【高速デコピン3万回】
「千翠さんに勝てたからって…俺に勝てると思わない方が良いですよ…えぇ。」
東屋さんとの試合開始前。東屋さんは不気味に笑う。
「どういう意味ですか?」
「お答えしましょう。この地形においては俺は一切攻撃はしないで勝つ自信があります。えぇ。結界を張って、その範囲を広げていけば良いだけなのですから。」
【即刻壊してやろう。】
アイツの言葉で吹き出してしまった。
「ん?何を笑っているんです?…まさかこの俺の無敵の結界を貫けるとでも?」と東屋さんは眉をひそめる。
俺の体はもう既にアイツが持っている。俺とアイツの頭や記憶はほぼ共有されているに等しい。
少なくとも俺の記憶は筒抜けだ。だから俺に成りすます事もできる。
「俺にも新技があるんです。春風のタクトに宿るAI達が頭のアシストをしてくれるんですよね。だから俺の頭じゃなくて、東屋さんにはAIと戦ってもらう事になります。俺はただ、体を貸すだけです。」
「憑依・・・憑依なのか?」
「憑依・・・ではありませんよ。体を動かすのは俺なんで。」
「神託のようなものか。」
「…そうかもしれませんね。」と俺の顔は笑った。おいおい、俺はここで笑ったりしない。ちょっと性格悪そうっていうか腹黒そうな男子みたいになってるけど…。まぁ…違和感はないか。
試合が開始して、俺はすぐに黒い煙幕をまいた。それは濃い霧のように会場を包む。
淡い青白い光がふよふよと彷徨う。東屋さんが結界を張っていた。手から数字や漢字‥マントラが出てきて空中浮遊する。かなり集中しているようだ。
太極珠を装備している右手で浮遊する光を握り潰した。その後、俺の手から手のひらサイズの魔法陣が浮かび、それを俺の首の斜め後ろに押し当てた。この一瞬だけイケメン男性の首が痛いポーズをとっていた。東屋さんに向かって突き進むと壁があって、それに触れると体力が少し削れてしまった。
アイツは何か魔法陣のようなものを手から浮かびあがらせて、それを結界におしつけた。
すると結界に穴があいた。手のひらくらいの円形の穴だ。東屋さんは、その穴に気付かずに結界を広げていくような動作をしていた。
次にまた新たに魔法陣を作って、今度はそれを地面に押し当てた。すると、地面にその魔法陣が焼きつけられて、東屋さんの手からでる文字やら数字やらはその魔法陣に吸い込まれてしまう。
それでも東屋さんは事態に気が付かない。それは多分この黒い霧のような煙幕のせいだろう。
それからアイツはオシャレを意識して手のひらサイズの穴を開け続けた。
「どうだ?」と一言。
俺には凄いのかどうかさっぱりわからない。
【ふむ、そもそうだな。ならこうしよう。】
また魔法陣を作って、今度はすぐに押し当てたりせずに何かを魔法陣に付け加えているようだった。魔法陣の中にわけのわからない記号がたくさんついていく。それを結界に押し当てると結界が縮まって、ついには東屋さんの体をぎゅっとしめつけた。
「っはっ!?そ、そんな馬鹿な!!!」と驚く東屋さん。結界作りに夢中になって周りをみていなかったようだ。急いで結界を解いて結界を張りなおそうとしたが、手のひらから湧き出る光は空しく先程地面に設置した魔法陣に座れてしまう。
「は・・・・・・はい?」と唖然とする東屋さん。
アイツは東屋さんで遊ぼうと思っているみたいで、東屋さんが次の行動にでるのを大人しく待っていた。だけど、あまりにも呆然としていたので、ゆっくり近づいてデコピンをする。
東屋さんの体力が2削れた。
「いたいぃん・・・。」と変な声を出しながら我に返る東屋さん。
「すみません、AIが・・・強すぎましたね。」と言う俺・・・いやいや、挑発というか嫌味言い過ぎだろ俺!!
【あぁ、すまない。あれだけ最初に言ってたものだからな。】
東屋さんはぷるぷると体を震わせた。
「良いでしょう・・・俺の本気を・・・お見せ致しましょう。えぇ…よくも・・・煽ってくれましたねぇ。はい。後悔すると良いでしょう!!!」と言って東屋さんの目が赤色に光った。
これはナイトメアタイムでも使う気なんだろうか?俺も悪夢を見るのか?
【少し目を閉じておくと良い。君の空間から私を見ていなさい。】とアイツに言われて、次に瞬きすれば俺はいつもの花畑に横たわっていて、真上に球体があって、体の情報が球体に映しだされた。
やっぱり東屋さんは「ナイトメアタイム!!」と言った。
【ほぅ?通常数秒のナイトメアタイムを延長させる方法。私も気になっていた。なるほど?考えたな。毒、睡眠、締め付け・・・これらの状態異常を持つ武器とナイトメアアイを融合させて、ナイトメアの悪夢から強制的に目覚めないように改良したわけか。何度も何度も試してできた武器だな。良くあれほどの相場を・・・】
「ははは!どうです!!俺が大量の借金までして、Shiftさんの奴隷にまでなって作った悪夢の味は!!」
【・・・・。】
「良い悪夢だと思います。」と言って俺の体は目覚めた。確かにアイツは悪夢を見ていたが、恐怖を感じていなかった。悪夢=恐怖 ではないようだ。アイツの場合 悪夢=無 だった。
夢の中の1秒は長いように感じた。土から這い上がる人々が自分の首を絞めたり、罵倒してきたりする夢を見ていた。けれども首が赤く光って、直ぐに目が覚めた。どうやら試合開始してすぐに俺の首に何か仕込んでいたものが発動して悪夢から覚ましてくれたようだ。
「なっ!?なぜ効かない。」
「いえ、効いてました。ですが…春風のタクトに宿る小人がすぐに覚ましてくれたんです。」
「ず、ずるじゃないか!!チートだ!!!」
「ここの幹部達はチートばかりです。東屋さんはチートないんですか?」
「…・・・・・・これは私の中で使うまいと封印してきたものが・・・1つだけあります。えぇ。しかし絶対に人に向けてはいけないと、そう思って封印してきたものです。」
東屋さんの目が紫色に光る。
「先程のものとは違って、今度のは・・・。」
「凄いですね。目が紫色に光ってます。」
「デッド・アイ!!」と東屋さんが言えば、音も何も聞こえない、暗闇に閉じ込められてしまう。俺の体は倒れているようだ。
【確かに、こんなもの普通の人に向けてはいけないな。先程の武器を作る過程でできてしまったのだろうな。実によくできている。実際に誰かに使用して痛い目にでもあったのだろう。エイボンの目の力を借りて外を見て見ろ。】
そう言われて、実際に目が借りれて、外を見て見れば、東屋さんが手に何本か指をくわえてガチガチと震えていた。
【可哀想だから起きてやるか。】
また首が赤く光って目が覚めた。今のは起きるまでに2、3分はかかっていた。
「良かったーーー…起きた。」
「後悔するくらいだったら使わなければ良いのに。もう終わりですか?」
「…ぐっ・・・このっ!!」
「じゃあこっちから行きますね。」
アイツは素早く魔法陣を錬成してそれを投げて飛ばして、東屋さんの両腕両足を封じた。赤く光る東屋さんの腕と足。
「なっ!?動けない・・・いったい何をした?」
「さぁ?AIがやってる事なんで俺にはさっぱりわかりません。俺にできる事といえば…。」と言ってデコピンをする。
「いたいっ!!」と東屋さんが反応した。
「痛そうですねぇ。」と言いながらデコピンを永遠とし続ける。高速デコピンで体力を削っていく。
デコピンが当たるたびに「たたたたたたたたたたたたた。」と声を出し続ける東屋さん。
最初にうったデコピンよりも痛そうだ。体力が5くらいは削れている。頭が吹っ飛ばないように絶秒見コントロールされていた。
俺達の試合はかなり長引いていた。煙幕も終わっていて、ひたすらデコピンをする狂気的な姿を何人かに見られていた。
体力が残り2になった東屋さん。そこで俺の体が返ってきた。
「…俺も心苦しいです。」と一言言ってからデコピンをして終わらせた。
【9試合目】
千翠vsレイニー 勝者 千翠
りきvs東屋 勝者 りき
スドーvsマーマパパ 勝者 スドー
ユナvsルピネル 勝者 ユナ
パンデミック卿vsアロー 勝者 アロー
エムルンvsスノー 勝者 スノー
ダリアvsリオ 勝者 ダリア
ラートvsShift 勝者 ラート
ジョンナムvsMr.DADA 勝者 Mr.DADA