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引き金

 男の指示を受け、周りで静かにしていた男たちは金属バットや鉄パイプ、折りたたみ式のナイフなどを取り出して臨戦態勢をとり始めた。最初の会話で分かっていたことではあるが、怒りの沸点が低すぎる気がする。いや、むしろ暴力好きなのかも。

 そんな光景を少し呆れて眺めていた玄々に変わって、鬼燈が一歩前に出る。

 そしておもむろに、ズボンのポケットから1梃の拳銃を取り出して周囲に威嚇するように構えた。


「凶器を持ち出したってことはさー、相手に殺す意思を示したわけで。けどさー、それはつまり相手に反撃で殺されても文句は言えない状態ってことなんだけどー。これは警告だから」


 鬼燈がいつもの口調で静かに告げた。右手の人差し指は引き金に指をかけずにピンと伸ばしている。ただし、気だるさが完全に抜けきっていた。

 普段気だるそうにしてはいるけど、根は真面目なのだ。そんな鬼燈の様子を、玄々は一歩下がって眺める。

 しかし、そんな警告と拳銃を相手に彼らはまったく怯むようすもなかった。

 むしろ馬鹿にしたようにゲラゲラと下品に笑い出したのである。


「ひょろ男さんよ。今時銃くらいじゃ俺たちは怯みゃしねぇよ」


 取り巻きらしき男たちの中の一人が笑いながら話すと、小瓶をとりだしすぐさま飲み干した。

 それにならい、他の男たちも次々と懐から小瓶をとりだして飲み干していく。


「……なんだ?」


 玄々は小さく疑問の声を上げた。

 小瓶を飲んだ男たちの霊力が膨れ上がったのである。しかも、気配も若干妖怪寄りになってしまっている。

 つまり、小瓶の中身は……。


「まじか……霊薬か!?」

「あー、噂は本当だったかー……」


 玄々が驚いてるそばで、鬼燈が顔をしかめた。


「知ってたのか?」

「んー、妖怪化の影響の少ない霊薬が出回ってるって噂はなー。その件で酒呑童子さんに話があったんだけど。これは本格的に辛そうだ」


 玄々が小さく聞くと、鬼燈が肩をすくめた。

 そんな玄々と鬼燈の様子をニヤついた男たちが眺めている。

 何人かは手元に炎とか氷とか作り出していた。中々芸達者な奴がいるようだ。


「いまさら後悔したってもう遅いぜ? なぶり殺しにしてやらぁ!」


 そんな世紀末の世界のような文句を言い放つと、霊薬で強化された男たちは一気に襲いかかってきた。

 人間相手に殴り合いは若干やりづらいなと困ってる玄々をよそに、鬼燈は一度拳銃をポケットにしまった。


「それじゃー、こっちも」


 そう言って両手を左右のポケットに突っ込むと、2梃の銃を新たに取り出した。


 M134機関銃。またの名をミニガンという。


 最大で1秒毎に100発という速度で撃つ機関銃である。とある映画の人型兵器のサイボーグが乱射したことで有名になった銃であり、本体1つの重さが18kgとかなり重たい。全長900mmもある銃をどうやってポケットから取り出したのかは聞いてはいけない。私にも分からないから。誰か教えて。

 鬼燈はそれを両手に1梃づつ持って腰で構えた。


「……………………は?」


 突然出てきた化物重火器に、意気揚々と襲いかかってきた男たちは一瞬で凍りついた。


「いまさら後悔しても遅い……だったっけ」


 言われた言葉をそっくりそのまま返すように言い放つと、鬼燈は引き金(トリガー)を引いた。


 ぶーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ


 発射音が連続しすぎて途切れず聞こえる。廃薬莢(はいやっきょう)が雨あられと鬼燈の足元に転がった。

 そして、さっきまでのテンションの高かった男たちの声は一瞬で悲鳴へとかわった。

 鬼燈は左右の銃を軽々と振り回し、まったく近づけないような弾幕を辺り一面に張りまくった。

 ちょっとした火炎放射器のように射撃時の火花を散らせる銃から放たれた弾丸は、周りのテーブルや壁を簡単に破壊していく。

 ちなみに、ミニガンは人に向けるような銃ではありません。良い子は真似しないようにねっ。現在、絶賛床に伏せてる玄々お姉さんとの約束だぞっ!

 弾丸の嵐が止み、玄々がゆっくりと立ち上がりながら辺りを見回すと、ぐったりとした男たちが床一面に転がっていた。

 

「鬼燈……やりずぎだぜ」

「大丈夫だって。ちゃんと強化ゴム弾つかってるからさー」

「いやいや、あのよぅ? ゴム弾って暴徒鎮圧用だからな? あれでも打ち所悪ければ相当危険だからな?」

「んー。まあ大丈夫だろー。急所は外したし」


 玄々の注意に、鬼燈は気怠げに返事をして肩をすくめるだけだった。というか精密射撃なんてできそうもない機関銃で急所ははずすとかそんな芸当できるのだろうか。両刃の剣で「峰打ちだ」って言ってるようなもんだと思うんだけど。詳しい人教えて。


「……誰も死んでませんように」


 そっとため息をつくと、玄々は奥の玉座……今は流れ弾で破壊されてボロボロになった元玉座に近づき、その玉座の後ろで縮こまって脅えているリーダー格の男に詰め寄った。


「さて、話を聞かせてもらおうかぃ。リーダーさん」

「ひっ……ば、化物が!」

「化物っていうか私らは妖怪だね。んで、あんたたちに協力していた妖怪を教えてもらおうかぃ」

「は? よ、妖怪? ……知らねぇ! 俺はなんも知らねぇよ!」


 なんだか様子がおかしい。違和感を感じる。

 妖怪の協力者がいると思っていたのだが、話がなんだか噛み合っていない気がする。狼狽(うろた)えるばかりのリーダー格の男に、さらに玄々は詰め寄った。


「知らないことはないはずだぜ。その霊薬はどこから受け取っている?」

「霊薬……? 薬のことか? 薬は売人から買ってんだよ」

「じゃあ、その資金源は? あんな芸当ができるのは妖怪ぐらいなもんだろう」

「か、金は仲間たちが集めてきてくれるんだよ。とくにあいつが――」


 玄々の尋問に対してリーダー格が指を差そうと手を持ち上げた瞬間、周囲が暗くなる。

 とっさに玄々はリーダー格の男の胸ぐらを掴むと、鬼燈の方へと投げつけた。


 次の瞬間、ゴンッと鈍い音をさせて殴りつけられた玄々が壁の方へと吹っ飛ばされた。

 そして盛大に壁に激突して崩落した壁に埋もれてしまった。


「玄々っ! 大丈夫かー?」


 鬼燈が投げ飛ばされた男を受け止めつつ玄々に声をかける。


「いてて……。なんだ?」


 自分の上に乗っかった瓦礫をどけて這い出ると、1体のハンチング帽をかぶった妖怪が自分よりもかなり大きい木槌を担いで立っていた。


「……なるほど、お前さんが協力者(・・・)か」


 玄々は納得したように呟いてハンチング帽の妖怪を見据える。そして妖怪は、玄々をギロリと睨みつけた。

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