確認すると顔をしかめた。
「天翼や義経にも連絡を入れたんだが、どうにも来れない事情があるらしい」
「ふーむ、難題の相手に挑むと聞いておったからちと不安じゃのう」
「まあ、ノウェムのバックアップもあるし助っ人も来てくれてるから大丈夫さ」
「すけっと?」
玄々の言葉に首をかしげる紫朔。当然の反応か。
実は助っ人の話は急遽決まったことだった。人数の集まりの悪さに一抹の不安を覚えた玄々は酒呑童子に一本の電話を入れていた。
酒呑童子はすぐさまなんとかしてみると言い、そして助っ人を寄越してくれたのだ。
そして、噂をすれば木々の間からその助っ人がゆっくりと歩いてきた。
暗がりから出て、その姿が月明かりに照らされる。
「お待たセ。ボクが今回のすけっとだヨ」
辰砂が玄々たちに向かってツギハギの顔で優しくにっこりと笑った。




