まつろわぬ民 第三話
「もちろんこのまま攻めかかれば倒せない訳ではない。ただし、後の事が難しくなるが。」
兼平は二人の顔を窺いながら話す。さすがは為信の重臣だけあって、深く物事を考えることのできる者ら。三人集まれば文殊の知恵とも申すし、何か良い案が浮かぶかもしれぬ。すると森岡が言う。
「油川の町衆は、あの滝本をも追い出したというぞ。この件でしくじれば、油川を治めることができなくなるのは自明の理。」
横で小笠原は静かに頷いた。そして森岡は続ける。
「なれどこのまま浄満寺の件を放置しておけば、見くびられることは確実……誰もが見て正しい手順を踏んで、攻め落とすのがよかろう。」
兼平は相槌をうつ。
「うむ。先ずは降伏の使いを送り、拒否されたら周りより一斉に火縄の音なり矢を浴びせるなりする。そして再び使いを送り……ここでよき回答がなければ、今度こそ攻め込まざるを得まい。周りで見ている町衆が逆らう気を失せるほどに……。」
森岡は思わず口をにやつかす。“同じことを考えているではないか” と申し、次に兼平と森岡は小笠原の方を向いた。すると “仕方なかろう” と一言。
もう決まってしまえば、後は殿の元へお伺いに行かねば。三人はそれぞれ持ち場を信頼のある部下に任せ、油川城の本陣に向かう……。城の南に広がる湿地帯より霧が立ち込め、風が偶然にも北に向かって吹いたので、城全体が白く包まれている。その中を馬に跨り、三人は進む。横にわずかに揺られつつ、それを心地いいと感じるか、酔いが回る気持ち悪さと思うかは人それぞれだろうが、この場合……彼らはどうであろう。先の見えぬこの戦い、何を決着とみるか。
霧なればいずれ晴れるだろうが、我らに待つは繁栄もしくは滅亡か。この油川が、試金石となる。




