【ルナ奪還作戦。】
綺麗な芝生。高すぎて見えない天井。ベンチには大勢のギルメン。幹部達が座ってる席に咲と千翠さんの姿がなかった。水無月さんも見えないな。流石にルナさんの中に戻ってるって事かな?
目の前にはルナさん。なんだか…最初にこの世界に来た時の事を思い出す。
ドラゴンになったルナさんにコテンパンにされたっけ。
「なんだか懐かしいわね。」とルナさん。
「そうですね。今の俺は…強いですよ。」
「私も…負けないわ。」
試合が開始して、すぐにルナさんの体が光って、オレンジ色の鹿のような角がはえて、ドラゴンの尻尾らしきものがお尻から生えていた。腕から下にかけて黒紫色の鱗を纏って、手は鋭い爪がそなわった完全に人からかけ離れた手をしていた。胴体だって皮膚の半分は分厚い頑丈そうな鱗で覆われている。半分だけ人の姿が残っているような感じか。目は爬虫類だ。
俺もアイツと変わった。千翠さんと咲がいないからやりやすい。
【そう、仕組まれているからな。】と言いながらハクの装備から刀を剥がして装備する。
ドラゴン化しているルナさんの右手には斧の姿のシンカさん。盾の姿のシン。
アイツは地面を蹴って宙を舞い、ガンっと重く鈍い音をだして斧を攻撃した。そのまま二連撃斧を攻撃する。大きな盾が斧側に移動してきたのを見て、一度距離をとる為に地面に着地すれば、ルナさんは手をかざして黒紫の炎を地面に放った。俺じゃ絶対ありえないような速さで炎をよける。アイツは俺の器の限界のスピードでルナさんの斧に数撃、打撃のような重さの攻撃をする。
アイツの狙いは斧の破壊らしい。前にルナさんの戦ってるところを見た時…確か斧が意志を持って攻撃してたっけ…今少し鈍い気がするし、アイツの速度に反応できてない気もする。
【恐らく、女の方だろうな。奴にしては鈍すぎる。】
なるほど…。
【しばらくコレをみておけ。それから私に合図してほしい。】
は?何言って…。
瞬きすれば俺は空に浮かんでいて落ちるかと思って、体をばたつかせた。
落ちない事がわかって、下を見れば白いドームがいくつもあった。ドーム以外には木々が見えるくらいだ。でも…この…。さらに上へと思えば体が上に浮上した。
いや…違う。なんだ?これは…外…なのか?現実世界…なのか?どこの世界だ…!!でも、でも、この島のカタチは…日本…?
俺が知ってる日本じゃない…きっと過去でもない…また異世界なのか?
嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ…。こんなの…これが今の現実世界だっていうのか?
アイツと意識が繋がってるせいで、俺の疑問は過去を思い出すかのように答えが浮かんでくる。
肩にそっと手があたって振り返れば咲がいた。
「陽子…?」と問えば首を左右にふった。
「私は…咲です。」と陽子さんの声だけど、静かな感じで落ち着いた声。
「咲…。ショック過ぎて…また呼び出しちゃったかな。」
咲は静かに微笑んで俺の手をとって「行きましょう。」と言って俺を導いてくれた。
日本だけじゃない…世界が…木と白いドーム型の建物だけになっていた。マンションやビルは全て無くなっていた。
ドーム型の建物の中に近づいていって、ぶつかる!と一瞬思って目を閉じて目をひらくとドームの中にいるようだった。体が透けたのか?
黒いスーツを着ていて、何か特殊な眼鏡をかけている人が5人いて、廊下を走っていた。その中には…髪の毛を綺麗に帽子の中にいれて、黒いスーツを着た陽子がいた。なんでこんなところに…。
咲に手をひかれて5人についていく。
すると一つの部屋の前に、少し顔に幼さが残る男性が立っていた。その顔には見覚えがあった。シンカさんだ。
「自分がシンカです…・・・・・・ルナを…月子さんを助けてください。ここにいるんです。この部屋に…糸が切れた一瞬がチャンスです。ダミーも用意しました。」とシンカさんは目からポロポロ涙を流して言った。
「うん。一人で良く頑張ったね。まかせて、プロだから。」と陽子さんが言えば、シンカさんはドアをあけた。
横たわるルナさんは陽子と違って成人女性体型で黒い髪が綺麗に結われていた。恐らく持ち運びやすいようにシンカさんが長い髪を結ったんだろうなと推測できる。
陽子がパソコンに接続して、何かをパソコンにつないでカチャカチャとキーボードを打つ。
それから深呼吸をして「りき…お願い。」と呟く陽子。
「頼む。」と言えば俺の視界が元に戻って、アイツが凄い速さでルナさんの体力を削り切った。よく見て見ると、斧も盾も無くなっていた。傷だらけのルナさんに刀でトドメの一撃をさした。
その瞬間練習場がざわついた。俺が勝ってしまったからだ。恐怖の声すら聞こえてきた。
俺の中のアイツの気配が消え去った。
動揺していると千翠さんがパンパンと手を叩きながら現れた。
「途中で制御がきかなくなったルナをシンカが止めたそうだ。今連絡が入った。騒がないように。」と千翠さんが言えば場は静まった。
気を失った状態のルナさんを千翠さんがお姫様抱っこして「…りき、よくやった。」と一言言って去って行った。
護が駆け寄ってくれて「一度部屋に戻りましょう。」と言って俺を部屋に連れて行ってくれた。
ベッドに寝転んで目を瞑った。
きっと全てをみられるはずだ。
ルナさんを抱えて走るシンカさんの姿だ。俺がそれを見ていると隣にアイツがいた。
「どこに行ってたんだ?」と聞けば「ここだ。」と答えた。
どうやら陽子さんを見ていたようだ。どこまでも深い愛を感じた。アイツの中で唯一まともな感情だ。
「陽子は私を軽々と超えていく。」
5人のうち1人がはぐれて、シンカさんとルナさんと一緒にどこかへ向かった。陽子と他二人は別室へ走っていった。俺はアイツの後ろについていく。
「そうか…ここは本部か。」とアイツが呟く。
「本部って…お前の部屋があるところか?」
「まぁ…そうだな。」
しばらく進めば部屋があって、そこへ入ればカプセルのようなものがあって、陽子がそれに触れればホログラムキーボードがでてきてポチポチと入力をしてカプセルをあけた。
中にはやせ細った人がでてきた。体に繋がれた線を全て丁寧に素早く抜いて頬を叩けば、目を覚ました。
「…ぁ…ぅ…。」と上手く声が出ないようだった。
「思ったより状況が酷いね・・・先にでた人と連絡をとって増援をお願い。私は・・・全てをあけてくる。」と陽子が言えば頷く二人。
二人のうち1人が残って、大きな黒いバッグを背負った男が陽子と共に移動してカプセルをあけていく。
しばらくして最後に辿りついた部屋は・・・アイツの部屋だった。
そこのカプセルは少し大き目の金魚の水槽くらいの大きさだった。
陽子と共にきた人が背負っていたバッグを降ろして、陽子はバッグをあけて線やら何やら色々と取り出した。
それをカプセルに繋いだ。そして元ある配線を丁寧に外していく。
「何が入っているんだ?」と問おうかと思ったが、その答えはすぐに頭に浮かんだ。アイツの脳みそだ。
大きなバッグからロープを取り出して、それをカプセルにとりつけて持ち運びできるようにして、男はそれを背負う。
「行こう。」と陽子が声をかけると「ビー!ビー!」とサイレンが鳴り始めた。
部屋を出て廊下を走っていると、ロボット達が陽子さんや人に銃を向けていた。
隣でアイツがホログラムキーボードを出してカタカタを打ち込めばロボットはバタバタと倒れていく。
「…・・・そこにいるの?」と陽子がいえば、俺の隣にいたアイツが消えて、倒れているうちの一体のロボットが立ち上がった。そのロボットは陽子達を誘導するかのように動き出した。
俺には分かる・・・今ロボットの中に入ってるのはアイツだった。
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