千徳の奮戦 第二話
浅瀬石城は一向にひるむ様子なく、ならばと大将東政勝の息子である東重康は自ら使いとして敵城へと赴いた。今や争う相手とは言え、かつては浪岡で同じく詰めていた奉行仲間である。もしや説得に応じてくれまいかと思い……馬から下りて城門で待つと、鈍い音をたてながら扉は開かれた。馬を近くの者に預け、言われるがままに奥の方へ。すると大きな館の前にある砂利の広間に、床几が二つ。そのうち一つに、すでに千徳政氏が座っている。ここ最近で一気に髪の色が白く変わった彼は、苦い顔をして待ち構えていた。
次いで東も空いている方へと座った。そして何を言わんとしたか、東は口を開いて語りだろうとするが、思わずしり込みをしてしまう。千徳も……わからない訳ではない。仕方なしに千徳から話し始めた。
「一か月後にこうなろうとは思いもよらぬ。ご存知の通り、我らには為信決起の企みを聞かされておらず。此度はあなたがたと相争うのは不本意な事である。」
東は大きく頷き、このように返す。
「我らとしても内情を知っているが故、こうしてあなた方の手を借りれまいかと浅瀬石へと兵を向けた。しかれども意に反し、あなた方は我らと刃を交じらえてしまわれた。いかようにお考えか。」
千徳は哀しそうにため息をつく。
「ワシの息子は為信嫌いでの。だからといって南部に寝返ってしまえとはならぬのだ。お主も存じているように、為信の元にワシの娘とその子らがおるし、何人かの家来衆がそのそばで仕えている。」
「知っております。そこで我らとしては戦わずして逃げて下されば、命の奪い合いはせぬとお約束いたします。そして我らを素通りさせ、堀越城と大浦城を突かせてくだされ。為信一人がいなくなった暁には、再び浅瀬石の城主へとお戻しいたします。すでに一戦はいたしましたので、不名誉は避けられましょう。」
また、ため息。
「ところがの、息子は一度決めると考えを変えぬのじゃ。”為信無しでも追い払えることを証明してやる” と逆に意気込んでおる。」




