【チョイスザサモンゲート】
目が覚めると自室の寝室だった。
誰もいないな…。
起き上がって、指をスライドさせてホログラム画面を開いた。
毎回気絶するのどうにかならないかなぁ。と俺はゲートのスキルを眺める…
新しいスキルとか追加され………されてる。
【真理の扉】の下に【チョイスザサモンゲート】が新しく追加されていた。
これ絶対自由に選択して召喚できる系の技だ。
試しに使ってみようと思って「チョイスザサモンゲート!」と唱えてみたけど、何も起こらない。
どうやって使うんだろう?説明では選択して召喚する事が可能です。とだけ書かれていた。
不親切な説明だ。起動方法とかないのかな。そういえば、他の人のスキルを見た時、凄い丁寧に説明が書かれていた。どうしてこのゲートだけ雑なんだ。雑だから誰も降ってくれないんだぞ…ゲートよ。
誰に聞けば答えが見つかるかなぁ…やっぱり…千翠さんだよなぁ…と考えていると目の前にゲートが出てきて千翠さんが「それとこれは明日までにクリアしておい………て…。」と何かを言いかける千翠さんと目があった。
「…これはサモンゲートですか?」と千翠さん。
「え、いや…違うんです。新しいスキルで【チョイスザサモンゲート】ってやつで…どうやって使うのかわからないから千翠さんに聞こうかなって思ったら…。」
千翠さんは深いため息の後に「なるほど。」と呟いた。
「では、シンを呼んでもらえますか?先ほどのように願ってみてください。」
シン…これるのかな……千翠さんと二人きりは気まずいというか圧が凄いから来てくれ~。と願うと千翠さんの背後にゲートがでてきて「うわぁっ!?」と勢いよく千翠さんにぶつかるシン。
「なるほど、願ったら召喚してしまうわけですね。」
これもオンオフ式か…スキルの横にON/OFF機能がついている。
「…っ。」シンが鼻を抑えて千翠さんの後ろからよろよろと出てきた。
「シン…鼻血でてるよ。」
「千翠さん硬いですよ。」とシン。
千翠さんが少しジっとシンを見つめて、鼻を抑えている右手を掴むとボタボタ鼻血が滴る。
「……おかしなものを実装しましたね。」
「……どま゛ら゛な゛い゛…。」とシン。
「鼻血バフ60秒。これのせいでしょうね。」と千翠さんは右手をシンの鼻にあてて「癒したまえ。」と言うとやわらかな白い光が発生してシンについていた鼻血バフがなくなった。
「止まった……けど…血だらけなんだけど…。」
「…あ。雑巾で拭かないと消えないように変更されてる。」
「え?よくそんな細かいの覚えてるね。」
「う…うん、まぁ…。」意識共有してもらったから…。
シンは雑巾を取り出して床を拭く。
「となにかく、新しいスキルについて理解しました。発動条件もわかって何よりです。」
「あ、あの!ミキッコさんはどうなりましたか?」
「魅惑にかかっていましたので、シンカが解除してくれました。記憶が元に戻ったとおっしゃっていましたよ。」
「良かった…。でも問題は…下の世界か。」
「ん?どうしてそれを?」と千翠さん。
「あ、いや…ミキッコさんとあった時それっぽい事言ってたような気がして…。」
「あぁ!確かに、僕もそう聞こえた気がしたんだよね。」とシンがフォローに入ってくれた。
「なるほど。下の世界…ミキッコさんが下の世界に家族がいるとおっしゃっていました。詳しい話を聞く必要がありますね。」と後ろを向いてゲートを開こうとする千翠さん。
「せ、千翠さん!待ってください!!」
「はい?」
「背中に血が…ついてます。」
「えっやばっ。」とシンが慌てて雑巾で千翠さんの背中を拭く。
「はぁ…。」やれやれといった感じで千翠さんはゲートに入っていった。
「いや焦った…ありがとうシン。」
「僕も別の事で焦ったよ。」とシンはベッドに座った。
「もっと早く欲しかったなぁ…このスキル。」
「で?見たんでしょ。夢。」とシン。
「あ、うん。ここの下に違う世界があった。ここって島国みたいな構造してて丸くなくて平なんだ。」
「待って、待って、丸くなくて平って何が何かさっぱりわからないよ。」
「え…あ。えーっと、現実世界は地球っていう球体の星っていうのは理解できる?」
「あぁ!そういう事か。ある程度はわかってるよ、最初、突拍子もなかったから何を言ってるのかわからなかった。なるほど、この僕達の住んでる世界は星ではないって事か。」
「うん、で…下の世界からきたミキッコさんは上に上がった途端に【リアル】のチュートリアルが発生したんだ。でも…もう一人ここの世界から下へ下った人がいて…上に上がっても平気そうだった。」
「とりあえず、何も見なかった事にしてミキッコからのそういう情報がでるまで動かない方が良いね。」とシン。
「うん。」
ガチャリとドアが開く音がして「りきー起きて…る゛」と咲が顔をのぞかせた。
「あ。咲、おはよう。」
「どうして寝室にシンがいるの?」とジトーっとした目で俺を睨む咲。
「新しいスキルを覚えたんだ。俺が願ったら召喚できるスキルで…。」
「ふーーーーーん。シンに来て欲しいって願ったんだー。」と口を尖らす咲。
「えぇ…誤解だよ。最初に願ったのは千翠さんで、千翠さんが試しにシンを召喚してみろって。」
「…まだ僕とりきの仲を疑ってるの?」とシン。
「別にー。」と顔を斜めにそらす咲。
「そうだ咲。リアルの世界って、平坦なのか?」
「ん?そうだよ。」
「その下の世界も知ってるのか?」
「下…それはわからないけど、下の世界は実装予定だったはず。もしかすると…もう実装されてるかもしれないけど。」
「そうか。そういえば咲、何か用事だった?」
「あ、そうそう、リリアっていうスノー班の子がちょっと軽く煙たがられてるらしくって、りきと一緒にしばらく行動を一緒にさせてほしいってシンカに言われたの。」と咲。
「シンカさんに?分かった。」
「それが、リリアだけじゃなくてリリアと一緒に行動してるキラキラしたつ…えーっと名前なんだっけ…。」
「ギルデバルドじゃない?」とシン。
「そう!そのギルなんちゃらも一緒に同行させてほしいって。今回は世界樹の旅だってさ。」
「世界樹の旅…?」
「世界樹に登るクエストがあるんだ、結構でかいし時間もかかる、野営とかの準備をしっかりしていかないと夜はモンスターもでるし難しいクエストだよ。」
「そうなの?でもルナとシンカとシンの3人でクリアしたんでしょ?」
「あぁ、うん。ルナは頑張り屋さんだからね。夜にでるモンスター以外は結構ガツガツ進んだかな。夜はテント張って結界しいとけば大丈夫だけど、僕らも結構カツカツだったから難しいよ。それに…今は一対一じゃなくて大勢で奇襲をかけれるとんでもない世界だしね。」
「まぁ、それは平和のブローチをつけていくしかないね。」
「あれは30分しか持たないからかなり警戒して行ったほうがいいよ。」
「……うん。りきと私と護とリリアとギル…なんちゃらと二人のAIで行こうと思ってるんだけど。」
「大丈夫だと思う、ギルデバルドはかなり強いし、ラート班の精鋭の一人だったはず。リリアにばっかり構ってるせいで副官のチャンス逃しちゃってるんだよね。」とシン。
「ずっとイチャイチャしてるの?」
「イチャイチャって感じじゃないよ。ドジなリリアを見て楽しんでる…のかな?」
「そうか、じゃあとりあえず、準備しないとな。」と俺は立ち上がった。
「てことは買い物!?」と目を輝かせる咲。
「うん、行こうか、護も連れて行こう。」
護、どこにいるんだろ?呼んでも大丈夫かな?と考えていると目の前にゲートが開いて、食事が乗ったオボンを持った護が現れた。
「え?」と護。
しまった…つい…
「ごめん、護。願ったら召喚してしまう新しいスキルなんだ。」
「なるほど。丁度りきの昼食をと思ってたんで。かまいませんよ。で何か用事でしたか?」と護。
「新しいクエストに行くから、買い物に行こうと思ってさ。いけるかな?」
「はい。大丈夫ですよ。」