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RealSocialGame  作者: 無月公主
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【蜘蛛無双】

俺と護は次の村についた。前の村と同じように護が村人達に呼びかけて中央に集めて、俺は透明マントを被ってゲートをだして村人全員を上の世界に送り、また次の村へ移動してを繰り返していた。


数件目の村について、護がバサァッと羽を広げて浮遊エフェクトを出すとコツンと何かが頭に当たった。

キョロキョロとすれば村のみんながこっちを見て睨んでいるような気がした。再びコツンと何かが当たった。床にその何かが落ちて見てみると小石だった。

小石はポツポツと振り出す雨のように降ってきた。


「悪魔だ!!!でていけ!!!」と村の人が大声をあげて護に石を投げ始めた。


「まずい!いったん外へ出よう!」と護に声をかけて、二人で走って村の外へ出ようとするが、追撃は止まらず、矢のようなものが護の肩を貫いて、護は痛みに膝をついた。

その瞬間数本の矢が護に刺さって、タクトを握りしめてフゥで竜巻を起こして、護の背に刺さった矢を抜いてスゥに治療してもらった。なんとかすぐに回復して少し安心した。


【すぐに村を出ろ!】と珍しく焦った声でアイツが叫ぶ。そこに緊急性を感じて、護と走りだした。フゥが風で少し送ってくれのもあって、すぐに外にでる事ができた。


村の外に出て、フゥの力で空を飛んだ。護は自分の翼で空を飛んだ。上空しか安全な場所が今はない。


【この世界で死ぬとこの世界に転生する。それを頭にいれておけ。】


「そういう事ですか。僕が転生してしまうと厄介ですね。」

「早く聞きたかったな…。。」


【恐怖で行動が制限される可能性を避けたのだ。ここからは君一人で頑張るしかない。】


「俺…か。うん、とりあえず、情報を終了」


その後、俺は護を待機させて、村に戻って情報収集する事にした。


「あの姉妹の話は本当だったよ。隣村は無人だった。」と村人の声が聞こえた。

「本当か。天使の姿をした悪魔か。どれだけの人がやられてしまったんだ?」と村人。

どうやら夢で見た村人がこの村まで逃れてきて噂を流したようだ。俺はしばらく夜まで透明マントを着て村人達が寝静まるのを待った。


シーンとする村。端の方にある家の扉を激しくノックして、扉の前にゲートを開いておいた。

村人は扉をあけて、ゲートに入っていく。

これを朝まで繰り返した。2日後、村人達は一ヶ所に集まって眠るようになった。

一ヶ所に集まったなら、次はその扉の前にゲートをはって村人が出てくるのを待った。

それを数日繰り返せば、村を出た人が何人かいて、村は無人になった。


次の村に行く前に少しゆっくり休息をとる事にした。珍しくアイツも空気を読んで、俺に何も見せなかった。

もちろん次の村へ移動しても警戒心マックスだった。それでもコツコツやるしかなかった。

待っている時間は無だった。いつ終わるんだろう…、いつ村人は移動するんだろう…いつ、いつ、いつ……。


「りきさん。」と女性の声がして振り返ってみたが、そこには誰もいなかった。

俺は今透明マントを被っているし、誰も俺に声をかける事はできない。空耳……とうとう頭がおかしくなったか?


【私にもしっかり聞こえた。】


いったい何の声だ。とキョロキョロしていると、姿がしっかりと現れた。

「うわぁっ!!」と思わず声をあげて尻餅をついた。

傘をさして、中世ヨーロッパのようなドレスを着ている…そんなまかさ…。

「ユナ…さん?」

「ふふんっ♪幽霊でも見るような目ですわね。」

「そりゃ…ここは下の世界…ですから。」

「ふふんっ♪お顔が汚れていますわ。」とユナさんは俺の顔についた汚れを指でゴシゴシと擦って落としてくれた。

「すみません…。」

知っている人に出会えた安堵で、目に涙が込み上げてきた。するとユナさんは傘をとじてしまってから、俺をギュッと抱きしめてくれた。涙が止まらなくなった。ユナさんは優しく頭を撫でてくれた。

「豊も…家では良く泣くんだ。そういう時はこうやって慰めてたな。」とユナさんが初めて素を出して喋るので驚いて涙が止まってしまった。

「え…でもどうしてここに。」

ユナさんは泣き止んだ俺をそっと離して、傘を差し直した。

「ふふんっ♪ずっと一緒にいましたわよ。奇妙な会話を護様としているところもバッチリ聞いておりましたわ。」

「え?」

「ふふんっ♪ワタクシのチート武器は何にでも化けられる傘にありますわ。壁と一体化する事も服と一体化する事も…頬についた汚れになる事も…何にでもなる事ができますわ。人外になっている時は護様が仰っていた生体反応とやらには反応しないようですわね。」

「一体何と一体化していたんですか?」

「ふふんっ♪小さな蜘蛛になって、粘着糸を使ってずっとりきさんの耳の裏にくっついておりましたの。水無月様に落とされる前からずっと…。」

「ずっと!?」

「ふふんっ♪チート武器だと先程もお伝えしましたでしょう?人外になっている間は空腹も疲労も睡眠も何もかも必要ない世界ですの。これに関しましては、チートでなくとも、虫に変身した人のみ認知しているでしょうけど。」


【完全なバグだ。気持ちが悪いというユーザーからの意見が多くてね。放っておいてもおいても大丈夫だろうと放置していた。】


なるほど。


「ユナさんはどうして突然姿を見せたんですか?」

「ふふんっ♪りきさんが、限界だったからですわ。オマエは【リアル】、ミスティック連合、ミルフィオレ所属幹部りき…である前に、ワタクシの弟の友達ですから。放っておくなんてできるわけがないですわ。」

「…お姉さん。」

「ふふんっ♪お手伝いをして差し上げますわ。精神操作、情報操作…造作もない事ですわ。中央に全ての村人を集めて差し上げますわ。さぁ、マントを被りなおして中央で待機しておいてくださいませ。…あぁ、それからゲートが床にも敷けるかどうかどこかで確認しておくと良いですわ。」と言ってユナさんはフリルのついた袖から黒いアリのような虫を沢山だして移動しはじめた。


俺はゲートが床にも開けるのかどうか試してみると黒いゲートが、まるで絨毯でも引いているかのように床に出た。

確認もとれたから急いで中央へ向かった。


日が暮れる頃に村人が中央に集まりだした。だけど、少し様子がおかしかった。

「どうなってるんだ?」「俺にもわからねぇ。」「神の御意思に背いた捌きか!?」等と、行動と言動が一致しない人々。

「ふふんっ♪さぁ、さぁ。りきさん。これで全員ですわ。さぁゲートを開いてくださいまし。」とユナさんの声がして、俺は床にゲートを開いた。

村人は悲鳴を上げながらゲートに入っていく。絶対に良い事をしてるはずなのに、とてつもなく悪い事をしてるような気持ちになってきた。その中には、逃げてここまでたどり着いた姉妹もまぎれていた。どうやら前の村からここまで逃げてきていたようだ。絶望の目をしていた。


「ふふんっ♪残酷ですわね。」

「はい…次の村へ行きましょう。」

「ふふんっ♪どこへでもお供しますわ。それが…ワタクシの任務ですから。」

ユナさんの姿が消えた。恐らく、また俺の耳の裏に小さな蜘蛛としてくっついているのだろう。


その後、俺達はユナさんの強制的な力を借りて、全ての人間を上の世界に引っ張っていく事に成功した。

とても、耐えがたい光景だった。でも、ここは食べる物も飲み物も不安定で、服すらもボロボロで…きっと上の世界での生活のほうが楽しいはずと願うしかなかった。

俺達も久しぶりに上の世界に戻る。いったいどれだけの時間が経ったんだろうか。

置いてきてしまった咲はどうしているだろうか、ユナさんの話では俺とユナさんと護と水無月さんで任務にでている事になっている。これは咲をこっちの世界に連れ込まない為と皆が心配しないようにする為の表向きの任務だ。

実際は最初俺と護の二人だったし、ユナさんは最後まで見ているだけの予定だったらしい。水無月さんは何故か俺が上に上がってこないように見張るだけだし…でも…終わったんだ。これで。

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