【ロキ】
【ハーデス】は冥界という意味だ。だからこそ住んでる人も黒づくめだったり、を創造してしまうだろう。実際に住んでるユーザーは…身長が俺の腰くらいかあるいは脛くらいかで銀色のグレイ型っぽい宇宙人。可愛さしかない。ギャップが凄いな。ちょこちょこ歩いている姿がとても可愛い・・・そんな宇宙人の人だかりが近くにできていて、近づいてみると小豆餅さんが倒れていた。
【知り合いのようだな。なるほど。ギル員か。】
「どうされましたか?」と尋ねると「この国に着くなり倒れられてしまいました。」と宇宙人の一人が答えてくれた。俺が今体を操作してるわけじゃないけど何故かホッとした。
どうやら小豆餅さんは何らかの任務で【ハーデス】に来たけど、着くなりウイルスにかかって倒れたっぽい。
抗体入り注射器を取り出して小豆餅さんにグサッと刺した。魅惑は消えたようだけど、目を覚ますのには少し時間がかかりそうだ。どうやらグレイ型のみなさんにはウイルスが効かないようだ。
「ところで、みなさんは何にお困りで?俺はミルフィオレの人間です。うちの小豆餅が失礼しました。変わりに俺が引き継ぎます。」
「実は、観光客が襲い掛かってきて困っています。バトル王が平和地帯の設定を何故か解除されてしまい…仲間の何人かがペナルティに…。それだけでなくヴァルプルギス後に親しい人も数名は神隠しに…中には心を失ったかのような人もいるのです。バトル王を我々で捜索していますが全く見つからず…途方に暮れてミルフィオレ様に救援要請したみたいです。」と近くにいた宇宙人の人が教えてくれた。
「少し待ってて下さい。」
頭の中のMAPを覗けば、バトル王はギルド城にはおらず、よくわからないところにいるようだった。
「では、探して平和地帯の設定にしてもらってきます。」
「えぇ!?私達でもわからないのにですか!?」と宇宙人。
「大丈夫です当てがあります。」と言って小豆餅さんを片手で抱きかかえて天馬に乗り走り出す。
浮遊していないと、ついうっかり住民をひき殺してしまいそうだから飛ぶことにしたみたいだ。
しばらくして小豆餅さんが目を覚ました。
「おんやまぁ…ここはどこかいのぅ…。」と小豆餅さんらしいロールプレイングな喋り方だ。
「おはようございます。できれば背中に捕まっててください。」
「前に見た時より大きゅうなってなぁ…。」と言いながら小豆餅さんはモソモソと体を伝って俺の背中にしがみつく。
「この辺にバトル王がいます。小豆餅さんはなるべく…そう俺のマントのようにいてください。」
なんて失礼なんだ…。
「あぃ。わかった。」
いいのか!?
地に降りたつと、顔の整った二人の男女…下半身が蛇の人が一人の宇宙人をとらえていた。
「おや?助けがきたかえ?」と女が言う。
「ようやく来られましたか。」と男が言う。
「国を壊そうだとか乗っ取ろうだとか微塵も考えていなさそうですね。」
「そうじゃ。我と伏羲は早く帰りたいと思っておるからのぅ。」と女が言う。女は男を伏羲と呼んだので恐らく女は女禍なのだろうと確信する。
「そうですとも。龍人の儀式に来る人が訪れるたびに、村に戻され、終わったらここに戻され…散々です。早く我らを倒すものが現れぬかと…。ここを出ようと試みたのですが不思議な力が働いて出れぬのです。」と伏羲。
「助けてくれ…もう数日は飲まず食わずだ…死んでしまう…。」と【ハーデス】のバトル王:アヌビスさんが今にも死にそうな声で助けを求めてきた。凄いデバフの数だ。可哀想に…。
「我も助けてやりたいんじゃが、助けようとすれば体が勝手に動いて攻撃してしまう。なんとも不便。大人しく死んでやろうとしても体が勝手に動いて攻撃してしまう…もうお手上げじゃ。」と女禍さんも悩んでいるようだった。
「そうですか。では…対戦して頂いてもよろしいですか?」
「おお!!やってくれるか!!」と嬉しそうな顔をする女禍さん。
「私らは強いぞ。」と伏羲さん。
太極珠を装備して魔法陣を複数作りだす。女媧さんと伏羲さんから繰り出される攻撃を華麗に避けて魔法陣を札のようにペタっと敵の体に張りつけていき、最後は身動きとれない状態となる二人。
「おお!!素晴らしい!!ここまでやった奴ははじめてじゃ!!」と感動する女媧さん。
「まさか、ここまでやるとは…。」と感心する伏羲さん。
「小豆餅さん、すみませんが、この二人にトドメをさしていただけますか?俺は見ての通り術を使っていて手が離せません。」
「あぃ。わかった。」と言って、ずっと背中に張り付いていた小豆餅さんが地面に足をつけて「えーーい。」力なく発しながらも鉈のような武器をいつの間にかとりだして女媧さんをぶっ刺した。
「いっ痛いのじゃ!!!一発で!!一発で終わらせるのじゃ!!」と涙目で訴える女媧さん。
「注文が多いのぅ。」と言って小豆餅さんは詠唱をし始めた。
物理では体力が多すぎて埒が明かないと思ったのか、魔法でドカッと削ってしまおうと思ったようだ。
数分詠唱してやっと魔法が発動し、二人が無事に倒されていった。
「ふぅー任務完了!」と小豆餅さんはピースする。
そこへ スタっと足音を立ててピンク色の霧のようなオーラを纏った九尾の狐が目の前に降り立った。
すぐさまハクの刀を自分の装備に移し替えて容赦なく九尾を切った。
その瞬間体の主導権が俺に戻った。
「こっちも任務完了しました。」
その後、小豆餅さんはアヌビスさんを救出して皆の元へと返しに行った。
俺は一度アグライアに戻って、空気が正常か確認した後、ラスカンアリーナへ行って、アグライアの住民の皆さんを呼びに行った。
しかしそこにはリーグルさんの姿がなかった。
誰かから話を聞いてギルド城へ帰ったのかと思い、念のためアグライア国内のヘイムダル ギルド城へ行くと入り口にリーグルさんと…もう一人誰か分からない人が向かい合っていた。
「ロキ…どうして私の隣に来てくれなかったのですか。」とリーグルさん。
「隣へ行く意味がわかりません。そもそも自分は何をすれば良いですか?」とロキと呼ばれる男性が言う。
「私の事はわかりますか?」とリーグルさん。
「はい。アグライアのバトル王でヘイムダルのギルド長です。私の幼馴染といったところでしょうか。」とロキさん。
「りきさん、丁度良いところに。」と今にも涙が出そうな顔をするリーグルさん。
「リーグルさん…。」
「友の体は…現実世界のロキの体は…もうないのでしょうか?」
「恐らく…。」
「現実…世界?リーグル…現実世界…そうだ。伝えなければいけない事があります。」とロキさん。
「伝えなければいけない事?」とリーグルさん。
「俺…ここで終わっちまうみてぇだ。もっとお前の隣で…お前と笑って、いっぱい愚痴ったりしてさ…もっともっとお前と遊びたかった。この後の俺はどうなるかわからねぇ…もし俺が俺じゃなかったら俺を殺してくれ。俺はきっともういないから。寂しくさせちまって…ごめんな。それと…もし本当にそうなったとしたら、俺を殺す前にシギュンを解放してやってくれ。です。」と機械的に読み上げるロキさん。
「私は…友を…この手で友を殺さなければいけないのですか…っ。」とリーグルさん。
「リーグルさん…。他に何か方法を。」
すると体の主導権が変わってアイツが喋りだした。
「先程言っていたシギュンというのはAIですか?」
「はい。ロキのAIです。」とリーグルさん。
「では裏技で今ここで…AIの契約を切りましょう。」と言ってアイツが心の部屋でパソコンに何かを打ち込んでいく。
「そんな事ができるのですか?」
「裏技です。どうか内密に。それとシギュンさんを此方に呼べますか?」
「わかりました。」とリーグルさんはスマホを取り出してシギュンさんを呼びつける。
直ぐに目の前にゲートが出て、そこからシギュンさんと思われる女性AIが出てきた。
「シギュンです。」と俺に会釈する。
アイツはシギュンさんにロキさんの今の状況を伝えてから「ロキさんの体を貴女が使ってくれませんか。」と提案する。
「そんな事が!?」
「俺なら可能です。これしかリーグルさん…ロキさんのお二人を救える方法がありません。」
「お願いします。そうしてください。」とシギュンさん。
「シギュン!?そんな…君にそんな…。」
「ロキはいつも貴方の話ばかりしていました。だから…ロキの意志を継ぐ為にも私がロキになります。そして貴方の隣に立ちます。」
「シギュン…。」
「では、シギュンさん。準備は良いですか?」
「はい。」
カチっと心の部屋のアイツがパソコンのエンターボタンを押せば、シギュンさんの姿がタマゴになった。
「……本当にマスターの体に入った…。」と驚くシギュンさん。
「もともとロキさんの体に入っていたAIは、そのタマゴの中に入れておきました。リーグルさん。すみません、考える暇なく、こんな事をして。ですが、俺はリーグルさんにそんな残酷な事をさせたくありませんでした。」と言えばロキさんの体に入ったシギュンさんが、大事そうにそのタマゴを拾って抱きしめる。
「りきさん…貴方という人は…。全く…沢山助けられてしまいましたね。何か私にできる事はありませんか。」
「それなら…。」
もうすぐ2年たとうとしています。何か…できればいいな…。