【血色】
防衛戦後…
shiftさんが用事があるって言って僕をルナさんの部屋に放り込んで…去って行ってしまった。
気まずい。
何が気まずいかというと…ベッドでルナさんが泣いていて…シンさんとシンカさんが一生懸命慰めていたからだ。
シンさんが此方に気づいて来てくれた。
「どうしたの。」
「えーっと…shiftさんが僕をここに…。用事があるとかって…パーティーも解散されて…。」
「ルナ、ごめん。パーティーいい?」
ルナさんからパーティー招待がきて、入るとシンさんとルナさんとシンカさんで4人パーティーになった。
「えっと…どうしてこんなことに…。」
「ルナはもっと安全に勝てたはずなんだ。それを遊んだから…。」
「え…遊んでたんですか?」
「僕ら矛盾はあれが全ての姿じゃなくて…最終形態になればミシェルをもうちょっと早く倒せてたと思う。でも…ルナは賢者の書を使いたかったんだ。」
「……千翠め。絶対に自分は許しません。」とシンカさんがメラメラ燃えていた。
「……千翠さんの考えは…わからない事もないけど…大切な人を傷つけられたら腹が立つよね。」
「すみません、こんな時にお邪魔して。」
千翠さんの考えってなんだろう?
「……あぁ。千翠さんの考えがわからないって顔してる?もしかして。」
「え…バレちゃいましたか。」
「千翠さん支持率を保つ為に圧倒的な力を見せつけてほしかったんだよね。あれは運任せのギリギリの試合のように見えたからさ。千翠さんもこの国の維持に必死で動いてるからさ。」
「なるほど…。支持率…って政治みたいですね。」
「政治だよ。本で読んだだけだけど現実世界とあんまり変わらないんじゃない?」
しばらくして、ルナさんが眠ってしまったようで…
「………完全に寝ました。」とシンカさんがギルド画面を確かめながら言った。
そういえば…寝てたら睡眠マークつくんだっけ。
「泣き疲れたのかな。」とシンさんがルナさんの側へいく。
「千翠め…。自分達への嫌がらせとしか思えません。」
「まぁ。ちょっとはありそうだよね。」
………なんか複雑な関係という事だけはわかった気がした。
「さて、昼食どうぞ。りきさん。」とシンカさんが冷めたパンをだしてくれた。
「ありがとうございます。いただきます。」
昼食を食べ終えたあとで千翠さんからメールが届いて広間に来るように言われた。
次は千翠さんか…とちょっとどんよりした気分になった。
「僕が広間までついていくよ。シンカはルナの側にいてあげなよ。」
「言われなくとも…そのつもりです。」
シンさんと一緒に大広間へ行くと、千翠さんと幹部達がそろっていた。
shiftさんもいるけど…用事って幹部会議か何かだったのかな。
「お待たせしました。」
僕が来たと同時に幹部達はゲートでどこかへ行ってしまった。
「きましたか。りきさんに頼みがあります。」
「えっと、なんでしょう?」
「…ダリアを連れ戻すのを手伝ってもらえませんか?」
「え…僕がですか?会ったこと…ないんですけど…。」
「大丈夫です。……ヴァルプルギスの為にどうしてもギルド員を増やす必要と教育する必要があるんですが、ダリアがいなければ今日のようにスパイが混ざるかもしれません。ですから、行きましょう。」
……何が大丈夫なんだろう?と思ってしまったけど…ついていく事にした。
パーティーを抜けて千翠さんとパーティーを組みなおした。
「ありがとうございます。りきさんなら、ダリアを連れ戻せるかもしれません。」
「あの…ダリアさんって…確かAIの勧誘をしてるんですよね?」
「ええ。……AIは無料ではない事をご存知ですか?」
「あ…はい。企業が卵とか成長してるAIを売ったりしてるんですよね?」
「ええ。そうです。では…数千万クラスのAIが何らかの理由で契約切れになっていたら…どうしますか?」
「……勧誘します。…てことはダリアさんは…それを狙って?」
「はい。矛盾シリーズの矛型のAIですね。…現実世界1日だけの販売でしたから相当レアで価値も高いんです。」
「なるほど…連れ戻せる気全くしませんけど…頑張ってはみます。」
「では。」
千翠さんが異形の町のゲートを開いてくれた。
ゲートをくぐると…まるで夢の国のような…キラキラした遊園地が広がっていた。
「え…。ここが異形の町…ですか?」
「ええ。」
千年さんのように…名前のないAIが普通に歩いていた。
頭の上に視線をやるとAIとだけ表示される…。
「りきさん、ついてきてください。」
しばらくついて歩いていくと千翠さんはピンク色の猫にひたすら話しかけている人の前で立ち止まった。
その人は美しいプラチナブロンドのボブヘアーで…碧眼…服装は貴族が着てそうな綺麗な服…恐らく男性…?
「ダリア」と千翠さんが声をかける。
どうやらこの人がダリアさんらしい。
「千翠…。」
「ミルフィオレにスパイが入った。お前の班に紛れ込んでいた。」
「……まじ。……チーロ。俺と一緒にきて。」とダリアさんはまたピンク色の猫に話しかける。
「にゃー…。」猫は不満そうな声をだす。
……よし、困った時はGMアイテムだ…と思って花びらを猫に見せてみた。
「にゃ?」………何それ?みたいな感じでガッカリした。
「ダメでしたか。」
「それをどこで?」と聞き覚えのない綺麗な声がして振り返ると…真っ白な髪の毛で肌も凄く白くて…まるでアルビノの人っぽい女性がいた。女性は美しい白いドレスを着ていた。
「あ…え?」
「異形の町の王、AIココロ様です。」と千翠さんが教えてくれた。
「………それをどこで…?」
「あの…現実世界の今日復帰したんですけど…ゲーム内だと一ヶ月とちょっと前…ですかね。ログインしたらプレゼントでこれが届いてました。」
「名前は…。」
「りきです。」
「………それは春風のタクトですか?」
「え…はい。」
「使いこなせてますか?」
「はい。」
「………証拠は…。」
この人って確か…ソルさんのAI…だった人…って事は…みんなの名前も知ってる?
「ハル…フゥ…スゥ…ハナビ…エイボン…ハク…ウォール。」
「………どうやら…選ばれたようですね。何をしにここへ?」
「そこの…ダリアさんをギルドハウスに連れて帰りたいんですが…その…ピンク色のAIと契約したいみたいで…ここから動いてくれないといいますか…。」
「…なるほど。血色さん、りきさんのお願い…聞いてあげれますか?」
「ココロ様……でも私は…もう…。」と猫が喋って驚いた。
「一度だけ…もう一度だけ…信じてみませんか?今は信じられなくても良いんです。ですが…私の願いです。それを信じてもらえませんか?」
「……三食昼寝つき。約束できる?ダリア。」と猫が言った。
「……んー……。」とダリアさんは約束したくなさそうな顔をする。
約束できないんですか!?ダリアさん。チャンスなのに…。
「努力はする。忘れてたら言ってほしい。」
「忘れないで!私が欲しいんでしょう?私最強だよ?」
「う………わかった。でも…戦ってる時は許してください。」
「しかたがないにゃー。」
「お力になれましたか?りきさん。」
「はい!ありがとうございます。」
ココロさんはニコっとしてから、どこかへ去ってしまった。
千翠さんはダリアさんをパーティーにいれた。
「逃げねーよ。」とダリアさん。
「そう言わずに。りきさんのおかげで話がまとまったんですから。」
「……。」
ダリアさんと千翠さんと血色さんとで初心者の町へ行ってAIの契約を見届けた。
「やっと俺のものになった…もう離さない。ちいろ。」
「ちょっと信じらんない。名前を変えるなんて!!」とちいろさんが怒っていた…
「ちいろさんは前の主人の名前を憶えてるタイプですか。」と千翠さんが言う。
「ええ。」
「漢字もひらがなも変わらない。海外ユーザーから見たら漢字はひらがなに変換されて見える。」
「そういう問題じゃないの!わびさびのわからない男ね!」
「それより、これ飲んで。」とダリアさんは赤色の薬の入った瓶をちいろさんに渡す。
「何よ、これ。」と言いながらちいろさんが飲むと…姿が変わり…擬人化して可愛らしい猫耳の生えた女の子になった。
「AI経験値ポーションですね。」
「ああ。この方が早い。ちいろの為にいっぱい貯めてたんだ。」
尽くしてるように見えて身勝手なような…。
「で、俺の班にスパイが入ってたって?」
「そうですよ。私がみんなから怒られたんですよ?」
「すまん。千翠、ちょっと練習試合付き合って。ちいろの性能試したい。」
「……今の話聞いてましたか?」
「聞いてた。練習試合したい。」
「はぁ…(深いため息)。では練習場へ。」
ギルドハウスの練習場へ千翠さんのゲートで飛んだ。