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プロローグ

お読みくださり、ありがとうございます。

プロローグ、短めです。

「なんだと? まだあの場所を落とせんのか」


 アルバトリスタの国王は脂肪を蓄えすぎてたるんだ頬を手で持ち上げ肘をつき、だらりとした体制で戦果に関する宰相の報告を聞いていた。


「……なにぶん、兵士たちも疲弊しております。十分な兵糧もなく、厳しい行程で士気もなかなか上がらず……せめて環境を整える資金を調整してくだされば」

「なぁ~にを言っておる。兵士など腹が膨れて寝る場所さえ与えておけばよい。そんなことに余の金を使うなどもったいないわ。なんとかしろ。これ以上金を使わずな」

「…………」


 アルバトリスタ国王は隣国の豊かな土地を手に入れるべく八年前に戦争を起こしたが、長く膠着状態が続き、先日行った作戦の結果も芳しくない。


 イライラと人差し指を叩き、不満をあらわにする。


「返事はどうした?」

「……かしこまりました」

「ふん。のろまが」


 頭を下げた宰相に向かって一瞥を投げ、国王はその場を後にした。


 この国王は、国や国民、その持ち物まで全て自分のものであると完全に思い込んでいた。


 それゆえ、どんな無茶な指示も要求も、国民は喜んで受け入れるべきだと信じて疑っていないというとんでもない愚王であったのだ。



 その日の夕食時。


「あ~よかった~食事が元に戻ってる~」


 すでに二十歳を越えているのにどこか舌足らずな話し方をする、アルバトリスタ唯一の王子である息子の言葉に国王は得意気にふんと笑った。


「昨日の食事は貧相だったからな。担当のコックは食糧がないなどと言うものだから、それならば国民からいくらでも徴収しろと脅しておいたのだ。王族たる我々の食事を用意するのは国民の義務なのだから当然だろう」


 国王の言葉に王妃も頷いた。


「さすがは陛下でございますね。よかったわ、昨日パンと肉二切れとスープと果物ひとつだった時は、一体どうなることかと思いましたもの」

「ありがとう父上!」


 国民がいくら飢えようとも気にもかけない王族は、アルバトリスタという国を徐々に確実に蝕んでいた。


 これは、後にこの国をフェリアエーデンという精霊が溢れる国に変える、一人の少女のお話である。

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