【ギルド】
加入してみるとギルド情報というのがスマホに追加された。
その情報をタップすると目の前にホログラム画面がでてきて…ギルド情報が表示される。
加入人数3千人超え!?大ギルドじゃないか!!ギルドポイントもかなり溜まってるみたいだし、ギルドランキングも上位!!一部ギルドクエストランキングでは1位を連ねていた。
「こ・・・こんな・・・」
「うちのギルドはね。私が何年もかけて一人一人と会って集めたギルドなの。」
「一人一人って・・・3千人超える人数をですか!?」
「そうよ、貴方もその一人。」
「いったい・・・いったい何年やっていてどれだけこの世界の中に・・・。」
「現実世界に戻る事はもう二度とないわ。」とルナさんは真顔になった。
「え・・・食事や・・・トイレや風呂はどうするんですか?」
「さぁ?どうなってるのかしらね。さて、自己紹介が遅れたわね。私の名前はルナ。ギルド【ミルフィオレ】のギルド長であり・・・この国【アトランティス】のバトル王。そして日本人。」
「に・・・日本人・・・てっ!!!!バトル王~~~!!??」
自己紹介されると目の前にホログラム画面が現れてギルド名の下にユーザー名が表示されるようになった。
「ええ。まぁ、強さは見ればわかるでしょ?」
バトル王ルナの全身を見ればわかる・・・どれもこれも僕が色んなサイトを見てサーチした高難易度クエストクリア報酬だったり、ガチャガチャの大当たりだったり・・・とにかく全てが凄い。
「髪の一本一本までもが武器なの・・・爪も目も。」
僕はさすがに生唾を飲んだ。
防具は[頭・髪・右耳飾り・左耳飾り・目・口・顔・首・腕・手・爪・下着上・胴・ベルト・下着下・腰・靴下・足]と…つけれて…全部を埋めようと思うと…何万かかるかわからないくらいお金がいる。
それを全てつけているというのだから…正直震えてしまう。
僕なんて…適当な防御力がちょっとしかない布の服上下だけなのに…
「私の夢はこの国を大きくする事。これも最近実装されたハウジングシステムのせいなんだけど、町の住民を増やして国へ、そして土地の拡大。
どの国よりも良い国にしたい。それには貴方が必要だわ。貴方は何を望んでいるの?強さ?お金?」
「僕は・・・自分のAIが欲しい・・・だけ・・・です。」
「へぇ!どんなAI?」
「えっと・・・近所の・・・花屋さんの・・・看板娘のAIなんですけど・・・」
「有名企業のアイドルAIがほしいとかじゃないんだ。」
「はい・・・挨拶しかできないAIなんですけど・・・。」
「ふーん。もとのAIはね、1から作ろうとすると最初は卵なのよ。」
「え・・・?」
「それを育てていくの。たくさん話しかけて・・・環境を整えて・・・」
ルナさんはスマホをポチポチいじくると・・・ルナさんの背後の空間が裂けて黒い穴ができて…ルナさんの右に背の高いさらっさらの金髪ショートヘアにモノクルをかけた男性と左には右目の下に蝶のタトゥーが入っていてエメラルドグリーン色のおかっぱのような髪型をした・・・性別不明な人が現れた。
どちらも白いカッターシャツに黒いズボンをはいていた。そしてルナさんの手の中にダチョウの卵みたいなものが・・・。
「これが、AIの卵、そして右がAIのシン。左がシンカ。成長しきるとユーザーとほぼ同じ扱いになっちゃうから注意が必要なのよね。」
AIの頭の上にはAIと表示されていて、名前を紹介されるとAIの後ろに名前が表示されるようになった。
「突然呼び出すからびっくりしたよ。仕事の途中だったし。」と右にいるAIシンが少し拗ねたような口調で言う。
これが・・・AI・・・表情が・・・人間とあまりかわらない。
「あ!言っときますけど、自分の方が先に作られたAIなので。」と左にいるAIシンカが・・・声も判別しにくい・・・。でも名前はシンカだから・・・やっぱり女性?
「張り合わないでもらえますか?先にできたAIなら僕より仕事してくださいよ。」AIシンはAIシンカを睨む。
「もぉ!なんで二人そろうとうるさくなるのよ!仲良くしてって言ってるでしょう?ごめんなさいね。これがAI、どっちも男だから女のAIの見本は見せられないけどこんな感じ。」
AIシンカは男なんだ・・・。
「凄いですね・・・人間みたいです。」
「ここまで育てられてる人は今のところ大手ギルドの上位層だけ・・・で貴方の言ってるどこかのお店のAIがどんな形で届くかはわからないけど、貴方を全力でバックアップするわ。」
「え?・・・え?なんで・・・僕・・・?え?」
言われてる事が本当にわけのわからない事すぎて気が動転した。
「その花びらはGMアイテム・・・つまりこのゲームの運営から贈られる幸運のお守り。君には今後運営から何かしらの幸運があたえられる。そんなのこの世界で一握り・・・いえ・・・貴方だけかもしれない貴重な体験談になる・・・私はそれが見たい、知りたい・・・それだけ。」
「は・・・はぁ・・・。」やっぱり・・・わけがわからないや。
「コホンッ」とAIシンが咳払いして「つまり王女様は運営と何かしら繋がりのある貴方と繋がって恩恵を受けたいんだと思いますよ。」
「うちの姫さん腹黒いですから。」とAIシンカが言った。
なるほど・・・そういう事か・・・。
「ちょっと!二人とも、私の評価を下げるような発言は避けてって言わなかった?」
二人はルナさんから顔をそらした。
「・・・・・えっと、僕は・・・どうすれば・・・。」
「まずは、装備を整えましょう。・・・・・そういえば・・・復帰者って聞いたけど、最後のログインはこの地だったの?」
「いえ、そんな・・・初心者の村から3つか4つくらい進んだ周辺をうろちょろしてたはずなんですけど・・・。」
「やっぱり!この国には入国審査があるから入れるわけないもの。」
入国審査!?そんなものまで実装されてるのか。
「凄い・・・ですね。入国審査って・・・ほんとに別の世界にきたみたい。」
「そうね、最初のバトルだけのゲームからすると凄い変わったと思う。じゃあ城に移動しましょうか。装備揃えないとね。」
「城?」
ルナさんがスマホをポチポチといじると空間が裂けて、その奥はどこかの部屋のような場所がうつっていた。
「さぁ、行きましょう。」裂けめに入っていくルナさん、そのあとにAI達が入って・・・僕が入った。
「凄いですね。これはいつ実装されたんですか?」
「これは国がたくさんできはじめてからよ。」
広い・・・そして氷の空間・・・寒い・・。
「りきさん寒そうですね。ルナ、まずは装備から揃えてあげたら?」とAIシンカが言った。
「シン、悪いけど千翠さんを呼んできて頂戴。」
「えー・・・なんで僕ばっかり。行ってきます。」
AIシンは渋りながら空間を裂いてどこかへ消えてしまった。
「シンがあぁなのは人数増えすぎたギルドの管理がめんどくさくなってルナが面倒だばかり言うようになったせいですよ。きっと。」
「う・・・今はほら・・・千翠がほとんどやってくれてるから・・・。」
しばらくすると空間が裂けてAIシンと黒い髪のエルフっぽい見た目の緑のローブを着た男性が部屋に入ってきた。
「姫、また新人を拾ってきたそうですね。」
「千翠!!ええ、今回の新入りは運営に加護を受けてる可能性が高いわ。うちで是非おさえておきたいの。」
「・・・・なるほど、利用価値がありますね。」
千翠・・・この人も強そうだ・・・何より着ているローブには見覚えがある・・・。
「あの・・・もしかしてそのローブ・・・3、4年前くらいの超地獄級クエストのクリア報酬ですか?」
「そうですよ。このギルドの創設時からいる人はだいたい持ってますね。おっと・・・自己紹介がまだでしたね。私は千翠と申します。このギルドの副長を務めております。」
「あ・・・えっと・・・僕は・・・りきです。最近復帰したばかりで・・・右も左もわかりません。よ、よろしくお願いします!」
「えぇ、此方こそ。早速ですが装備の方をまず整えましょうか。何の武器を使っていましたか?」
「槍とか・・・たまに魔法も。」
「ふむ。つまり手に入れた武器を適当に扱っていたという事ですね。・・・・・・・運営との繋がり・・・もしかすると・・・ふむ。姫、春風のタクト余ってませんでしたか?」
「えー!!嫌よ!とるの苦労したのに!!やだやだやだ!!」とルナさんが先ほどの凜とした表情を崩してだだをこねる子供のように顔をふくらましてぷいっと顔をそらした。
すると千翠さんはAIシンカの目をみて顎でしゃくって指示をだした。
「・・・・ルナ、これは夢の為です。ルナにはいつもの傘や扇があるし、りきさんが負けてしまったら元も子もないでしょう?・・・ね?ルナ・・・自分も彼にはタクトが良いと思いますし。」AIシンカは優しくなだめるようにルナさんに囁いた。
「・・・う・・・・。」
「今日一日そばにいますから。」
「わかったわ。使い終わったら返してちょうだいね。」
ルナさんは渋々スマホをいじってポチポチと操作して・・・僕に春風のタクトという名前の武器をプレゼントしてくれた。
「コホンッその武器は別に返す必要はございませんので好きに扱って頂いて結構です。」千翠さんが良い笑顔をして僕に言った。
「はぁ!?」とルナさんは怒り筋をたて、どこからかピンクのふさふさの扇を取り出して千翠さんに氷柱入りの突風をあてた。
千翠さんは突風をいとも簡単に手をかるくふっただけで消した。
バトルをしなくとも、体力の減らない練習ができる。ちゃんとした練習場エリアにいけば体力は減るが死にはしない。
たしかそうだったっけ。
でも・・・いったいどうやってあの突風を・・・。
「ん?何か?」じっとみつめてしまって千翠さんに気付かれた。
「すみません、どうやってあの突風を?」
「あぁ、武器は豊富でね。ごらんの通り、うちの姫様は何かと手を出す癖があるから化学分解系の武器を常時装備してるんだよ。物理攻撃に弱すぎる難点を除けば優秀な武器だよ。これは。」良く見ると千翠さんの手のひらに太極マークがついていてそれが武器なのだと察する。
「ルナは氷属性みたいなもんですから、なんでも分解されちゃいますよね。唯一勝てない相手というか。」
「・・・・王には・・・ならないんですか?・・・・あっ!!すみません!!失礼な事をっ!!」
「何を言ってるんだ?・・・これも戦略のうちですよ。」千翠さんはうっすらと黒い笑みを浮かべた。
背筋が一瞬ゾクりとした。
「さて、あとの防具一式ですが、春風のタクトは特殊武器。春を呼び風を呼び・・・まぁ、何が起こるかわからない武器でみんな使う事を拒んでいるレア武器です。」
え?この武器もしかしてゴミだったり・・・。みんな使うのを拒むって・・・。しかも・・・どうやって扱う武器なんだ??
「ともあれ武器の性質がわからないと防具は選べませんので、しばらく姫と練習をして使い方と性質を私に見せてください。」
「えっ・・・!」・・・バトル王と?
「まぁまぁ、千翠さんと戦うよりマシなんで、練習ですし、適当に武器を使う練習をするといいですよ。」とAIシンカは僕の肩をポンポンと叩いた。
武器を装備してみると・・・とりあえず見た目は白くて特に何の絵柄もなく・・・ほんとにただの白い棒・・・なんか魔法使いがふるいそうな杖っぽいけど・・・タクトっていうんだから・・・・音楽を奏でるもの?
いやいや、指揮棒だから・・・指揮・・・棒?
試しに優しくそっとタクトを振ってみるとそよ風が吹いた。
風を・・・操ったような気がした。
そう思っていると先ほど千翠さんに向けたつららと突風が僕の方に向けられて・・・ぐさぐざと氷柱がささって、酷い痛みがした。
「あ‶あ‶あ‶ああっ!!」
「痛そう。」とルナさんが呟いた。
でもすぐに痛みはひいた。通常のじゃれあい程度の練習において痛みを感じる時間は3秒ほどだと聞いた事がある・・・それにしても痛くて怖かった。
「まだまだいくわよ。」ルナさんは次々と氷柱を混ぜた風を飛ばしてきた。
自分の顔面を目掛けてくる氷柱を咄嗟にタクトでふりはらおうとした時・・・氷柱が溶けて水になった。
「え?・・・・あれ?」
「なんで私が春風のタクトを手放すのを渋ったかわかる?・・・・そこそこ使えるからよ。」
・・・てことは・・・氷柱を溶かせる事を知っていて・・・・・教えてくれたら良いのに。
「今、教えてくれたら良いのにって思ったでしょ?そういうわけにはいかないのよ。その武器は特殊だから・・・感じる事が大事。風は感じた?」
「あ、はい。そよ風を感じました。」
「その武器は最高ランクの最強武器。でも使ってる人は一人もいないわ。
それは運営が発表したユーザーが使用している武器ランキング最下位の武器。現実の一ヶ月はこの世界にとって、気の遠くなるようなくらいの時間で・・・その時間の中で正式バトルに使用された回数は0。練習使用回数は少々。それは恐らく・・・この武器を使いこなそうとした私を含めた少数のもの好きのみ。」
「ふっ。自分で物好きって言ってるし。」とAIシンカはひそかに笑った。
「私は使い方を知っているけれども、多分そのうちの一つか二つしか知らない。だから正式バトルでは、同じ最高ランクのちゃんと扱える傘と扇しか使ってないわ。」
「嘘つき。ここの王になった時は大きな・・・もごっ!!もごもごっ!!」AIシンカは話している途中でルナさんに口を防がれた。
「え?嘘?」
「昔は最高ランクの武器なんて1個しか持ってなくて今みたいに使いたい武器を自由に選べなかったの!あれは無し。」
「・・・・たまに負けそうになると使ってるじゃないですか。アレ。」千翠さんは真顔で言った。
「もお!!とにかく!その武器は生きてるようなもんで!気持ちがあるの!AIみたいなものなの!正確に操作するなんて不可能に近いの!わかった?」
この武器・・・生きてるんだ・・・。
だから僕は心の中でタクトに語りかけた。
(ねぇ・・・君は・・・生きてるの?)そう聞いてみると風が少しそよそよと返事をするかのように漂った気がした。
(僕はさ、どうしても迎えに行かないといけない女の子がいて・・・力を貸してほしいんだけど・・・どうすればいいかな?)
そう心の中で語りかけると「どうすればいいかではなくどうしたいかが重要」
声が聞こえたわけじゃない。頭の中で…もう使い方の答えがわかっているそんな不思議な感覚。
どうすればいいかではなくどうしたいかが重要・・・僕は・・・今だせる最大の威力をルナさんにぶつけたい。
そんなの・・・今までの僕じゃ絶対無理だったし、考えようともしなかったのに・・・・最高ランクのこの武器はそんな僕に勇気を与えてくれてるようなそんな気がした。
お願いします!!力を貸してください。そう、僕は目を閉じて念じた。
「よかろう・・・ならば指揮をとれ・・・そなたの目にはもう映るはずだ。」
今度はしっかりとした声が聞こえた。
ゆっくりと目を開くと・・・・7人の小人が僕の回りを取り囲んでいた。
びっくりして「うわぁ!!」と奇声をあげて尻餅をついた。
「クスクス、僕らが見えるのはこのゲームがはじまって二人目だよ。」いかにもイタズラが好きそうな笑い方をする小人は言った。
「え?2人って・・・使いこなせてる人が他にいるの?」
僕以外にもう1人・・・ルナさんだろうか。
「いたさ!でももうログインしてこないんだ。」優しそうな顔をした小人が言った。
「君たちは、一つの杖についてるAIじゃないのか・・・?」
ログインしてこないって事はルナさんじゃないのか。
「はい、僕らは全ての記憶が共有されます。でも体は無数にある。意識は1つですけど。」今度は頭の賢そうなモノクルをかけた小人が言った。
「僕たちが他のユーザーに感情がいった場合は動けなくなるよ?だから大切にしてね。」優しそうな顔をした小人が言った。
「ルナも良かったんだけどね。武器に浮気してるから…姿は見せてやらなかった。」綺麗な顔の白髪の小人が言った。
「え、ちょっとちょっと、痛みで頭おかしくなっちゃった?」ルナさんが僕を変なものを見るような目で見ていた。
「指揮者にしか僕らは見えないよ。」魔法使いっぽいローブで顔が見えない小人が言った。恐らく女の子。
「心の中で語りかければそれはタクトを通じて伝わるのですぅ♪」ふんわりとしたオーラのある可愛いピンク色の髪をした女の子の小人は言った。
「不思議だ・・・君からは彼女の匂いがする・・・さぁ、指揮をとって。心の中で念じたらそれは実現される。身を切り裂けというならば切り裂こう。風を起こせというのなら風をおこそう。春を呼べと言うなら・・・・呼ぼうじゃないか!」
フードをかぶって顔がみえなかったが風が吹いてフードがめくれて・・・その顔は綺麗な顔をした女性で・・・他の小人よりちょっぴり背が高かった。
「ルナさん、使い方がわかったかもしれないです。でも、時間がほしいです。ゲーム内時間の一晩ほど。」
使い方はわかったけど僕にはまだ足りない。
「えー!なんでさ!ルナなんてアッ!といわせちゃうのにさぁ!」とイタズラが好きそうな小人は言った。
僕には・・・まだ君たちを使うなんて早いよ。もっと君たちを知らないといけないから。
「りきは優しいな。」と綺麗な顔の白髪の小人が言った。
「ふっ、そうか、ならば防具は物理耐性のある布防具一式もらうといい。盾代わりに千翠の愛用してる太極珠をつけるといい。」
綺麗な顔をした女性の小人が言った。
え?でも僕頭良くないし・・・元素分解とかわけわかんないよ?
「大丈夫です、それは僕の仕事ですから。」モノクルをかけた小人が言った。
「コホンッ、では明日早朝にここより広い練習エリアで試すとしましょう。よろしいですか?」千翠さんが提案してくれた。
「はい、それでお願いします。・・・・あ・・・あの・・・防具・・・なんですが・・・物理耐性のある布防具一式と盾には対極珠をつけろと武器が・・・。」
かなり図々しい気がする・・。
「対極珠は扱いが難しいのだが・・・武器がそう言ってるならば・・・姫、対極珠を彼に。私からは私が持ってる中では優秀な布防具一式を渡すとしよう。」
プレゼントが一気に届いて、ポコポコとスマホがなる。プレゼントを開封しては装備していくと・・・・。
「アッハハハハ!強そうに見える!ハハハッ!」とルナさんは僕を指差して笑った。
確かに・・・不恰好というか・・・顔をリアルとほぼ同じに設定してるせいで似合わない気がする。
布防具は基本薄い生地みたいな服が多いけど、僕のはゴツゴツしているというか・・・物理耐性をもってるせいかな。
「大丈夫、君はちゃんと着こなせるようになる」綺麗な顔の女性小人が浮遊して僕の背中をポンポンと叩いた。
「ん?そこに誰かいるのか!?」千翠さんが僕の背後を睨む。
「あ、武器のなんていうか・・・武器です。僕の武器だと思います。」
言葉がめちゃくちゃだぁ~!
「私達はタクトを握ってる方にしか見えないのですぅ♪」ふんわり系の可愛い小人が言った。
「そうか、ならいい。ではまた早朝に。何かあればメッセージをくれ。ギルド機能の操作方法はわかるかい?」
「はい、なんとなくですが、メッセージの送り方は覚えてます。えっと・・・どこか部屋をお借りしたいんですが・・・。」
「部屋ならこのギルドハウスの好きなとこ使えばいいわよ。名前とロックの表示がされてない部屋をスマホで確認して好きに使って。」
この城ギルドハウスだったのか。
「じゃあ、また明日ね~。みつけた部屋は自分の部屋にしちゃっていいから、名前とロック忘れないようにね~。」
ルナさんはスマホを操作してAIシンカと共に消えてしまった。
千翠さんもまた消えてしまった。
まずは自分の部屋みつけないと・・・MAPを開いて、空いてる部屋を探す。
結構部屋があるというのにほとんど埋まってる。やっとみつけた部屋は6畳ほどの広さで古びた洋風の部屋だった。
ギルドハウスとかの経験が無くて少しスマホと格闘してやっと名前とロックをかける事に成功した。
「最近ではハウジングだけの為にリアルのお金をつぎ込んでる方もいらっしゃいますよ。」モノクルをかけた小人が言った。
部屋の少しほこりっぽそうな見た目のベッドに腰掛けた。
「あの、君たち名前は?」
僕は小人達に向かって尋ねた。
「名前なんて適当につけりゃいいじゃん、俺らただのAIなんだからさ。」とイタズラ好きそうな小人が言った。
「じゃあ、その・・・ログインしなくなった指揮者にはなんて呼ばれてたの?」
「私はスゥって呼ばれてました!前の指揮者は1人1人丁寧に名前をつけてくださったのですぅ♪」
ふんわり系の可愛い女小人スゥは嬉しそうな顔をしていた。
スゥの髪の毛は優しい桃色で毛先がくるりとカールしていて・・・ほんとうにふんわりとしていて見ているだけでも心が癒される気がした。
「スゥは前の指揮者の事大好きだったんだね。」
「はい♪とってもとっても優しかったのですぅ♪」
「スゥは何ができる小人なの?」
「スゥは傷を癒すのですぅ♪」
スゥは・・・回復系なのか。
「えっと、他のみんなも前の指揮者にもらった名前教えてほしい。」
「一つ聞いていいか。なんで前の指揮者からの名前なんだ?新しく名づければいいじゃないか。」綺麗な顔をした白髪の小人は言った。
「前の指揮者の事が好きだって気持ち・・・感じるから、僕もその気持ち大事に・・・というか大切にしたいなって。ダメかな?前の指揮者がログインしたらその人を優先してもらってもかまわないし・・・。」
「前の指揮者がログインしたって今貴方が見てる僕らは貴方だけの僕らですから特に支障は・・・。」
モノクルをかけた小人は少しずれたモノクルをかけなおした。
「うん、でも名前いくつもあると大変だし・・・やっぱ一度もらった名前は大事にしよう。」
「・・・・わかりました。僕の名前はエイボン。指揮者の脳に直接知恵を与える力を持っています。」モノクルをかけた小人の名前はエイボン。
緑のふかふかの帽子をかぶっていて緑のローブを着ている。それと凄く重そうに見える辞書っぽい本を持っている。髪の毛は茶色。
「これから何かとお世話になります。」と僕は丁寧に頭を下げた。
「ふふっ。貴方もAIに頭を下げるんですね。」エイボンは少し切なそうな嬉しそうな・・・なんとも言えない顔をしていた。
「俺はハク。確実に相手を斬る。それが例え前の指揮者であっても・・・な。」白髪の綺麗な顔をした小人の名前はハク。
瞳は赤色で肌も白い・・・少しアルビノっぽいかな?目の下に濃いクマがある・・・服装は紺色っぽいボロボロのマントを纏っていた。
「ううん、君が大事だと思う人を斬る必要なんてないよ。君にも自由があるし・・・その・・・大事なのは気持ちじゃないかな。」
「頭にいれておく。」と少し顔をそらされた。何か気にさわったかな。
「ふふっ。前の指揮者もハクに斬りたくないものは斬らない方が良いよって言ってた。
僕はハル。名前の通り春を呼ぶよ。」優しそうな顔をした少年のような小人の名前はハルだった。
髪の毛はクリーム色でサラサラショートヘアー。服は古代ギリシア人を思わせるような布きれのみ。
「春を呼ぶって・・・どんな力なんだろう?」
そう呟くと・・・ハルの能力がすぅーっと頭の中に入ってきた・・・・温度操作・・・雪属性や氷属性の魔法を溶かしてしまう。
なるほど・・・それから寒さを防いだりするのか。
「今のはエイボンの力かな?」
エイボンの方をちらりと見れば少しニコリと笑ってくれた。
「僕の魔法は主に攻撃、だいたいの魔法は使える。名はハナビ。」
紺色のローブを着た女性小人の名前はハナビ。ちらちらと赤色の髪の毛が見える。
少しづつわかってきた、前の指揮者はそれぞれの能力にそった名前をつけている。
「いっひひ!俺の名前はおしえないからな!お前が勝手につけて呼べよ!」イタズラ好きっぽい小人はいたずらっぽく笑った。
「わかったよフウ。」
フウは完全に面食らったような顔をしていた。
緑色の髪の毛は右に流れるかのような癖がついていて、フウもハルと同じ服を着ていた。
「くっははは!当てられてるじゃないか。」綺麗な顔をした女性小人はイタズラ好きっぽい小人フウを見て笑った。
「チェッ!!」
「さて、私が最後の1人だな。」
「我が名はウォール。私はどんな時でもお前の盾となろう。」
ウォールは甲冑は着ていて、顔は凄く美人だ。髪の毛は見事なシルバーブロンドで瞳は澄んだ空のような色をしていた。
・・・・・妙だな、なんで名前が盾じゃないんだ?
「あの・・・なんで名前、盾じゃなくて壁なのかな・・・。」
「それはな。盾であって盾ではないからだ。私はこの身でお前の盾となる。」
「・・・・そんなっ!だめだよ!」
「案ずるな、私は人ではない。プログラム・・・それからデータのごく一部。」
「前の指揮者はどうやって君を使ってたんだ?」
「それは言えんな。」
・・・・何か・・・何か方法が・・・。
スマホを取り出して装備覧をよく見てみると武器の下に何やら7つ枠があって、試しに太極珠をあてはめてみると・・・
「わっ!なんだこれ!」適当にはめてしまったせいかフウに装備されてしまった。
なるほど・・・小人達に装備を持たす事ができるのか。
1つずつ位置をずらしてなんとかエイボンに持たせる事ができた。
「しばらくエイボンはそれを使っててほしい。」
「承知しました。」
「ウォール、君は何を持ちたい?」
「なっ!その質問は・・・ずるいぞ。」
ウォールは少し拗ねたように呟いた。
「しいて言えば・・・盾がいい。」
繋がった・・・これでやっと・・この武器は・・・追加で7つアイテムを装備できる。
やっぱりこれ最強の武器だ・・・これなら咲を迎えにいける。
「りき。基礎は大丈夫か?必ず、体力・魔力というものが存在するのはわかっているな?」とウォールが確認してきた。
「うん。でもこのゲームレベル制とかじゃないし・・・みんなどうやって体力とか魔力を上げてるんだろう?」
「僕の出番ですね。」エイボンが僕に知恵をくれた。
これは知らなかった。勝負に勝つとバトルポイント通称BPの他にエネルギーポイントというものが入ってきて後で運営公式のお店で基礎体力、魔力が上がるポーションをエネルギーポイント通称EPで買うらしい。
通常クエストとかでもEPは手に入るみたいだ。
「ありがとう、エイボン。知らなかったよ。」
「いえいえ。」
「ウォールも確認ありがとう。」
「主は復帰したての初心者だからな。我々を使う時、我々の上に魔力が表示される。
それが空になる前にタクトを向けて魔力を継ぎ足していってくれ。」
「俺が風を使って魔力使ってやっから、やってみな!」
フウがそよ風を発生させて、それから小人達を風の力で浮遊させてゆくとみるみる魔力が減っていく。
急いで僕はタクトをフウの方へ向けると魔力が補充されていった。
なるほど・・・これを7人分管理しないといけないのか。戦略はほぼエイボンが練ってくれるとして・・・
僕はどうしたいかを伝えて、魔力注入に集中しなければならない・・・そういう事か。
確かに・・・その様はさぞかし指揮者っぽいんだろう。
しばらく小人達と使い方や雑談をした。
ベッドの布団をかぶる為には一度装備を全部脱いでパジャマに着替えなければいけないらしい。
パジャマを着ると非戦闘バフが付与されて誰からもバトルに襲われる事なく安眠が可能…。
課金したパジャマや…高難易度クエストからでるレアパジャマを着て眠ると【目覚め】って名前のバフがついて…そのバフの効果は次に眠るまでの間HPと魔力を5%引き上げるらしくて…必須アイテムらしい。
この世界でのバフはホログラム画面で自分のステータスをみた時右上に色んなマークがつく…僕はそれをバフと呼んでいる。
ステータス向上効果ならバフ。ステータスがダウンするような効果ならデバフ。これはどこのゲームも似たようなものらしい。
それからハウジングをすれば、今のほこりっぽいと感じる匂いとかが軽減されるらしい。
ふと現実世界の時間を表示すると…こんなに色々あったのに…現実に戻っても・・・数秒しかたってないなんて・・・。
時間の圧縮って…凄い。
色々考えていると…いつの間にか眠ってしまっていた。