【ギルデバルドVSリリア】
晩餐が終わって、俺が部屋に帰ろうとしていた時、大広間の隅でギルデバルドさんの胸倉を掴むキングアズレイさんの姿が視界に入って、俺は近寄った。
「ギルデバルド!!!もう見過ごせんっ!!どれだけ我が隊を辱めれば気が済むんだ?………これは命がかかっているゲームだ。今すぐリリアと勝負してこい!!」とレイさんはギルさんを壁に打ち付ける。
「……。」ギルさんは人を見下すような目でレイさんを見る。
「なんだ…なんだその目は!!」
「……熱くなるなよ。わからないか?」とギルさん。
「このっ…。」とレイさんが何かを言いかけたところでラートさんがレイさんの頭を持って床に打ち付けた。
「落ち着け。ギル、レイ、リリア、それとそこのガヤ。」とラートさんはギルデバルドさん、キングアズレイさん、リリアさんを順番に指をさしていき、最後にガヤと言って俺の目を見て指を指す。
ガヤは俺の事か?
「俺ですか?」
「あぁ。練習場へ。」
5人で練習場に移動した。
「ギル、リリア。練習試合を。レイはこれを見た後、俺が帰還命令を出すまで、しばらくShift班と行動を共にしろ。」とラートさん。
「班…長…。」とレイさんは絶望的な顔をしていた。
「頭を冷やせ。そういう意味だ。俺はお前を高く評価している。りき、みとけ。動画にとっておくように。」とラートさん。
「あ、はい。」
ギルさんとリリアさんは無言で距離をとってから練習試合を開始した。
二人とも巨人の白色のマシン姿になる。いつみてもシルエットが綺麗だ。
ギルさんが剣に属性を付与してリリアさんに斬りかかるが、リリアさんはそれを華麗にワープで避ける。巨体なのに素早さがある。リリアさんはギルさんの背後をとって白い炎を放つ。ギルさんはそれを片手剣で受ける。片手剣はその炎を吸収する。
リリアさんの炎の威力は凄まじく、剣の吸収が追い付かず、炎が段々漏れはじめてギルさんの体力がジリジリと削れだす。
ギルさんが片手剣で一度振り払って、空を飛んでリリアさんと距離をとる。すると「氷牢に封印されし氷龍よ…汝が解放される時がきた。」とリリアさんの声が聞こえてきた。
距離をとっていたギルさんが急いでリリアさんに襲いかかる、凄い速さで何度も何度も斬りかかるがそれをワープで防ぐリリアさん。
「空を舞え、汝を封じた愚かな者達を粛清せよ。」とリリアさんは詠唱を続けながらギルさんの剣を避ける。
「氷牢の獄氷龍!!!」とリリアさんが叫べば蛇に近い姿の氷の龍がギルさんに巻き付いてギリギリとギルさんを締め付けて体力を削っていく。
「くっ…。」とギルさんの声が聞こえる。
片手剣が龍を吸収しきって脱出するが「悪に墜ちろ、シルフィード。」というリリアさんの声と共に、灰色の風がギルさんの両手足を拘束する。
ギルさんがそれを片手剣に吸収させて拘束を外して地面に片手剣を突き刺して「ブラックフィールド。」と言えば、床が銀河に変わった。
「魔法使用不可フィールドだ。これでリリアはワープも魔法も使えないな。」とラートさん。
ギルさんがリリアさんを掴んで床に叩きつけて顔を何度も殴る。
「記憶の固執。」
リリアさんの体は地面に段々と銀河に沈んでゆく。それはギルさんが殴ったのではなく、何かのスキルのようだ。
そしてギルさんの背後に姿を現してギルさんを蹴りあげた。
素早く体勢を立て直してギルさんがリリアさんを殴ろうとしたら、リリアさんがドロっと溶けて鈍いくすんだ虹色の液体のような姿になって、ギルさんに絡まり着いて締め付ける。
それはもうどうする事もできないようだった。
なんとか体を動かして、地面に突き刺してある片手剣をとるギルさん。
片手剣にその液体みたいなものが吸収されていく。
そして、その剣がガタガタ震えだして、それを必死にギルさんは押さえつけるがジリジリとギルさんの胸に剣先がいき・・・ズプププと刺さっていく。
それは抜くことができない。
巨人化をといて剣を無理やり抜くが、同時にリリアさんが「雷鳴」と呟けば光速さで雷がギルさんを貫く。メイルのギルさんは体力がゴリっと削れる。さらに片手剣がギルさんを貫いて、床にそのまま叩きつけられるギルさん。片手剣を抜こうとするが、虹色の龍がギルさんを襲い、そのまま体力を削りきられてしまった。
試合が終わるなり「ギル、ギルっ!!ごめん…ごめんね。」と横たわるギルさんに上から覆いかぶさって泣くリリアさん。
「大丈夫だよ。もう痛くない。」と優しく笑うギルさん。
「わかったか。レイ。」とラートさん。
「……私が…間違っていました。」とギュッと拳を握るレイさん。
「解散だ。」とラートさん。
俺もリリアさんとギルさんの邪魔をしちゃいけないと思って、自室に戻る事にした。
部屋に戻ると咲と護がいた。
「おかえり、どこに行ってたの?」と咲。
「うん、なんかギルさんとキングアズレイさんが喧嘩しだして、その後ラートさんに呼ばれて、リリアさんとギルさんの練習試合を見る事になって見てたんだ。見る?」
「見る!」と咲。
リビングでホログラム画面を出して、さっきの試合の鑑賞会をする。
「このブラックフィールドって魔法無効なんだろ?このリリアさんの液体になってるやつってなんだと思う?」
「あぁ、これは美術スキルの技ですね。技ですから発動は可能ですね。りきで言えばブラックフィールド中でもゲートが使えるようなものです。」と護が解説してくれた。
「技なのか。しかも美術スキルって…。」
「恐らく、魔法を封じられた時の為にわざわざ習得したんでしょうね。」と護。
「この試合…かなりレベルが高い。この長文詠唱のある魔法を、超高速で読み上げて発動させてる。」
確かに、シンも魔法を詠唱する時、本を見てるうえに集中して読み上げてた。
「しかも、この攻撃の炎やら氷やらは相当痛いはずですよ。特に最後のレインボードラゴンは精神汚染系のダメージを与えるタイプなので、メンタルが弱い人だったらトラウマになりそうですよ。」と護。
「あぁ、それで最後リリアさんが心配してたのか。」
「私の剣が負けるなんてぇ~!!」と咲。
「そうか。そういえば咲が……あっ…そうか。あの剣攻撃力2倍だから簡単に抜けなかったのか?」
「いえ、美術スキルの技のせいでギルさんサイドからすれば剣がぐにゃぐにゃして簡単に抜くことができなかったんでしょう。そういう精神汚染です。」と護。
「そういえば、どうしてギルとレイは喧嘩したの?」と咲。
「ギルさんがリリアさんとの試合棄権しただろ?それを怒ってたっぽい。」
「へぇ…。」
「りき、レイさんの記憶を覗くと面白そうですね。」とニコリとする護。
「護って結構、知りたがりだよな。」
「暇なので。」と護。
「あ。そうだ。咲。」
「うん?」
「話は変わるけど忘れないうちに、どこかで時間作って、俺に稽古つけてくれないか?」
「稽古?どうしたの?」
「世界樹のクエストの時…咲のタクトの使い方を見て驚いたんだ。俺と全然違った。」
「その前に。ジャンに防具を作ってもらってからだね。私は一応ステータスが他の人よりかなり高いから、無茶な動きしてなんとかできるけど、りきは防具が弱すぎるからね。NOAの素材とも組み合わせて最強防具を装備してからだよ。」
「…わ、わかった。」
「ちゃんと、最強に強く鍛えてあげるから安心して!」
「う、うん。頼むよ。」
「じゃあ、もう寝よう。」
「え?」
「…私もレイの件気になるし…。」
寝室に移動してパジャマに着替えて布団に入る。