再会 第四話
……夕方になると浄満寺に籠る敵が勢いずくことを防ぐため、大浦軍は明行寺に詰める兵五百以外にもさらに七百を浄満寺の周りに配置。町衆や奥瀬残党がさらに加勢せぬよう目を光らせた。さらには油川で新たに拠点と使われそうなところを先に抑えるべく、熊野宮に三百。さらには油川よりでる街道筋にも兵を置き、行きかう人の動きを徹底的に監視。こうなると武装を固めた兵らの物々しい雰囲気に、騒がしかった町衆は鎮まりざるを得ない。一方で浄満寺に籠る者らは未だ七百ほどにいるので、あちらの喧騒というモノは嫌でも外へ聞こえてくる。だが次第に……日が沈むにつれ “モロモロ” と唱えなくなったし、いくらか落ち着いてきたか。ただしこれは “戦の前の静けさ” というべきか、変な緊張感が辺りを漂う。弓を握る者の手は汗で湿り、火縄を持つ者は地板を濡らす。
隣接する明行寺と浄満寺共に敷地は1㎢と広いものの、どちらも町の中にある無防備な施設でしかない。同じ真宗でも摂津の石山本願寺みたいな要塞ではないし、火縄を横に向けて撃てば、間を隔てる木の柵を飛びぬけて、向こう側の建物に穴が開く。そこで急ぎタンスや竹束など銃弾避けになりそうなものを両寺の境目に置いていく。……この作業自体は互いに日の明るいうちに済んだようで、暗闇に包まれた今となっては、不気味な静かさしか感じない。
そして……戌の刻(午後八時)の頃か。先に手を出したのは浄満寺側だった。屋根に上がったままだった将兵らが一斉に明行寺の仏殿目がけ……一斉に射撃した。今度は最初のようにわざと上を狙おうとはせず、下の ”人の高さ” へ向けて発砲。誰もが驚くであろう爆音。辺りの木々に寝静まっていた鳥どもは慌てて飛び去り、カラスはその汚い声を懸命に鳴らす。雪がやっと解けたばかりの季節なので、後に残る木々には葉などついていない。その哀れな姿は少しばかりの怖さを醸し出した。
上を見れば……夜の暗さよりも黒い鳥が天空を飛ぶ。未だ喚き散らし、……再び元いた木々に戻ろうとすべく辺りを漂うが、再び爆音が当たりに鳴り響いた。これではかなわぬと彼らは西の山の方へ。油川城を脇に見つつ、田沢森、さらには金木や加瀬の方へ飛び去っていく……。




