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津軽藩起始 油川編 (1581-1585)  作者: かんから
第一章 津軽為信、側室を取る 天正十年(1582)夏
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弟の腐心 第三話

 小笠原は当然の如く黙ったまま。兼平(かねひら)や森岡は互いの顔を見やり、次いで八木橋(やぎはし)に顔を向ける。八木橋は……その場の静けさもさることながら、このように目線を受けると何か言わねばならぬ切迫感にさらされた。そして口を開くのだ。


「多田殿をつなぎ留める……誰か年頃の娘など。」



 すると森岡は小さめにため息をついてしまう。“誰のを” と応える。森岡はかつての先代に似て、若いながら底冷えするほどの怖さを備えている。以前に雷を落とされた八木橋にとって……思い出したくない記憶だ。


「本来ならば……一門衆にしてしまえば、これほど強いものはございません。ただし殿には娘はいれど、離すには若すぎる……。」



 兼平は苦い顔をし、森岡は一笑にふした。三歳か四歳でしかない娘を、二十歳の立派な成人に嫁がせるわけがない。それを相手が望むなら……趣味を疑う。




「ですが……ならば一門でないにせよ、信頼が置ける重臣の娘ならば……こちら側に留めておけるのでは。」


 八木橋が恐る恐るこのように続けると……為信は思わず小笠原の方を見てしまった。いや……しかし……。顔にこそ出さぬが、戸惑っているところに乳井が訊ねる。



「その “信頼のおける重臣” という意味は、この場にいる面々だという解釈でよろしいか。」


 八木橋は即座に “はい” と応え、広間にいる者らを怯えながら顔色を窺う。乳井はそんな八木橋に言った。


「私の乳井家では生憎だが、子は男子しかおらぬ。兼平殿と森岡殿は子が生まれたばかりで、幼すぎる。八木橋殿は……早く嫁をお取りなされよ。」



 為信は本音を覆い隠すが様に、わざと笑った。沼田も “当家は子がおらぬ” と答え、果ては一人しかいなくなる。


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