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鬼と武神

 ――やっぱ、単身で突っ込むんじゃなかったかなぁ……。

 玄々は内心、1体で突撃した自分を後悔した。

 まあ、仕方なかった部分もあるが。

 あのままだと、あの人完全にぺしゃんこにされてただろうし。


 しかし、さすがは禍津神。単純なパワーでは、今の玄々よりもかなり上だった。

 敵の拳での攻撃は何とか相殺できているが、剣での攻撃は恐らく受け止めきれない。

 あの剣は石で作られているようで、切れ味こそほぼ無いが、頑丈さと重さはとんでもなかった。簡単に言うなら石の塊を振り回しているようなものだ。

 そんな超重量物をあの筋力で振り回すのだから、当たれば例え妖怪であろうとひとたまりもないだろう。


 また、その剣を妖力で強化しているのも問題だった。

 得物を折るのは、武器を扱うタイプの相手にはかなり有効だ。だからこそ加速を乗せた右ストレートで思いっきりぶん殴ったのだが。

 いやはや、頑丈にも程がある。ヒビすら入ってない。

 ただ、相手が巨体のおかげか速度は玄々のほうが上だった。そのおかげで辛うじて渡り合っている。


 玄々は速度を活かして手数で押すが、腕の多さからか防御されてしまう。

 禍津神もまた、そんな玄々の速度に攻撃が追いつけず、攻撃を回避されてばかりだった。

 拮抗状態は続く。


 禍津神は、大剣で横薙ぎに斬りかかる。

 玄々は素早く跳んで、それを躱す。

 間髪入れずにもう一本の大剣が振り下ろされる。

 空中にいる玄々は咄嗟に体を捻り、刀身の腹をまるで転がるようにして受け流す。

 回転した体をそのまま利用して、今度は玄々が拳を打ち込む。

 しかし、玄々の拳は片腕であっさりと防御されてしまった。

 玄々は防がれたことを悟ると、殴った腕にさらに力を込め反動を利用して距離を空けた。


 端から見れば常軌を逸した戦い方だった。

 妖怪だからこそできる戦い方でもあった。


「……きっついな、こりゃ」


 禍津神から幾分か離れた位置に着地した玄々は、肺に溜めていた空気を吐き出す。

 禍津神は防御を解き、玄々を見据えて再び構えた。

 追撃はしてこない。

 だが、一瞬たりとも油断できない。


 玄々は、この戦いにやりづらさを感じていた。

 有効打が打てないのだ。

 正確に言うならば、それを撃ち込む隙がない。

 普段の戦いならば鬼の筋力にものを言わせてのゴリ押しが利くのだが、今回の相手はそうはいかなかった。何度目かの打ち合いで、玄々はそう感じ取っていた。

 もともとは武神かなにかなのだろう。もしくは武神の力を取り入れ、制御しきれなかった成れの果てか……。


 ともかく白兵戦が、強い。


 ゴリ押しが利くのは、近接戦が苦手な相手か、もしくは同格または格下の相手に限られる。こういった武術に通じている格上の相手にゴリ押しを決めようものなら、手痛い反撃を食らうだろう。

 近接による物理攻撃というのは、威力が高ければ高いほど、攻撃が当たった瞬間の硬直も大きい。確か、作用反作用の法則ってやつだ。

 しかし、それは敵も同じだった。

 禍津神もまた、強力な攻撃を打ってはこなかった。


 だが、それは相手も単純な脳筋ではないことを意味していた。

 その事実に、玄々は舌を巻く。

 知能のあるパワー型とは、なんとも厄介だ。


 睨み合いが続く。

 互いに殺気を放ち、牽制しあう。

 実力は拮抗していた。

 玄々もそうだが、敵も呼吸を整えているのだろう。

 ちらりと、玄々は禍津神が持っている弓を見る。

 相手の腕が1本ふさがっているのも、玄々が対峙できている理由の一つだ。

 相手が手練であるほど、腕1本分のアドバンテージは高くなる。あのまま弓を持ち続けてくれれば、まだなんとか……。


 そう考えてた玄々の思考を、まるで読み取ったかのようにあっさりと弓を投げ捨てる禍津神。


 そりゃまあ捨てますよね、ここまで来たら。

 さっきから接近戦しかしてないし。

 これで2つの大剣と2つの拳を相手にしなければいけなくなった。

 地味に気が重く感じる。


「無事か、玄々」


 玄々が攻めあぐねいていると、救助を終えたのであろう紫朔が隣にやってきた。ふわりと地面に着地し、玄々に声をかけてくる。

 玄々は、禍津神から目を離さず応えた。


「なんとかね。……あんまし無事って感じじゃないけど」

「ほう、随分と弱気じゃのぅ」

「いやぁ、あれはさすがにやばいって。強過ぎだ」

「おぬしがそれを言うのか。そんなやつと渡り合っていたおぬしが」

「あはは……。こりゃまた手厳しいね」


 随分と辛辣な言葉をかけてくる紫朔に、玄々は苦笑する。

 だが、これは紫朔の自分に対する信頼の裏返しでもある。

 ――つまり負けるはずはないってことを言いたいのか。


「紫朔がこっち来たってことは、避難は済んだのかぃ」

「うむ、既に終わっておる。もう周囲にはいないじゃろう。もう全力でやって良いぞ」


 そう言った紫朔を横目でチラリとみると、こちらに向かってニヤリと笑っている。わー、悪い顔。

 そんな顔されても、キツイものはキツイのだが。

 玄々は拳を握り直す。

 妖怪とはいえ、疲労を感じないわけではない。

 幾分か整ってきたが、まだ若干息が切れている。

 禍津神相手に2体で対抗とか、勝てる見込みも薄い。


 でもまあ、期待されてるならば。


「んじゃ、いきますか」


 応えるのが礼儀だろう。


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