【龍人族】
ヘイムダルのギルド城の屋上に降り立つ事ができたのは、このヘイムダルが陥落している証拠だった。
普通ギルドハウスはギルドの者以外は玄関以外の外壁に近づくと弾かれてしまう。侵入手段は誰かが開いた人数制限が掛かっていないゲートに無理矢理入る。もしくは玄関から入る。とにかく外にバリアが張られているから中に入ってしまえば大丈夫な仕組みだ。それとバリアにも色んなオプションがあって、ミルフィオレで言えば建物が氷で覆われているから、部外者が侵入しようとすれ30秒に1回3秒凍り付いてしまうらしい。凍り付くし普通のバリアもあれば大体は外から侵入する事なんて不可能だ。
ギルド【ヘイムダル】はかなりのマンモス大手ギルド。まず絶対にこんな屋上にでさえ監視がいるはずだ。人一人見当たらない。屋上から中に入るドアに手をかけると簡単に開いてしまうドア。
不用心すぎる。中に入って階段を下って、真っすぐとある部屋を目指す。アイツの見ている地図にはどこにどの人がいるかまで把握できるようだ。真っ黒で重量感あるドアの前で立ち止まった。
ドアを開けようとすると鍵がかかっていた。数十秒、アイツが心の自室で何かを操作するとドアのロックが外れた。扉を開くと、3畳ほどの部屋に髪の長い人が倒れていた。
抱きかかえてみれば、世にも珍しい龍人族だった。龍人族、俺もなんだそれ?状態だけど、アイツの情報によると龍人族型になる高難易度前提クエストがあって、それをクリアした人のみがなれるという特殊な見た目だ。見た目だけでなく、能力も備わっている。
そんなハイスペックな人がどうしてウイルスに…。倒れている人の名前はリーグルさん。【ヘイムダル】のギルドマスターで【アグライア】のバトル王だ。
魅惑のデバフがかかっているのが見えた、ウイルスに犯されているリーグルさんに抗体を打ってから回復の丸薬を口にいれた。リーグルさんはすぐに目を覚ましてくれた。
「ここは…。あなた…は…。」と低い良い声が聞こえた。
「俺はミルフィオレの幹部、りきです。ここを救いにきました。倒れる前に何があったか教えてくれませんか?」
「倒れ…そうか。私は倒れてしまったのか。ヴァルプルギスが終わった後…あたりか…ユーザーではないとてつもなく美人な妖精がやってきたんだ。堂々と私の前にだ。耳が生えてた。猫のような。尻尾が沢山ついていた気がする…。」とリーグルさん。
「恐らく、それは妖精ではありません。妖獣でしょう。九尾の狐…とかですかね。」
「まさかっ!!あの…言われてみれば…そうだこれはウイルスだ。」と何かに確信を持って少し大きく目を開くリーグルさん。
「何か心当たりが?」
「はい。私が四龍ダンジョンをクリアして人間を捨てる時の話です。もうずっと前の話になりますが、四龍ダンジョンをクリアした私は早速初心者の村で龍人型チケットを買って教会に持って行きました。チケットを所持して教会の祭壇奥の部屋、転生の間で儀式を受ける時です。顔が整った女性と男性が祭壇両サイドに現れて、よく見ると二人とも足がヘビのようになっていました。女性の方が九尾を召喚して俺に幻覚を見せてきました。それは最も愛する者が現れる幻覚でさっきも私が見続けていた幻覚です。恐らくその時の九尾…なのでしょうか?」とリーグルさん。
【はっはっはっ。自分で九尾の話を持ち出して、すっかり忘れていた。龍人族型はそもそも中華の神話から拝借してできたものだったな。男女の蛇は女禍と伏羲。これはより一層難しい話になってきたな。】
名前だけは聞いた事あるような気がするな。
【アダムとイブ、イザナミとイザナギ、女禍と伏羲。どれもヒトを作った神と言われている。実際には宇宙人だがな。】
「リーグルさん。この抗体は毒消しのようなもので、ずっと持ち続けるという代物ではありません。それからこの問題を解決するには別の国から遠隔操作しているラスボスを叩く必要があります。」
「なんだって!?いったいどうなってしまっているのだ。」とリーグルさんは頭を抱える。
「まずは…可能であればアグライアにいる全国民にどこかへ避難してもらう必要があります。ラスカンアリーナにでも全員で避難して、国を鎖国してください。その間に俺がラスボスを倒します。」
「それはわかった。でも説明だけしてくれ。今…どうなっているんだ。」とリーグルさん。
「ヴァルプルギスの後、イベントで使われていたボスや裏ボス、ダンジョンのボス達が一斉に色んな国に襲いかかっているというところからです。ミルフィオレのアトランティスは自ら水害を起こす事によって、襲い来るボスを一時停止状態にしています。それは偶然にできた事のようですが…。【アグライア】も似たような現象が起きている可能性が高いです。丁度真上らへんに存在する国から放たれている妖獣に襲われていますが、本来襲い来る敵は、妖獣によって魅惑で停止している可能性が高いです。ミルフィオレは全国を救おうと動いています。幸い、一度倒されたモンスターが消滅したあと、再び戦闘可能な状態で出現することはありません。恐らく大きなイベントでしょう。」
「いや…私が聞きたいのはそうではない。」とリーグルさん。
「はい?」
「外は…外はどうなっているんだ?」と不安そうに聞くリーグルさん。
「どうして今それを?」
「友人が…私の隣にいないんだ。とても親しい友人で…私に何かあればすぐに隣にきてくれるのです。」
「外は…今、凄く良くはない状況です。友人の方は…無職でしたか?」
「はい、多分。私が拘束されている立場ですからね。」とリーグルさんは寂しそうな顔をする。
「気づいてしまったようですね。恐らくその通りです。俺達ミルフィオレは外でも大きく動いています。まだ生き残っている人達の為にも…今は…。」
「…わかりました。正直に教え頂いてありがとうございます。禁止ワードがいくつかあるので口を開けないのです。」とリーグルさん。
正確には数ヶ所の国は、もう禁止ワードが解除されている。リーグルさんは解除されていない国にいるようだ。
「そうですね。非難をお願いできますか?」
「わかりました。」
「念のため、抗体を渡しておきます。」と言って、喋ってる間に量産しておいた注射器型の抗体をプレゼントにして渡した。
「助かります。すみません、関係のない国なのにここまでして頂いて。」とリーグルさんは立ち上がって深々を頭を下げる。
「顔を上げてください。俺達は本当の意味で救済する為に動いています。」
ギルド城を出るとリーグルさんが全員に届く声で避難指示を出していた。国は鎖国され始めた。俺は鎖国される国をはじめてみた。巨大な鉄っぽい素材の鳥籠のようなものが空からゆっくり降ってきていた。これが鎖国のエフェクトなのだろう。
直ぐに終わらせてあげたいな。
【まさかタイプチェンジのショーで使われていたNPCまで敵になるとはな。真理もなかなかやるではないか。】
どうして感心しているのか。天馬に乗ってはるか上空を目指す。アイツは酸素マスクのようなものを取り出して装着した。これは…この上に位置する国が宇宙をモチーフにしているから、酸素が無い設定になっているそうだ。
ゲートで他国に侵入する時、時々気を付けないとこういったギミックにやられて死亡ペナルティをくらってしまうという事。特殊な世界は基本地上にはあまり存在しない。空か宇宙か海か…アトランティスは地上にある特殊世界に位置するらしい。
次の国に着いた瞬間【ハーデス】と表示された。ここは【ハーデス】国のようだ。しかし…そこには名前とそぐわない謎の生物がいた。
お待たせしましたあああああ!!!ブクマとかありがとうございます!!書けます!!