プロローグ
妖。
妖怪。
物の怪。
魑魅魍魎。
時代によって呼び名は変わる。
しかし、その本質は変わらない。
かつて、人と妖怪は相容れぬ存在だった。
幾度となく繰り返される騒乱の日々。夥しき亡骸の数。
弱き人々は妖怪に蹂躙され、罪なき妖怪たちは人々に私刑にされる。
このままでは、いつかは互いに滅んでしまうと考えた人間代表と妖怪代表両名は、1871年の桜舞う季節の頃、妖怪と人間の停戦協定を結び、1000年以上にも及んだ永き戦いは一旦幕を閉じた。
太陽の下、町などの表の舞台では人間が、
月明かりの下、山奥などの裏の舞台では妖怪が、
それぞれ不可侵を以て住み分け泰平の世を過ごした。
時は流れ、
人々の暮らしは豊かとなり、電気の文明が盛んになった現代―――
人間たちは街を作り、社会を築き、働き、遊び、何も変わらぬ日常を過ごし、
そして妖怪たちは、人間に化け、人間社会に紛れて暮らしていた。
妖怪の存在が忘れ去られ、人々にとっては妖怪は物語の中だけの存在となった頃。
一部の妖怪が不可侵を破り、人里で悪行を働くようになった。
このままでは妖怪の存在が明るみに出てしまい、また大きな争いが起きるのを恐れた一部の妖怪たちは、自分たち妖怪が同胞を討つという決断をした。
悪行を繰り返す彼ら妖怪を「怪異」と呼び、
「怪異」を討つ妖怪たちを「御庭番」と呼んだ。
これから語るは、人間の歴史では語られることのない、
そんな百鬼たちの歴程。




