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RealSocialGame  作者: 無月公主
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【永久。愛の犠牲。】

ロボットの誘導もあって陽子達は上手く脱出して、施設から少し離れた場所に大型の車が数台待機していて、それに乗り込む人々。どの人も歩行困難で、何度もコケたりしていて見ていてかなりハラハラした。

全員が乗り終えると俺の隣にアイツが帰ってきた。

「終わったのか?」

【あぁ。無事に目的は果たせたようだ。】と言ってぎゅっと手を握りしめていた。やるせない感情が伝わってきた。

「これだけの事が起これば・・・【リアル】じゃ凄い時間たってそうだな。」

【そうだな。】

どうやら、あの基地にいる人達しか救えないようだ。アイツからの情報によれば、難解なセキュリティを突破するには陽子だけでは限界があるそうだ。同時にいくつもの計算をしなくてはならない。

東屋さん、千翠さんがいないとどうにもならないみたいだ。それに車の台数も足りてない。

「ん?お前が全部解除すれば良かったんじゃないのか?」

【次からはできるだろうな。だが、小さな日本の島国にある基地を救ったところで・・・世界中の基地は助けられん。同時に助けるという事ができなければ混乱を招くだけだ。今、もし全員が目覚めてしまえば電気や水といった・・・人々が当たり前に使っていたもの全てが使えない世界だろうからな。それに、死んでも良いから【リアル】に残っていたい奴もいるだろう。今回の目的はあくまで神崎月子の奪還と・・・・・・私の本体の奪還だ。運よく神崎家の人間、シンカまで手に入った。】と淡々と語るがアイツは辛そうだった。一刻も横になりたいと…心の奥底で叫んでいた。

察して俺は「戻ろう。」と声をかけた。

【すまないな。】

基地から脱出する際に、沢山のロボット達と戦って陽子達を守ったアイツは、攻撃をかなりうけていて、それがそのまま精神的ダメージとして残っているようだった。痛くもないところが痛いといった症状がでていた。正確には痛い気がするだけなんだろうけど。

「お前なら無痛とか持ってそうなのにな。」

【無痛ならあった。君との繋がりで無くなってしまっただけだ。】

「…なんかごめん。」


目を覚ますと【リアル】の中にいて、俺の中のアイツが完全に眠っている感じがした。

起き上がってベッドからでた瞬間に後ろから誰かに抱きしめられた。

体がビクッΣとなった。でも花の香で咲だと気付いた。

「さ・・・咲?」

振り向こうとすればスルスルと溶けるように解かれてドサッと音がして咲がベッドに横たわっていた。

「え?…バグか?」と問うてもアイツは完全に寝ていて答えが返ってこない。

とりあえずベッドに寝かせ直して布団を被せて部屋を出た。


「りき?」と声をかけられた。目の前には・・・見事なイケメンのお兄さんがいて誰かと思ったけど、声が護だった。

「護?どうして姿が・・・。」

「りきやルナさんが眠ってから・・・凄い時間が経ってるんです。僕は歳をとらない薬の飲み忘れてしまうほど子供達をみるのに忙しくて…。」と死んだ魚のような目をする護。

「そっか…そうだよな。ごめん。時差に少し頭が追い付かないけど…。」

「リオさんが引きこもりで全く部屋からでなくなってしまって、僕に全てがきてて・・・最初はこなしてたんですが、段々処理が難しくなってきてしまって千翠さんに相談したんです。そうしたら昨日、リオさんの変わりの幹部にキングアズレイさんがつきました。」

「え?レイさんが・・・はははっ。それは心強いや。」

「はい。おかげでこうして時間が少しできて部屋にいたんです。」

「ごめん、かなり苦労かけたよな。」

「いえ、千翠さんから事前に聞かされていたんで…でもリオさんが引きこもりになってしまうなんて思ってなくて・・・。」

俺はスマホを取り出してホーム画面を見て見ればメールが一件届いている事に気付いて開いてみた。

「リオさんからメールが・・・幹部達の練習試合後に届いてる。」

「え!?」と護は酷く驚いていた。

俺はとりあえずメールを開いてみた。長文メールだからホログラム画面をだして護にも見えるようにした。


『俺はこの試合で気付いてしまった。俺がここにいるべきではない事を。俺がこうして自我があるようにりきにメールが出せるのは、生前書いた自分宛の手紙のおかげだ。俺は千翠さんが愛してやまないルナに手をだしてしまった。だからいつか殺されてしまうのではないかと内心ヒヤヒヤしていた。正直好きになったもんは仕方ねぇって思った。でも、時に感じる殺気が本物だったから死んだ時の為にな。死ぬ前の俺は頭がそんなに良くなかったから考えもつかなかったが、このまま過ごしていると俺が俺ではない何かになって、みんなを傷つけるんじゃないかって恐いと感じた。これも自分宛の手紙のおかげでギリギリ感じる事ができてる。だから・・・今のうち自分を動けない状態にする。個人ダンジョン永久(とこしえ)に籠る事にした。無制限、いつでも退場化のダンジョンだが・・・籠るには丁度良いだろう。完全なAIと化した俺に課せられた・・・生前の俺が今の俺に化した任務だ。俺に・・・AIが残っていれば・・・良かったのにな。後は頑張ってくれ。子供達の事・・・よろしく頼む。俺は生前凄く可愛がってたんだ。子供が好きでな。今の俺は無駄な時間を過ごしているくらいにしか思えない。永久の戦いを楽しんでくるよ。りき、ルナを救ってやってくれ。それともし・・・俺を殺せるのなら…【リアル】が終わった後でも何でも良い・・・終わらせてくれ。』


「なんて…なんて自分勝手なんだ。」とボタボタと大粒の涙が流れてしまった。護も一筋の涙を流していた。

「リオさん…もう本当にいなくなってたんですね。」

「許せない奴は沢山いる・・・沢山いるっ・・・けれども・・・。今は・・・考えちゃ・・・考えちゃダメだ。前にだけ進まないと・・・千翠さんがどれだけ憎くても・・・今は力が必要だ。」と自分に言い聞かせて涙を止める。

「そうですね・・・。」

しばらく涙を止めるに時間がかかった。リオさんとの沢山の思い出が流れ込んできて、どれだけ涙を止めようと思っても・・・次から次へと溢れてくる。護がトントンと背中を叩いてくれていた。そんな護ももちろん泣いていた。



完全に涙が止まったのは1時間後だった。


「今の状況を確かめよう。」

「驚かないで下さい。あの幹部試合の前・・・千翠さんにギルドリーダーが移っていて、氷の国アトランティスは・・・水没してしまいました。」と言って護が自室の扉をあければ小魚が廊下を泳いでいた。

「え?息はどうするんだ?」

「できます。それと、この水はもともと氷だったものです。どうやら国の地形はマスターのメイン武器に依存するらしく。千翠さんは水を留めておくので精一杯らしいです。水を抜けば次に氷にする時同じカタチにならない可能性があると言ってました。外からみれば球体の水の中に国があるように見えます。」

「そうか。ルナさんが神崎の屋敷に戻るまでの間ずっとこうなんだろうな。」

「無事奪還できたんですね。」

「うん。」

「まずは千翠さんに会った方がよさそうです。」と護。

「わかった。会いに行こう。」

俺は恐る恐る息を止めて部屋から出てみた。目を瞑って息をすれば普通に呼吸ができて目を見開いた。目では水の中にいるのに感覚は・・・何もなかった。ただのエフェクトに近い感じか?

少し歩いていると「くそっ!!」と声がして、黒髪の男の人の後ろ姿がうつった。その後ろ姿と声には聞き覚えと見覚えがあった。

「Mr.DADAさん?」と声をかければふり返ってくれて、仮面も何も装備していないMr.DADAさん本体だった。

「りき・・・なのか?久しぶりですね。」

「お久しぶりです。何してるんですか?何も着てないなんて珍しいですね。」

「ゴーストで壁をすり抜けようとしたら、小魚の群れがタイミング悪くきて流されてしまいました。」

「あ…ゴーストにはこのエフェクトのような魚たちの影響をうけてしまうんですね?」

「そうなんです。この数年間悩みでしかない。早くルナ様に帰還して頂かないと、ストレスでどうにかなりそうです。」

「まぁ、もうすぐ戻られるとは思いますよ。」

「だと良いですけどね。私はこれで失礼しますよ。任務が残ってますから。」

「はい。」と返事すれば後ろから小魚の群れがきてMr.DADAさんが凄い勢いで流されていってしまった。

「ストレス溜まりそうですね。」と護が呟いた。

「とりあえず千翠さんに会いに行こう。」と俺達は千翠さんの部屋がある方へ歩いていく。

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