【サモンゲート】
ラートさんとシンさんとシンカさんとパーティーを組んで初心者の町へ行った。
「すみません。さっきの戦いのショックで休みたいかもしれませんが、先にAIをつける事が最優先なんで。」とシンカさんに言われた。
「いえ、咲の為なら…。」
「咲?」
「あ…僕の欲しいAIの名前です。…って言っても僕が勝手にそう呼んでるだけなんですけど。」
「AIは…AIをゲットした時、直ぐに名前をつける事が何よりも優先されます。だから真っ先にその名前をつけてあげると良いですよ。」
「はい。」
町の人々が此方を見ていた。
「あの…なんか…見られてる気が…。」
「あぁ…ラートさん有名人だから。」とシンさんが教えてくれた。
「しかし…ヒルコめ。やってくれたな…。」とラートさんが静かに怒っていた。
「えっと…ヒルコさんってどういう人なんですか?」
「…現実世界でライバル会社の社長だ。あれに対抗できるのはルナか俺か俺の班の副官デリックか千翠しかいない。アイツとのタイマンは勝っても負けても大損だ。」
……てことは…ラートさんきっと…どっかの会社の社長さんなんだ。
「千翠さんもどこかの社長なんですか?」
「リアルの詮索はハラスメント行為ですよ。」とシンカさんに言われた。
「あ…すみません。」
無事にムーンバミューダ社でチケットを購入できて、ついでに必要な物を買いそろえてすぐにギルドハウスに戻った。
「おかえりなさい。ラートはもう離れてOKよ。」
「あぁ。」と言ってパーティーが解散されてラートさんはゲートを開いて消えていった。
「さて、これからだけど…罰を消す為のクエストが現実世界の1年に一回だけあるの。…ヴァルプルギスの戦場で1位をとれば1位報酬で罰が一回消える。」
「ヴァルプルギスの戦場…ですか。」
「ええ。よく聞いて…起きたらまず…携帯の電源を切るの。これで勝負は挑まれないわ。」
「え…そうだったんですか!?」
「そうよ。だって…このゲームは携帯ゲームだから。それから…現実世界でAIチップを貰ったら、一度携帯の電源を入れてAIチップをすぐに読み込ませておきなさい。その後家に帰るまで絶対に携帯の電源をいれない事。」
「チップって直ぐに読み込めるものなんですか?」
「えぇ。チップって名前だけど実際はメモリで充電器を刺すところに刺せば読み込めるそうよ。読み込みが終わったら自動で【リアル】が開かれてAIを追加しました。って画面がでるはず…そこで名前をつけて電源を切るのよ。」
「わかりました。」
「あと…AIのレベルが3以上なら…勝手にそのAIとパーティーが組まれてる状態になるわ。」
「…なるほど。」
「すぐにログアウトしてしまいたいでしょうけど…ログアウトする前に…夜組の終業式見ていってちょうだい。現実世界の23時の夜がその日よ。」
「ま、長い時間をギルドハウス内で過ごすことにはなりますけどね。」とシンカさんが言った。
「えっと…今ログアウトしても寝付けないと思いますから…見ていきます。」
「じゃあ、しばらくよろしくお願いします。」とシンカさんからパーティー招待がきて、シンカさんとパーティーを組んだ。
「よろしくお願いします。」
「まぁ、自分一人じゃとても…ヒルコの手下に勝てる気しないんで…さすがにルナ班の誰かをつけますけどね。」
僕は数に入ってないんですね…。
「…待って。もう一人だけ…ヒルコにも手下にも勝てそうで暇してる幹部がいるわ。」
「え?…あー…なるほど。全く試した事ないですけど…確かに一人いますね。暇って言い方したら怒りそうですけど。」
「えっと…誰ですか?」
「……ルナが人間の中で一番愛したと言われる人です。面白いから内緒にしときましょう。」
「えぇ!?」
「シンカ……今からその情報を最重要機密扱いにするわ。あと…今日はシンと寝る。」
ルナさんは怒り筋をたてていた。
「クスッ。珍しくルナを怒らせたね、シンカ。」とシンさんがニヤリと意地悪な顔をする。
「ルナ…誤解です。…これは…嫉妬です。……許して下さいルナ。」
「ふーんだ。」
………えっと…僕はこの茶番をいつまで見てればいいんだろう。
「大丈夫?部屋で休んだら?」とシンさんが声をかけてくれた。
「だ、大丈夫です(汗)」
「………冗談は置いといて…真面目な話、シンカはりきの側についてて、シンはしばらく私の護衛。私の大事な大事な片時も離れたくないAIをつけてるんだから…安心してこの世界を楽しみなさい。」
「え……あ…ありがとうございます。」
「…はぁ。ギル員にスパイがいた場合…もしくは金に目がくらんでヒルコ側についた人がいた場合…りきさんをヒルコの待つ部屋へゲートで放り込んだり誘い込んだりする可能性があります。だから終業式までの間共に行動しろという事です。」
「あ…そうだったんですね。すみません。」
「いいのよ。シンカ晩餐の用意をしてきなさい。りきもそれについて行って。」
「わかりました。」とシンカさんと僕がハモってしまって顔を見合わせた。
ルナさんの部屋を出て大広間に入って、大広間の中の小さな扉を開けて入ってみると…12畳くらいの部屋で…中には冷蔵庫っぽいものがびっしりおかれていて…その真ん中に大きなテーブルがあった。
部屋の名前は厨房…
「りきさん、邪魔になるんでそこの椅子にでも座っててください。」
「はい。」近くにあった椅子に座った。
シンカさんは冷蔵庫をあけて食材を取り出し、テーブルの上に並べて…スマホをいじって包丁をとりだすとシンカさんの右手元横にホログラム画面が現れた。包丁の先で食材にタッチして手元のホログラム画面をタッチすると、タッチされた食材が料理に変化した。一度で5個同じ料理ができたり…2個しかできない時もある…ランダムなのかな?とにかくそれを素早い動きで何度も何度も繰り返す…できた料理は次々と部屋に入ってくるルナさんに似たAI達が運んでいく。
「現実世界の料理って…もっと複雑なんですよね?」
「え…あ…はい。僕にはさっぱりなくらい。」
「ふーん。この世界の料理は…料理スキルを上げた人にしかわからない事なんですが…上限値に達したら上限値達成報酬に複雑なパズルがもらえます。もちろんホログラム画面上のパズルですけど…種類は様々…それが見た目として繁栄されるようになります。つまり…上限値以下は…運営の考えたデフォルトの見た目料理ができるんです…。」
「なるほど…それって、一度組み合わせたら保存とかして…次から同じ見た目の料理が出せる…とかそんな感じなんですか?」
「はい。そうですよ。何千種類も料理あるんで…登録に凄い苦労しました。あ、まだ全部登録できたわけじゃないですけど。」
シンカさんはどんどん料理を作っていく…
そういえば…僕も…ゲートに全部振ってしまおう。
達成報酬に何がくるんだろう?ゲートに全て振って上限値に達すると…
[ゲート達成報酬 攻撃スキルを獲得しました。:サモンゲート]
「サモン…ゲート?」そう発音すると僕の背後の空間が裂けてゲートができて…そこから…スノーポークさんがでてきた。
「……なん…だと?」と…とても驚いた声だった。
スノーポークさん…声が凄い重低音だ。紫を極限まで黒くしたセミロングの髪…顔には目だけ隠れる仮面をつけている…目の部分は青く光っていて…深紫のマントをつけていて…中の服装は黒色のコートみたいなのを着ている。
「は。なんでここに…。」とシンカさんは手を動かしながら驚いていた。
「ゲートを…上限値まで振ってみたらサモンゲートってスキルを獲得したみたいで…」
またもや背後の空間が裂けて…今度はshiftさんが…
「は?おい、ふざけんなよ。どうなってんだよ!!!」
いきなり怒りくるってるshiftさん…
「シンカさんどうしましょう…。」
「えぇ…また面倒事を増やして…えー…っと、あ、でも丁度良かった。タクミさん、後でルナからも声がかかると思うんですが、しばらくりきさんの護衛手伝ってもらえませんか?」
「は?嫌だけど。」
「ま。そうなりますよね。」
……内緒にしとくって言ってた人って…shiftさんか。てことは…ルナさんとshiftさんって…どういう関係なんだろう?
「ん…俺じゃダメなのか?」とスノーポークさんが前に出てきた。
「ヒルコに勝てるかどうかなんで…。」
「あぁ…そういう事か。タクミ、ついててやれよ。ギルドの命がかかってるようなもんだろ?」とスノーポークさんが気軽にshiftさんに話す。
「こんなガキにギルドの命ねぇ。シンカから言われると嫌だけど、ユウキが言うならまぁ…いいか。」
スノーポークさん…ユウキって名前なんだ…。
「で、なんで俺はここに?」
「あぁ、りきさんゲートに全振りして上限達成報酬でサモンゲートってスキルを習得したそうで、発音するだけで誰かを召喚してしまうみたいですね。」
「まじかよ!!このクソガキ!」
とshiftさんが僕に怒鳴ってきた。
「す…すみません!!」
「面白いスキルだな。ランダム召喚なのか?試してみようぜ。」とスノーポークさんが少し楽しそうに言う。
「はんっ。次の犠牲者が見ものだな。」
いつの間にかshiftさんがパーティーに加わっていた。
「…サモンゲート。」
次に僕の後ろから現れたのは…
「え…ここ…夢か?」
ログアウトしてたはずのガウルさんが現れた。
「は?…ログアウト…してましたよね?ガウルさん。」
「あぁ、寝ようと…横になって…ウソ…だろ。」
「は?何?…ログアウト者も強制召喚か?チートスキルじゃねーか。」
「す、すみません、ガウルさん!僕のスキルで召喚しちゃったみたいです。」
「……え。」
「ゴホンっ。とにかく。ギルド員限定みたいだな。どんどん行こう。」
「いかないでください。邪魔なんで大広間でやってもらえますか?」とシンカさんが…静かに怒る…。
僕とスノーポークさんとshiftさんとガウルさんは大広間に戻って、しばらくサモンゲートで遊ぶ。
ギルド員が次々に召喚され…召喚するたびに上限の上限値が+1されていく…。
わかった事はギルド員のみだと思ったら詳細設定で色々決めれたという事。
でもフレンドかギルド員かNPCかで…ランダムな事には変わりないようだった。
晩餐が終わった後、シンカさんに練習試合をしてもらって、バトル中にも召喚が可能か実験をした。
召喚はできても、召喚された人は攻撃に参加できないようで…ギャラリーを呼ぶためのスキルですねとシンカさんに言われた。
シンカさんと一緒に部屋に戻った。
「…ふっ…あははははっ!!いや、知ってはいましたけど…なかなか可愛い部屋ですね。」
「酷いですよ!」
シンカさんはバスルームを覗いた。
「へぇ…薔薇風呂。入ってもいいですか?」
「どうぞ…。」
目の前でシンカさんが裸になった。すると…ビッシリと中二心をくすぐるような刺青が入ってあった。
「…え。なんですか?その刺青。」
「…何って…体力が30%を切ると魔王になる特殊効果つきの1億する下着です。」
「一億!?」
「相場はそれくらいのはずです。まぁ…ルナのドラゴン化と似たようなもんです。自我を無くしたりはしませんよ。」
「…………。」
「じゃ…お先。」
僕は一億という数字を受け止めきれず…立ち尽くした。
このゲーム…こわい。
そのあと…しばらくアイテム整理をしていると…シンカさんがバスルームからでてきた。
「お先でした。」
シンカさんのパジャマは真紅のバスローブのようだった。
きっと…それも高いんだろうなぁ…。
僕が次にお風呂に入って…出ると…シンカさんはベッドで先に眠っていた。
AIが人間のように眠るって…なんだか新鮮というか…人間と変わらないというか…
「まだ起きてますけど。何か?」
突然目がパッチリあいて驚いた。
「い、いえ。」
僕もベッドに入った。……男二人で1つのベッドって…酷い絵面というか…。
「寝る前に一つ質問良いですか?」
「は、はい。なんでしょうか。」
「現実世界の体と…この世界の体って…どう違うんですか?」
「あー……違いは…あるといえばありますし、ないといえば無いんですが…何かの薄い着ぐるみに入った感じ…ですね。」
「この世界が着ぐるみ…ですか?」
「はい。目とか…鼻とか…髪もですけど…二次元だなぁって、感じなんで。」
「へぇ……。そうですか…。なるほど…。」
他に表現しようがなかった。
最初【リアル】に入った時…違和感でしかなくて…慣れるのにゲーム内時間で3日間くらいはかかってたような気がする。
「…シンカさん?」
・・・・って寝てる?
まぁ…いいや。僕も寝よう…。
早く…咲を迎えに行きたいな…。