【魅惑のアグライア】
俺達はシーレナ国を少し見て回って、夜にはデュークさん、モカさん、マリーナさん、ライカさん、護と俺でシーレナ国の中で一番料理が美味しいと有名らしい店で贅沢な海鮮料理を食べて、国やギルドの話をした。次の日もシーレナ国を観光してから自分のギルドに戻った。
ミルフィオレ名物の晩餐、俺は自分の幹部席に座った。俺の隣に、キングアズレイことレイさんが座った。
「久しいな。」とレイさん。
「そうですね。その…元気…でしたか?」
「まぁ…一生あの班には戻りたくないな…。」とレイさん。
あの班とはshiftさんの班だろうな…過酷だって、みんな言ってるしなぁ。
しばらくして晩餐が始まった。
今日もルナさんの席は空席だった。座っていた千翠さんとラートさんが立って「重大な報告がある。」と大声を出した。
今、このギルドは千翠さんとラートさんが二人で声を揃えないと、誰も耳を貸さない…そんな感じに崩壊しかけていた。
ルナさんという最強のカードは一声…僅か一音で皆を黙らせるくらいの威厳があった。
「報告というのは2つある。1つ目はギルド【シュトラウス】ギルド【シースルー】が我がミスティック連合に加入する事となった。」
周りがざわつき始めた。皆口々に千翠さんの文句や幹部に対しての文句…それからミルフィオレはもう終わりだ等々、聞こえてくる。
「静かに!」と幹部達が注意をする。そんな中でもShift班、ルナ班、ラート班は静かに聞いていて、実際Shiftさんとラートさんは自分の班に対して注意は一切していない。
数分してやっと静まってから、ラートさんが口を開く。
「2つ目は……吉報だ。喜べ。」
王宮の間の大きな扉が開いた。シン、シンカさん、そして…ルナさんの姿が見えた。その瞬間「うおおおおお!!!」と大きな歓声が鳴り響く。俺の心も熱くなった。
その大きな歓声の中を通って中央の席に座るルナさん。内心、本当に本物だろうかと何度も疑った。
ルナさんが口を開けば、シーーーンっと静まり返った。
「皆、急に消息を絶ってしまってごめんなさいね。苦労をかけたわね。私は今、外にいるの。車の中よ。敵のサブ本拠地から脱して…今神崎の家に戻ってる最中なの。まだ少し城を開ける事になるわ。私は大手ギルド【シュトラウス】と【シースルー】の連合加入には賛成よ。これでまた、連合は強化される。みんなはそう思わないの?弱気になってはダメ。千翠は確かに腹黒いし悪巧みだってしそうだけれども、もうそれは昔にやった後なの!!!」
皆に雷が落ちたような衝撃が走ったようだ。千翠さんも頭が痛そうにしていた。
「千翠は今は完全に良い人よ。だから信じて。皆がいる家に着くまで待ってて!」とルナさんの声が響き渡った。
次にシンカさんが立ち上がった。
「とまぁ。皆さん何かと不安かと思いますが、やっと此方も色々落ち着いたんで、通常通り色々サポートできる状態です。皆さん安心を。」と言って、シンカさんが指をパチンと鳴らせばテーブルの上に豪華な料理が出てきた。これらは全てシンカさんお手製の料理なようだ。
「良い?みんなちゃーんと千翠のいう事を聞いててね。間違った事を言ってたらシンカが止めてくれるから!全ては…『大いなる目的の為に。』」と言えばカクンと崩れるように倒れ込むルナさん。それを支えるシンとシンカさん。
「現在ログアウトすればあっちに怪しまれるので。裏技で体を残したままにしてあります。」とシンカさんが説明をしてくれた。
立っていた幹部達は千翠さんを残して全員座り、最後に千翠さんが「さぁ、晩餐を始めよう。」と言って座った。
ルナさんの言葉で皆がコロっと意見を変えて「大手ギルドが俺達の仲間になるなんて夢みたいだ!!」だとかそんな話ばかり聞こえてきた。ギルドはルナさんの声で活気づいた。
晩餐が終わって、部屋に戻ろうとすれば「少し良いかな?地下室へ行きながら話しましょう。」千翠さんに呼び止められた。
王宮の間から出て地下室に向かって歩く。水に包まれているせいで息をして良いものかどうか迷ってしまうし、心なしか息がし辛い気がする。
「さっきは驚きました。まさかルナさんが出てくるなんて…。」
「…そろそろギル員達も限界のようでしたから。次の依頼を渡しても?」と千翠さんはホログラム画面を出して依頼を渡す準備をする。
「あ、はい。引き受けます。」
「少し厄介な任務なようです。大手ギルド【ヘイムダル】が治める国【アグライア】に行ったものが行ったきり帰ってこないという事例が多くでています。調査にだしたうちの班員も帰って来ませんでした。国へ乗り込む前に、地下室に着いたら、まずはこの二名をゲートで呼び戻してもらえますか?」と千翠さん。
「わかりました。」
地下室についてから千翠さんに指示に従って俺のゲートスキルを使って二名を召喚してみれば突然襲い掛かってきた。それを千翠さんが赤い玉の数珠のような鎖で縛りつける。
「これは…魅惑ですね。おかしいですね。私の班員がこのような魅惑にかかるなんて。」と言って千翠さんはあれやこれやと魔法や術を使って魅惑を解こうとするが全く溶ける気配がなかった。
「これは厄介ですね。」
「すみませんが、一先ず調査をお願いします。それから、この指輪を。」と千翠さんから指輪が送られてきた。
送られてきた指輪の能力をみて見ると、魅惑耐性とマリオネットの呪いに空間離脱の3つの能力が付与されていた。
「このマリオネットの呪いって何ですか?」
「縛り…とでも言いますか…。そもそも、この指輪は一度はめてしまえば、作成者と初心者村の教会でしか外す事のできない品です。それとは別に自分からギルドを抜ける事や装備譲渡ができないといった縛りの呪いをかけてあります。これは魅惑でギルドを抜けさせられてしまった人が出てしまったから付与させていただきました。」と千翠さん。
「なるほど。」
「りきはミルフィオレにとって国宝です。ですから…魅惑にかかった瞬間に空間離脱が発動するようになっています。解除方法がわかるまで私が作った唖空間に閉じ込めます。」
「その方が安全ですね。俺の武器は強力ですから。」と言って俺は指輪を装備した。
「【アグライア】へのゲートを出します。ご武運を。」
「ありがとうございます。」
俺は千翠さんが出してくれたゲートに入った。
既にピンク色の霧が立ち込めていた。
上空にある国らしく、床がガラスで今にも下に落ちそうな気になって恐かった。これは高所恐怖症だったらショック死してもおかしくないレベルだ。
魅惑にかかったあの二人…大丈夫かな…。
「大丈夫です。」と咲の声がした。前を向くと目の前に咲が立っていた。
「咲?」
「はい。やっと会えましたね。」と咲は微笑む。
「ほんとうに咲なのか?」
「はい。ほら…。」と咲が俺の手を握った。
その瞬間、辺りが見知らぬ宇宙のような空間に変わった。
「ここは…。」
「二人きりの世界です。ここなら時間を気にせずゆっくり喋る事ができます。」と咲。
「待ってくれ…咲は今…現実世界で色々と忙しいはずだ。君は…誰だ?」
「私は咲。貴方の言ってる私は…陽子さん。私はここにいたんです。ずっと。」
「ここに…。」
「そう…、私が花屋さんにいた頃もここから…貴方を見て…聞いていました。毎日私に喋りかけてくれて‥それがどれだけ嬉しかったか。」
「本当に…本当の本当に咲なのか?」
「はい…。りきさん。」と優しく微笑んでから俺に抱き着く咲。
俺は今、生きてきた中で一番幸せな瞬間がきてしまったようだ。
今回は少し分かりにくい文章になってしまっているかもしれません。申し訳ないです。
読んで下さってありがとうございます。