【ドルガバのギルド長ヒルコ】
「え…。」
カウントダウンが進んでいく…
「うわっ…最悪。」
目の前には金色と黒が混じった美しいふりふりのドレスを着たピンク色の髪のツインテールをカールにしている女性と…隣にはセミロングくらいのアイボリー色の髪で肌が真っ白で目の下にクマのある背の高い男性AIが立っていた。
「誰…ですか?」
「チッ…あれは【ドルガバ】の幹部チャチャとAIアザ!まずい…勝てる気が…。レベルが違う…。」
「でも…戦うしか…ないんですよね。………やりましょう。回復とか全部僕がします。シンさんは詠唱あるなら詠唱してください。」って…エイボンの言葉をそのまま言ってしまった。
そうだよね…僕には…みんながついてる…9対2だ…!
全員を出して構える。
「チャチャさん!何故貴女がここに!!」とシンさんは魔導書を取り出す。
「何故?何故って…ミルフィオレの新人ってソイツでしょう?ルナの大事なAIがわざわざ護衛についてるくらいですもの…戦闘データはとらせてもらうわ!たとえ負けようともね!!」
「僕は詠唱に入る!時間稼いで!」とシンさんが必死な声を出す…「わかりました。」と返事を返した。
「ふむ…シンさんのこの詠唱は【太陽の光】ですね。空から降る光魔法の強力な技です。これはほとんど回避不能で発動すれば絶対に勝ちます。ただ…詠唱にかなりの時間がかかって、邪魔されると1からになってしまいます。」とエイボンが説明してくれた。
恐ろしい速さでAIのアザさんがシンさんを狙って移動をする。それをフゥがヤツデを使って強風をあてて防いでくれた。魔力をフゥに補充する。
チャチャさんが黄金の扇子のような武器で僕に殴りかかろうとしてウォールがそれをカットして後ろからハクがチャチャさんを斬りつけて体力を削ってくれた。
ハナビも詠唱が終わって空から炎を纏った隕石が降り注ぐ…みんな魔力使いすぎっ!!
毎日シンカさんの料理食べて基礎魔力上げてなかったら終わってた…。
「チッ…それ春風のタクトね?…使いこなしてるっていうの?」とチャチャさんが呟いた。
「だとすれば厄介ですね。まさかそんな人物がソル様以外現れるなんて。」とAIアザさんがチャチャさんの隣に戻った。
「とにかく、シンの詠唱が終わったら負けよ。あの魔導書は【アポロンの残した日記】。絶対に妨害して!同じシリーズの【ハデスの残した日記】がないと防御不可なの!」
「はい。」
アザさんのスピード!!早すぎる!!
フゥがハクに風をつけてスピードアップをさせた。
それを破ってシンさんに短剣で切りかかろうとするアザさん咄嗟にウォールを差し向けてガードさせる。
「これはどうかしら!!氷雪魔法!!千本氷柱!!」とチャチャさんが叫んでいて…ハルがそれを溶かしてくれた。
「やっぱりね!ソル様と同じ!!なら…灼熱魔法!!炎の杭!!」
次は炎の矢のようなものが此方に向かってきて…これは防げないっ!!と目を瞑ると…全く熱くない風のようなものがあたった。
どうやらハルが炎の温度を常温にしてしまったらしい。
「なら…水魔法!!水龍!!!」水でできた大きな竜が現れて僕に向かってきた。
さすがにダメかと思えば…エイボンが前にでて分解をしてくれた。
「四元素魔法は無効だと思って頂きたいですね。」とエイボンがモノクルをくいっとかけなおした。
しばらく激しい戦いが続いた…
「エイボン…頼んだ…もう…僕の反射速度じゃ…アザさんには追い付けない。」と心で語りかけた。
「お任せください。」とエイボンに言われたけど…その声から緊張が伝わった。
僕は…目を瞑った…タクトを振るう…
「馬鹿にしてるの!?目を瞑るなんて!!!」とチャチャさんの怒る声が聞こえる…
勝つんだ…負けるわけにいかない…だって…ほら…これに勝てば…僕は…
AI咲が脳裏に浮かぶ…
君を迎えにいけるから…。
「太陽の光!!」とシンさんの叫ぶ声が聞こえて…空から無数の光柱が出現して…チャチャさんとアザさんにそれが当たって…勝利した。
「…かて…た。」
近くにゲートがでて…いつもと装備の違うラートさんが血相を変えて現れた。
その姿は…美しいプラチナ色のメイルで…
「シン!!!すぐにパーティーを解除しろ!!!」
そう言われてシンさんがパーティーから脱退しました。と表示されて…ラートさんからパーティー招待がとんできて、受けようとした瞬間…バトル開始の画面になった。
パーティー招待を拒否しましたという表示が現れた。
「クソッ!!遅かった!!」とラートさんが顔を歪めた。
「はっはっはっはっは…。愚かだ。実に…愚かだ。」と言いながら現れたのは…金色のスーツを着たモノクルをかけた金の髪の男性だった。
「そ…んな。………ドルガバのギルド長…ヒルコ…。」とシンさんが言った。
「ふははははっ!!!実に愉快だ。シン、何をそんな驚いた顔をしている?…ラート随分悔しそうな顔をしているじゃないか。何か…嫌な事でもあったのかね?」
試合が開始された。
僕はすぐにチョコをだして魔力回復をする。
最初の時と違って…魔力がずいぶん伸びているから…チョコレートでは少ししか回復できなかった…
「無駄だ…。」ラートさんが呟いた。
「あぁ、無駄さ。」
ヒルコさんの後ろに黄金色の巨大な大仏のような何かが出現し…光線が僕に降り注ぐ。
ウォールが受け止めてガードはしてくれているが…
「アイツは金で魔力を無限に回復できる……一回の試合に1000万enつぎ込めるような奴なんだ…。」とラートさんが言った。
そんな………次第に僕の魔力が切れて…光線にあたって…激痛と共に試合が終わった。
ラートさんが素早くゲートを開いてシンさんが僕を素早くゲートに放りなげてギルドハウスに帰還した。
頭には…ずっと…ヒルコさんの高笑いがした…。
あれにはどうしたら勝てるんだろう?
課金が正義だというなら…【リアル】をプレイする意味は…もう…
一瞬…咲の姿をみた…でも違った…
…ゲートの先はルナさんの部屋で…ルナさんだった。
…負けて頭がおかしくなったのかもしれない・・・ルナさんを咲と見間違えるなんて…それに…僕は咲と暮らす為に【リアル】に…戻ってきたんだ!!!!
「りき…ありがとう…シンを守ってくれて…ありがとう。」とルナさんに抱きしめられた。
「……結局…負けさせてごめん。」シンさんの悲しそうな声がした。
「すまない。間に合わなかった。」とラートさんが言う。
「え…っと…ルナさんもラートさんも…どこで…。」
「シンは私…私はシン…自分のAIがバトルをすると…リアルタイムでホログラム画面に映るのよ。それを見てラートを呼んで一緒に見てたわ。……まさか…ヒルコが出てくるなんて思わなくって…。」
「アイツ…俺達に親でも殺されたのかよってくらいの勢いでバトルを挑んでくるな…。」とラートさんが金のステッキを取り出して装備した。
「あの…ここまで敵対視される原因って…何か聞いてもいいですか?」
「もともと…ドルガバはヒルコのギルドじゃなかったのよ。…りきはもう何度か聞いてしまってるかもしれないけど…ソルって子が………ううん、公式のモニター…GMソルが建てたギルド。ヒルコは…そうね…ソルが王ならヒルコは大臣かしら?そんな関係だったんだけどね…ある日ソルはヒルコにギルド長を渡して…私のところへきたの。……傍から見れば…私がソルを引き抜いたように見えるわね。……これ以上は詳しく言えないけど…ミルフィオレに一時期ソルが在籍してたのは事実よ…そして…ヒルコは…うちに在籍していたソルにバトルを挑んだの。そのバトルの結果はソルの負け…その後…ソルはうちを抜けてログアウト…それから…ヒルコがうちのギル員に嫌がらせするようになったのよ。」
「……その勝負に一体何が…。GMっていう事は…負けたあと会社で色々あったんですかね?」
「……さぁね。」
ルナさんは色々知ってるけど…いえない…のかな。そんな感じがした。
「コホンッ!とにかく!これから全力でりきを守るわよ。りきの体力と魔力が私たちに追いつくまで。これからはシンカをつけるわ。」
「…本気…なんですね。」とシンカが言った。
「ええ、本気よ!あのチャチャに勝ったのよ?実力は本物だわ。」
「……そういう意味の本気じゃないんですけどね。ま、同じ事か。」
「でも…勝ったのはシンさんのおかげで…。」
「二人を相手しながらシンを守り抜いたのはりきよ。実際にうちで、あの魔導書最後まで詠唱させる事ができるのって千翠の結界か…もしくは…シンに結界をはらせてシンカが詠唱する…くらいしか成功しないわよ。ラートは大技ぶち込む専門だし。」
「防御、結界系は面倒すぎ。詠唱だとか神楽だとか…俺には向かない。」とラートさんは壁にもたれかかってため息をつく。
「自信を持って。りき。」
「・・・・・・はい。」
「で、シンがルナのお守りですか?りきさんがログアウトするまで。晩餐は誰が担当するんです?」
「りき!晩餐の2時間前までには絶対にギルドハウスにいること!あとあんまり出歩かないように!」
「えっ…は…はい。」
出歩いてまた襲われたら嫌だし、出歩く予定はないですけど…。
「…自分がやるんですね。りきさん、すみません。」
「い、いえ!シンカさんが謝るような事は…。」
「あとお守りってどういう事よ!」
「まぁ、まぁルナ。…僕頑張るからさ。」
「コホンッ…。それより…これからの事を話した方がいい。あと一回負ければ…面倒だ。」とラートさんが言った。
「そうね。今りきのバトルポイントは100を超えたはず。シンカとシンとラートでパーティーを組んで初心者の町へいってAI拡張チケットを買に行ってちょうだい。安全地域でも…無理矢理戦争地域に押し出す方法なんていくらでもあるし…念のためね。」