【目覚めた者達。】
ルナさんの部屋には眠っている俺とルナさんとShiftさんがいた。
意識が途切れる前に何か手に冷たいものが当たったと思ったけど…ルナさんの手だったのか。
「タクミ、ありがとう。」
「…おせぇよ。」
「うん。」
段々と手が熱くなってきた。起き上がるとルナさんが沢山ホログラムを開いていて、Shiftさんがその後ろでホログラムを見ながら何かの補佐しているようだった。
「やっとお目覚めか。呑気に寝てやがって。」
「すみません。Shiftさん、無理…しないでくださいね。」
「は?…気持ちわりぃ。」
「ははっ。悪魔はどうなりました?」
「ルナが全て氷で覆った。内部に侵入したモブは解放された東屋が処理して回ってる。もうすぐラスボスの場所へ到着する。」
ルナさんの出しているホログラム画面には国全体のマップが映し出されていたり、シンカさんとシンが行動しているカメラもうつされていた。どうやら城内の水は無事氷になって、何人かの悪魔達は氷漬けになってしまったようだ。その中にはダリアさんのお父さんも氷着けになっているようだった。
「そうだ。ルナさん。ヴァッサゴっていう悪魔がいて、その中身が神崎天竺っていう人らしいです。」
「え?天竺さん…。」とルナさんが少し動揺する。
「ん?牡丹兄さんのお父様か?」とShiftさん。
「えぇ。そう。良かった…生きてたのね。」
「本部を襲撃してルナを奪還したんだろ?天竺さんどこいった?」
「それは…姉にしか分からないわ。」
「ふーん…。」
陽子が関わっているのか?あぁ、そうだ。記憶を引き出せばいいんだ。
神崎…天竺…。と記憶の引き出し方に失敗したのかなんなのか俺の視界は暗転してしまった。
…しまった。思い出しをしようとしたら過去へ飛んでしまったのか。
誰の体に入ったわけじゃない…完全に自由だな。
「天竺は!?天竺はどこですか!?」と女性の声がした。女性は牡丹柄の着物を着ていて、学生服を着ている千翠さんを揺さぶった。その女性の後ろには真面目そうな学生服を着た青年が立っていた。恐らく…ダリアさんだろう。女性はきっとダリアさんのお母さんかな?
千翠さんは酷く青ざめていた。
「母さん、ここを出よう。父さんを見かけた人がいるんだ。」とダリアさん。
「ほ、ほんとに?」と今度はダリアさんにしがみつく女性。女性はとても病んでいるように見えた。
「あぁ。なぁ。千翠。家を出る許可をだしてくれないか?」とダリアさん。
「え、えぇそうですね。許可しましょう。支援金も出します。」と酷く青ざめていたけれどもなんとか作り笑いをする千翠さん。
「まぁ!千翠様が許可を…あぁ…神様。牡丹のおかげだわぁ…あの人ったらどこで何をしてるのかしら。」
「真面目に仕事してると思う。外の世界で。」
「そうね。そうね!」
そこで視界が暗転した。
「どうして…どうして俺の事は見てくれないんだよ…母さん。」とか細い声が響いた。
次は先程の女性がベッドの上で横たわっていた。心電図に点滴、酸素マスクもろもろがつけられている。
ダリアさんが手を握りしめていた。その隣には千翠さんがいた。二人ともスーツ姿だ。
「なぁ…千翠…親父を殺したのか?お前が親父を監禁していた事は知っている。」とダリアさんは涙を流しながら問う。
「記憶には…ない。それらしき痕跡もなかった。私がやったのかと…自分でも思って…ました。監禁場所にいったらもぬけの殻でした。」
「もぬけの…殻?……そうか。わかった…。疑って悪かった。…千翠。お前まだ何か隠してないか?俺の目を見ろ。」
「……っ!!!」と辛そうな顔をする。
「俺はどんなお前でも受け入れる。ガキの頃からの約束だろ。」
「実は…月子の姉の陽子についていた家庭教師に…俺の血を輸血してしまったんだ。」と千翠さんは片手で目を覆う。
「……どうなった。凝集は起きなかったのか?」
「もちろんです。奴は…念入りに調べた後、実行した。」
「その結果が…アレか。」
「恐らく、天竺さんは…アイツが連れて行った。」
「千翠、神崎を出る前に偶然みつけた資料がある。今の俺なら…お前を助けてやれる。協力してくれるか?」
「協力?」
再び視界が暗転した。
「どうだ?」
今度は診察台にいた。どこかの病院なようだ。千翠さんは院内着を着用していた。ダリアさんは医療白衣。近くには注射器、輸血用点滴。
「楽に…なったよ。こんなにも…綺麗な真理は始めてだ。」と片目から涙を一筋流す千翠さん。
「ギリギリだった。おかげで貧血だ。」
「血清成分を除いたO型赤血球を輸血したのか。こんな簡単な事に気付けないなんて…。」と千翠さん。
「俺がO型で良かった。拒絶反応が起こるかもしれないから、しばらく安静にしてろ。」
「えぇ。しかし…良く思いつきましたね。こんな事。」
「神崎の家を出る前に資料が見つかったって話…しただろ?輸血の事が書いてあった。千翠の中にいる真理はそれに気付いて親父を監禁したんだろ。親父の実験を成功させるために…ん?違うな。お前の為に苦労して医師免許をとってやった。金、よこせよ。」
「ふっ…ほんとにアナタは。いつも私から金をとろうとする。」と言って微笑む千翠さん。
視界が暗転した。
あの二人の仲が良い理由が良く分かった。でも、ほんとにミルフィオレって神崎家だらけだったんだ。始めて入った頃は全くわからなかったし、まぁわかるわけもないか。
目が覚めてわかったのは…千翠さんが天竺さんを別の場所へ拉致して、その後アイツに引き継がれたという事だ。アイツの記憶から読み取れるのはこれくらいか。
「居眠りとは良い度胸だな。」と恐い顔をしたShiftさん。その後ろにはシンカさんとシンがいた。
「…もしかして終わっちゃいました?」
「終わったよ。りきとの約束通り薬を飲んでもらったら、ソロモン王が自我を取り戻して悪魔達を引いてくれたんだ。」
「良かった。」
「強くなったわね。りき。」とルナさんがニッコリ笑って褒めてくれた。
俺はただの傍観者だ。何かしてるわけでは…ない。素直に喜べない。
「さぁ!!晩餐を開きましょう!!」とルナさん。
その日の夜の晩餐はとても盛大に開かれた。
水浸しだったアトランティスは氷のクリスタルに囲まれた美しい元の姿を取り戻していた。
その中でも一番喜んでいたのはゴースト属性の人達だ。Mr.DADAさんはずっと泣いていて、ルナさんに向かって女神様…と言って拝んでいた。
気絶していた千翠さんは、気絶中ずっと悪夢を見させられていて、ダリアさんが何やら励ましの言葉をかけていて、メンタルを回復させたそうだ。
言わなきゃいけない事が…あるよな。
天竺さんの居場所…。晩餐が開かれて、みんながわいわいと騒いでる中、俺は千翠さんとダリアさんを呼び出した。
「どうした?」とダリアさん。
「どうかなさいましたか?」と千翠さん。
「お二人に…大事な話があります。天竺さんの居場所について…です。」と言えば二人が目を見開いた。
「…どこに?」とダリアさん。
「海外です。そこには天竺さんだけでなく…神崎家ゆかりの人たちが全員います。」
「なんっ…!?詳しい場所はわかりますか?」
「…わかります。ですが、もうほとんどの大陸は元の建物が取り壊されて全て似たような白い建物だらけになっています。探し出せたとしても中には数年体を動かしてない人もいるから…まともに歩けもしないと思います。」
「俺が指揮をとって救出にいく。俺なら医療面でも指示する事が可能だ。」とダリアさん。
「私も行きましょう。」
「ダメだ。お前はこの世界と本家を指揮しろ。だから現世で俺に権限をくれ。」
「ダリア…。」
「俺は優秀だろ?」
「……そうですね。わかりました。」
「こっちの事は頼んだぞ。千翠。」といえばダリアさんはバタリと崩れるように倒れてしまった。
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