【完成した贈り物】
相変わらずの水没したままのアトランティス。
アイツは俺の体を乗っ取ったまま東屋さんのいる地下室へ直行した。
東屋さんは相変わらず機械に繋がれていた。ゲームの中にいるのにそこで機械の配線に体を繋がれている東屋さんって本当に可哀想だな…。と同情してしまう。アイツも同じく同情しているようだった。
「東屋さん、ちょっといいですか?」
「………嫌です。えぇ。」と東屋さんは呟いた。
「NPCを…自由度の高いNPCを作りたいと思っています。協力して頂けませんか?」
「アンタ…誰です?」と東屋さん。
「りきですけど…。」
「どうせまたAIか何かに体を乗っ取らせているんでしょう?運営側が俺に何を作れと?神崎系列の人間なら、ミルフィオレには腐るほどいるでしょう。」と東屋さん。
「その中でも東屋さんが一番だと俺は思ってます。」
「千翠殿が一番ですよ。えぇ。」と東屋さん。
「千翠…さ…んはもちろん完璧です。その千翠さんは貴方を認めているはずです。追い抜かされると。彼は…千翠…さ、んは指揮能力は高いです、ですが物作りに特化しているわけではない。東屋さんは神崎家の中でも純血で能力値もかなり高いと聞きました。だからこそ、お願いしたいです。それに…千翠さんは今かなり忙しくて会う事すら難しいです。」
「……はぁ。そこまで言うなら?まぁやってあげても良いですよ。えぇ。」と東屋さんは起き上がる。【さっさとやれ。馬鹿者。】とアイツの心の声が俺の中に響いて吹き出しそうになった。
「これが設計図です。東屋さんにしかきっとできません。」といつ用意したのかわからない設計図を渡した。東屋さんはそれを受け取って「ふむふむ」と呟きながら設計図を見る。
「くっ……俺はやると言ったからには、やる男です。えぇ。しかし先程からの俺が一番だとか千翠殿を追い抜かすだとかは全部これ…ただの手の動きの速さじゃないですか…。えぇ。」と東屋さんは恨めしい顔をして此方を見る。
そういう事だったのか…俺はてっきり、本当に千翠さんより頭が良いのかと思った。
「いえ、俺はそんな事思っていませんよ。物作りに特化しているなとだけ。」と作り笑いをする。
「これを作っている間の監視は頼みましたよ。えぇ。」と言って、配線だらけのベッドから抜け出して近くにある机の上に色んな物を取り出しては繋げていく。俺の体はというと、配線だらけの装置をまじまじと眺めた後、実際に体に線を繋いでみる。磁石のように体に付着する線。こうなっていたのかと納得できる。1つ繋げばスノーさんの班員達の行動が監視できる。監視できると言ってもモニターに名前と場所が表示されているだけの映像が流れ込んでくるくらいだ。これを班全員分、東屋さんは見ているのかと俺は関心していたけど、アイツは違った。東屋さんに何かを作ってもらってる間、全員の監視をしながらアイツはもっと効率の良い装置を作っていた。
【昔の…私の生身の体があった頃は全くこいう事ができなくてね。君の体と同期する事で頭のシナプスが鍛えられてできるようになった。】俺の体にそんな潜在能力があったのか。
二日後、東屋さんは「で、できた。」と声を震わせる。
「お疲れ様です。俺の方も出来上がりました。」と更なる図面を東屋さんに渡した。
「こ、これは?」と焦る東屋さん。
「監視…お辛いですよね。監視していても他の事ができるようにプログラムを組んでおいたのと、新装置の図面です。せめてものお礼に。」
「は?え?」と東屋さんはパニック状態になる。
俺はそんな東屋さんを放置して、作ってもらった少女のカタチをした人形の側へ近寄った。
「流石です。完璧だ。」と呟く俺。
俺はその人形の手を俺のデコに当てた。そうする事によって、体の中に匿っていたもう一人の誰かを追い出す事ができる。
人形が突然息をしだした。「ぶはぁっ!!!なん…じゃ?なんなのじゃ!?」とパニックになる人形。
「うわぁっ!!次は人形が動き出した!?は!?え!?」と東屋さんもパニックだ。
「これはシーレナ国への贈り物です。」と俺。
【成功するものだな。五分五分といったところだったんだがな。】
失敗したらどうする気だったんだ?
【適当なワインでも買って送りつけていた。】
アイツは、マリーナさんの武器に宿っていた人間を俺の中に入れて持ちかえって、東屋さんに作ってもらった器に宿り直させた。マリーナさん自身、武器に宿っていた人を娘のように可愛がっていたという事もあって、実際に見て触れれるカタチにしてやろうとアイツは思っていた。それを 贈り物 と呼んでいた。
きっと今頃マリーナさんは寂しがっているかもしれないから早めに届けないとな…。
【俺は少し休む。頭を使いすぎた。報告書を…まかせた。】と言って体が戻ってきて、アイツが完全に眠りに入った事がわかった。
って…報告書を頼むって…本気か??
パニックになっている人形の手を掴んで、「東屋さん!ありがとうございました!」と言ってパニックになってる東屋さんは放置して俺は自室へと戻る。
「うわぁぁ!なんだこの部屋!!外…外なのか!?部屋か?」と人形。
「部屋です。一応見えない壁があるんで、草が生えてないところは気を付けてください。」
「草!?おおー!!草の絨毯じゃー!!」と床でごろごろする人形。
ガチャっと自室の扉が開いて護が入ってきた。
「護!」
「だいたいは聞いてました。大変かと思って。あれがあの人が言っていた贈り物ですか?」
そうか…共有されてアイツの声が駄々洩れだったわけか。
「あ、うん。」
「小さな子供みたいですね。僕が面倒みておきます。りきは報告書に集中してください。」
「ありがとう護。」
護が面倒を見ているうちに報告書を書いて完成したものをメールで送る。
終わって一息ついてから護を見れば、人形が護の腕の中でスヤスヤと眠っていた。
「りき、お風呂にはいって寝た方が良いですよ。寝不足バフがついてます。」と護。
「…そうだな。ずっと起きてたから…急に眠気がきたよ。」
俺は護の言葉に甘えて風呂に入ってからベッドに入る事にした。
次の日、早速シーレナ国へ贈り物を届けにいく事にした。ゲートでシーレナ国のビーチ出てデュークさんを待った。事前にメールは送ったからそろそろ来てくれるはず。
あと、余りにも暴れん坊な贈り物で一人では届けられないと思って、護についてきてもらう事にした。
「あの人は静かですね。」と護は贈り物を抱っこしながらつぶやく。
「連日起きてたから今は眠ってるんだと思う。」
「あの人ってアイツか!?わらわを暗い部屋に閉じ込めよって!!!」と人形。
人形が暗い部屋という部屋は俺にとって青空の広がる草原だ。きっと現実世界の記憶が遮断されていて、心の中の世界を展開できず、暗い部屋になってしまうんだろうな。
「おー!りき!待ってたぜ!」とデュークさんが海からザバッと勢いよく上がってきた。
「デュークさん!」
「あーーー!デューク!!!」と人形は護の手をすり抜けてデュークさんに飛びついた。
「な、なんだ?この嬢ちゃんは…。」と戸惑うデュークさん。
「あーえーっと。マリーナさんにしかわかりません。えっと隣は俺のAIの護です。」
「はじめまして。IA護です。よろしくお願いします。」と頭を丁寧に下げる護。
「こりゃどうも。真面目そうなAIだなぁ!俺のAIときたらガミガミガミガミうるせぇのなんの。」とデュークさん。
「こらぁ!!シャ子とイル子の悪口言うなーーーー!!!」と人形はデュークをポカポカ叩く。
「イテッ!!イテッ!!!やめろって!!おい!りきっ!コイツはなんだ?どうして俺のAIの名前なんか知って………ん?……お前…なんだか…。」とデュークさんはジッと人形を見つめる。
毎週日曜日絶対更新するマン。頑張るマン。序盤を乗り越えてここまで読んでくれる方は猛者です。本当に頭の良い、素晴らしい人だと思います。稚拙な文章で申し訳ないです。それでも私は私の頭の中の戦争を終わらせに書きに来たんです。最後までどうか、よろしくお願いします。読みに来てくれて本当にありがとうございます。感謝です。