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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第十章 外ヶ浜平定 天正十三年(1585)夏
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千徳の奮戦 第二話

 浅瀬石(あさせいし)城は一向にひるむ様子なく、ならばと大将(ひがし)政勝の息子である東重康は自ら使いとして敵城へと(おもむ)いた。今や争う相手とは言え、かつては浪岡で同じく詰めていた奉行仲間である。もしや説得に応じてくれまいかと思い……馬から下りて城門で待つと、鈍い音をたてながら扉は開かれた。馬を近くの者に預け、言われるがままに奥の方へ。すると大きな館の前にある砂利の広間に、床几が二つ。そのうち一つに、すでに千徳(せんとく)政氏(まさうじ)が座っている。ここ最近で一気に髪の色が白く変わった彼は、苦い顔をして待ち構えていた。


 次いで東も空いている方へと座った。そして何を言わんとしたか、東は口を開いて語りだろうとするが、思わずしり込みをしてしまう。千徳も……わからない訳ではない。仕方なしに千徳から話し始めた。



「一か月後にこうなろうとは思いもよらぬ。ご存知の通り、我らには為信決起の企みを聞かされておらず。此度はあなたがたと相争うのは不本意な事である。」


 東は大きく頷き、このように返す。


「我らとしても内情を知っているが故、こうしてあなた方の手を借りれまいかと浅瀬石へと兵を向けた。しかれども意に反し、あなた方は我らと刃を交じらえてしまわれた。いかようにお考えか。」


 千徳は哀しそうにため息をつく。



「ワシの息子は為信嫌いでの。だからといって南部に寝返ってしまえとはならぬのだ。お主も存じているように、為信の元にワシの娘とその子らがおるし、何人かの家来衆がそのそばで仕えている。」


「知っております。そこで我らとしては戦わずして逃げて下されば、命の奪い合いはせぬとお約束いたします。そして我らを素通りさせ、堀越城と大浦城を突かせてくだされ。為信一人がいなくなった暁には、再び浅瀬石の城主へとお戻しいたします。すでに一戦はいたしましたので、不名誉は避けられましょう。」



 また、ため息。


「ところがの、息子は一度決めると考えを変えぬのじゃ。”為信無しでも追い払えることを証明してやる” と逆に意気込んでおる。」





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